「PCR検査は受けられず、仕事復帰はしたけれど…」。続・新型コロナ疑惑で自宅療養する35歳独身女性の日記

すっきり晴れた青い空、まばゆい若葉。新型コロナで人々が動揺してるのが嘘みたいに自然は輝いている。商店街に向かう道には人がたくさん歩いていた。スーパーの袋を持った人、テイクアウトの袋を持ってる人がいる。私も買い物がしたい。うらやましすぎる。
|
Open Image Modal
イメージ写真
boonchai wedmakawand via Getty Images

(文・笛美)

※笛美さんは新型コロナウイルス感染症と診断されたわけではありません。全ての人に同じ症状が出るとは限りません。

4月20日(月)〜26日(日)

 4月20日(月)にハフポストの記事がアップされてから、私のことをTwitterで検索して連絡をとってくださった方がいた。同じような症状の人や、熱があっても仕事を休めない人もいて心配になる。記事を読んだNHK名古屋放送局の人が連絡をくれて、新型コロナ自宅療養の実態についてテレビ取材を受ける。取材にはオンライン会議システムを使用した。

私は新型コロナ陽性かもわからないけど、本当に取材を受けていいのか確認した。「いま笛美さんのように新型コロナかわからなくて自宅にいる人がたくさんいるんです」と言われた。マジか。保健所の電話が繋がらないこと、一部の病院が受け入れてくれないこと、本当に1人でサバイブしなきゃいけないことをお話した。東海地方オンエアで全国オンエアは深夜だったため、私は見られない幻の回になった。

 

自宅療養中、大抵はベッドの上でTwitterやニュースや動画を見たり、読書をしたりメモアプリに文章を書いたりして過ごしている。熱はほぼ平熱に戻ったが、足の冷えがひどい。冬の朝に床を歩くような冷たさじゃない。気づいたら足の感覚がなくなりそうな冷たさというのか?冷えたかと思えば、しばらくするとカッカと熱くなったりする。足の指を動かしたり足湯をして冷えに抗う。

女性は冷えやすいというが、Twitterでは男性の「#コロナ疑惑さん」からも同じ症状の報告があった。お医者さんに言ってもどうせ冷え症だと言われてしまいそうだけど。新型コロナでは、足の爪先が”しもやけ”のように紫色に変色する症状が出るという記事を見たが、私の足はまだそうなってない。

相変わらず喉がカラカラになる。喉だけでなく、肌も乾燥してカッサカサになった。全身のチクチク痛みは、いわゆるインフルエンザの時の持続的な筋肉痛とは違う。海外メディアでコロラド州の新型コロナ患者が「アイスピックで突かれるような痛み」と言っていたが、まさにそれと同じだった。

 

だんだん熱も36度台に下がってきたので、来週には仕事復帰をすると決める。少しずつでも体を動かしたくて、マスクをして午前中の人が少ない時間に家の前の道を5分くらい歩いた。病院ではなく散歩のために外に出るのがこんなに心躍るとは。

すっきり晴れた青い空、まばゆい若葉。新型コロナで人々が動揺してるのが嘘みたいに自然は輝いている。商店街に向かう道には人がたくさん歩いていた。スーパーの袋を持った人、テイクアウトの袋を持ってる人がいる。私も買い物がしたい。うらやましすぎる。

 

だんだん調子のいい時間が長くなってきたので、掃除や洗濯を始めた。食事について、初期の頃はウーバーイーツをよく使っていたが、やはり高くつく。頼む頻度は週に2回まで、できれば2食に分けられそうなメニューにする。

あとは親が送ってくれたラーメン、レトルトカレー、柑橘系のフルーツ、発症前に購入した冷凍食品、冷凍野菜や肉、冷凍ご飯のお茶漬けなどで乗り切る。レトルトカレーは炒めた野菜と肉を入れるとリッチになる。

 

ゴミ捨てについて。ゴミ回収者さんを感染させるのが怖くて、ゴミも捨てられてなかったので、しばらくゴミ屋敷状態になっていた。ネットで調べて、ごみ袋を二枚重ねにして、さらに袋の口をテープで密封して、やっとゴミを捨てられた。

韓国ではもっとゴミ出しも厳しいらしく、これが本当に正解なのかは分からない。友達がオンライン飲み会に誘ってくれたけど、体力的にきついし、元気な人の間に病人が入って盛り下げたくないので、お断りしてしまった。

 

世の中では岡江久美子さんが自宅療養中に容態が悪化して、急遽入院するも亡くなり、「4日自宅待機」ルールが問題視されるようになった。4月29日に加藤厚生労働大臣が「4日自宅待機は保健所や国民が誤解をしているのでは?」という趣旨の発言をしたらしい。

発熱後にがんばって自宅待機した私はなんだったんだろう?私も誠実にルールを守るから、国だって誠意を見せて欲しい。

 

岡村隆史さんのオールナイトニッポンでの発言が炎上した。日本社会は女の人から経済力と自尊心を取り上げて、我が身を削らないと生きていけないような選択肢に追いやりがちだ。しかもそれが当たり前の風景になっていて、誰も疑問を持たない。岡村さんを責めるな、リンチだと批判の声が上がっているけど、私は岡村さんだけでなく周りの芸能関係者さんや制作者さんにも、理解してほしいと思っている。もし、吉本興業さんが教育の分野や海外に進出するなら尚更だ。

私も日本で生きていく中で女性蔑視的な考えを内面化し、女性である自分や他人を責めたり矮小化してきた過去がある。30過ぎてからやっとその間違いに気づいて、いまだに自分の中の差別意識をなくす過程の途上である。だから簡単じゃないことは分かっているのだけど。

 

いよいよ来週から仕事復帰だ。絶対に無理しないと心に決める。

 

4月27日(月)〜5月3日(日)

 いよいよ仕事復帰の月曜日。パソコンに向かって今日から復帰しますとチームに一斉メールし、溜まりに溜まったメールをチェック。

でも体を起こしてるのが辛い。結局ソファに寝そべりながらノートパソコンを見る。熱は平熱になったのに起きていられない。気のせいだろうか息が苦しくなる。これは過呼吸なのか新型コロナなのか分からない。私は1ヶ月ほど前に過呼吸になったのだが、その感覚とも違う。過呼吸は目の前が真っ白になるけど、今回はただ息が苦しいだけ。咳が出てくる。空咳。

 

仕事復帰2日目もしんどさが変わらず、打ち合わせのたびにどっと疲れるし咳も出る。さすがに不安になって仕事終わりに3度めの病院へ。咳は我慢しようと思えば我慢できたので、病院では咳をしないようにした。

「もう熱が出てからかなり経ちますね。最初に病院に来たのが4月10日ですもんね。」これはPCR検査フラグだろうか。レントゲン室に写って肺を撮影した。

レントゲンを撮って戻ると先生のデスクに保健所への紹介状が置いてあった。

レントゲンの結果は異常なし。もし異常があったら保健所に行けたのかな。

発症後の3〜4日しか陽性にならないらしいと言う記事を見ていたので、どうせもう20日も経ってるし意味ないだろうなとは思っていた。もっと初期の頃に食い下がって検査してもらうんだった。咳の件は咳喘息かもしれないということになった。私のお母さんは咳喘息持ちだったらしく、私にも遺伝しているのかもしれない。

クリニックの受付にジャージ姿の60代くらいの男性がいた。顔色が悪く、すごく疲れているようで、マスクもしていない。わざわざ先生が診察室から出てきて、早く電話をかけた方がいい。いつ急変するか分からないよと。おじさんが新型コロナかは分からないけど心配になった。

彼と比べたら私は元気だと思った。薬局で処方された咳止めの薬と吸引の薬、気道を広げる薬を買って帰った。

 

せっかく大見栄を切って復帰したのに、やはり仕事は休んでGWに突入することにした。7連休ならさすがに治るだろう。1ヶ月くらい微熱が続くとはいえあまりにも長い。ふつうの風邪は平熱に戻ったら完治なのに、今の私は平熱なのにとてもダルくて起きていられないのだ。少しでも負荷をかけると、体が猛抗議してくる感じ。寝たまんま頭を使わなくていいことはできるんだけど、非常に厄介な症状だ。

 

新型コロナの症状のひとつとして、血栓が問題になっている。若くても血栓で脳梗塞になったり、足を切断したりするというニュースを見た。私は低容量ピルを飲んでいて、ピル には血栓ができやすいという副作用がある。

オンラインで医師に相談したところ、念のためピルはストップするように言われた。ピルをストップした翌日に、その影響からかニキビが大量発生した。顔が痛痒くて新型コロナとは別の悩みになってしまった。本当は良くないと思いながらも、2日後にやはりピルを再開させてしまった。

 

買い物について。発症後3、4日が感染力のピークということだが、私はもう20日経っている。さすがにスーパーは無理だけど、野菜が食べたくて、お客さんの少ない個人商店に買い物に行った。マスクはつけて咳はしていない。そもそも#コロナ疑惑だし、本当に良かったのか分からない。

 

子供のころ病気で学校を休んでいた時、おばあちゃんの見ている国会中継は全く意味がわからなかった。でも今回はさすがにコロナ当事者なので、国会中継を自分ごととして見た。

テレビではあまり取り上げられないけど、共産党、立憲民主党、国民民主党の議員さん達が、すごく真っ当な質問をしていた。私が気になることを全部安倍首相に聞いてくれてる。「野党はだらしない」と言われるけど本当だろうか。むしろ私がぼーっとしていて気づかない与党の政策の穴に的確なツッコミを入れてくれる。

予算の使い方が素人目にもおかしい。新型コロ収束後の観光キャンペーンに1.7兆円使っていたり、全国の病床数の削減に644億を使っていたり。野党の質問に対して、素人の私が納得のいく議論もなく、理解できないまま予算が通っていった。

予算成立後、ネットニュースでは「国民10万円を盛り込んだ予算が通った」という速報が飛び込んできた。スマホでこのニュースのの見出しだけを見た人は、他の予算がどんな使い方をされてるか知らないから、政府がよくやってるという印象を受けるのだろう。国会中継もニュースも見てると心がざわつき、すごくエネルギーを使うので、本当は見るべきではないのかもしれない。

でも私が知らない間に、勝手に色んなことが決められてくのは怖い。その度ごとに声を上げないと、気がついたら取り返しのつかないことになりそうで。柴咲コウさんが種苗法のツイートをされて、すごく勇気づけられた。「直虎」の時から好きだったけど、さらに好きになった。       

 

緊急事態宣言の延長が4日に判断されるというニュースが出た。でも感染者数も正確に把握できていないのに、何を根拠に延長するんだろう?まるで、ジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」の世界を生きてる気がする。

ニュースサイトでコメントを見ると「自分の周りには新型コロナ患者はいないのになぜ経済を危険に晒してまで延長するんだ」と言う人がいた。本当はこの人の周りにも新型コロナ疑惑の人はいるんだろう。

そして微熱が1ヶ月とか続くことも世の中の人に知られないし、自宅でたくさんの人が不安に過ごしてることも知られない。不安になって感染してる近所の人や、開いているお店を叩いたりする人もいる。

 

日記の最後に

 私たち一般市民はもう十分がんばっている。医療現場や介護で働く人も、役所の現場で働く人もスーパーや宅配で働く人も、補償がなくて働いている人も、ギリギリまで追い詰められている。

個々人のがんばりでどうにもならないのは、構造の問題だし、政治の問題だ。「私たちが選んだ政治家なんだから」大人しく従えと言う人もいる。でも政治家さん達は選んでくれた私たちを守れなければ、もう次は選ばれないという危機感を持ってほしい。そして私たち有権者も危機感を持たせなきゃいけない。

政治家さんがすることが自分のリアルとズレているなら「それは違う、もう次は選ばないよ」と態度で示していきたい。フィードバックを受けて、実行するかしないかを判断するのは政治家さんなのだから。

自分にできる範囲で政治ウォッチをしていきたい。#コロナ疑惑になってみて、改めてそんな思いを強くした。そして連休明けには元気に仕事復帰できるといいな。 

 

どこにでもいる35歳独身女性より。

 

((編集:榊原すずみ