耳の聞こえない人や難聴の人は、手話だけでなく相手の表情や口の形から、情報を読み取る。新型コロナウイルスの感染防止のため、多くの人が外出時にマスクを着用している中、こうした聴覚障害者たちはコミュニケーションに不便さや不安を感じている。
一般社団法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」は4月23〜26日、新型コロナの感染拡大の影響について、聴覚障害者と視覚障害者にウェブで緊急アンケートを実施。165人(うち聴覚障害者は80人)から回答があった。
全体の6割以上が「生活や外出面で不便がある」と回答。
聴覚障害者に自由記述で理由を尋ねると、
「マスク着用で口の形や表情が読みづらい」
「音声だけのオンライン会議は、みんなと同じタイミングで参加できない」
「マスクで口元が隠れていて、レジスタッフの方が何を話しているのかわからない」
といったコミュニケーションの壁を訴える声が目立った。
「耳が聞こえない人は、相手の表情や口の形を読み取って、会話の内容を把握します。今はマスクをしているので表情が見えず、話しかけられていることにも気づかない場合があります」
同法人主催のオンライン会見で、高校生の頃に聴力を失った聴覚障害者の松森果林さん(45)はそう訴える。
とはいえ、会話のたびにマスクを外すのは現実的ではない。
「マスクをしていても、コミュニケーションを楽しめる手段はたくさんあると知ってほしいです」。松森さんに、7つのポイントを教えてもらった。
1アイコンタクト
目線を合わせるだけで、安心できます。
2マスクをしていても言葉をはっきりと発する
難聴者や高齢者など、耳が聞こえにくい人が聞き取りやすくなります。
3ちょっとしたジェスチャーを加える
「例えばレジに行くと、『袋は必要ですか、お箸は必要ですか』などと聞かれますよね。実物を見せてくれるとすぐに通じると思うんです」(松森さん)
4筆談は大きな文字で。
ソーシャルディスタンスを取った離れた状態でも、見やすくなります。
5音声を文字化するアプリもあります
アンケートには「オンライン会議で全ての参加者が音声化のアプリを使ってくれて、人の暖かさを感じた」と喜ぶ声もありました。
6離れていても手話なら十分な意思疎通ができる
これはできる範囲で・・・
7笑顔を忘れないでほしい
マスクをしていても、目の大きさ、ほおの筋肉の盛り上がりで笑顔は伝わります。
最近では、鼻と口を透明なシートで覆う「透明マスク」も登場。東京都知事の会見で手話通訳者が着用したり、兵庫県伊丹市が作り方を動画で公開したりと注目されている。
松森さんは「耳の聞こえない人が近くにいると意識してもらえるだけで、変えられることがあります。同時に、当事者側からもしてほしい配慮を具体的に伝えていくことが大切と感じています」と話している。