女性はどうやって、自分の力を発揮すればいいの?
私はこの春京都大学を卒業し、お茶の水女子大学でジェンダーの勉強を続けることにした。文系の科目で大学院に行っても、その先就職も研究者を続けるのも難しいとよく言われるけれど、それでも私がそう決めた理由を、今回は書いていきたいと思う。
私は幼い頃から勉強が得意だった。
勉強が得意だったことが理由なのかよくわからないが、好意を示した訳でもないのになぜか「自分より頭が良い女と付き合いたくねーよ」と言われた経験がある。
特に好きでもない人から、私はなぜそんなことを言われなければいけなかったのだろう?
自分よりできる女の子はムカつく。
今の日本の世の中は、そういう風にできている。
「そんなことないよ!そんなこと聞いたことない!」という人も、中にはいるかもしれない。
だが、それは現実に起こっている。
私が高校生の頃、先生の進路指導は生徒が男か女かでアドバイスの仕方が違った。「女の子なのに、なぜ京大に行くの?」というようなことを言われた経験を友人と話すと、必ず1人は「私もそうだった」という人がいる。
このように、努力することを応援してもらえない環境で、私たち女性はどうやって自分の力を発揮すれば良いのだろう???
なぜ女性の能力は「低い」とされてしまうのか?
自分の経験だけでなく、社会全体の話をしてみよう。
日本のトップ大学に女性が少ないこと、医師や弁護士など難関な資格を保持している女性が少ないこと、政治家に女性が少ないこと、管理職に女性が少ないこと。これらは日本社会全体の問題である。
それらの問題に対する反論をTwitterでちょっと検索すれば「それは女性の能力が低いからだ!」という意見が見つかる。
しかし、そのように結論づけるのは早計だろう。
女性の能力以前に、女性の活躍を妨げるものがたくさんある。
例をあげればキリがない。
医学部では女性への入試差別が起こっていたり、子どもの性別によって、教育に投資する金額に差があったりする。
この現状は果たして本当に平等なのだろうか?こういった状況を見ても、私たち女性の能力の問題だと言うのだろうか?
女性が男性と同様に努力できる土壌がそもそも整っていないのに、今の状況を平等だと思いたい人たちはたくさんいる。
経団連の会長・副会長職は19人いるが、女性はいないらしい。
「会長・副会長職に女性を入れるのは難しいのかと聞いてみた。すると片野坂氏(編集部注:経団連副会長でANAホールディングスの片野坂真哉社長)は言った。「もともと平等なので」と。」(引用元:朝日新聞)
片野坂氏が働き始めた時期は男女雇用機会均等法以前だろう。この年代の女性たちが男女平等な世界で能力を発揮できたはずがない。法律上そうなっていなかったのだから。
過去に女性が受けてきた差別は、今でも経済界のトップを男性一色にしてしまうという歪な光景に影響を与えている。
このように、男女不平等な世界で女性が能力を発揮できなかったことを、まるでなかったことにしてしまうような人たちが決める経済や政治や私たちの生活は、果たして今本当に「平等だ」と言えるのだろうか?
前述の、私が勉強のことで嫌味を言われたのも、社会で意思決定が行われる場に女性がいない、もしくは圧倒的に少ないことも、女性が努力しているのに認められない土壌が関係しているからだ思う。
今でも、私たち女性の道を阻むものがたくさんある。そんな中で、私たちはどうやって自分たちの能力を発揮できたのだろう?
この状況で彷徨っている女性ががたくさんいるのかもしれない、ふと私はそう思った。
日本で、女性が「できる人材」になる道のりは険しい
私は、高校生の時から自分で事業を立ち上げたいと思って、大学の学部生の頃は経済経営の勉強をしていた。だから、女性の経営者には人一倍関心があった。
卒業論文の執筆などを機会に、様々な女性の経営者のお話を聞いたりした。
女性経営者の話を聞きながら、私は「勉強ができる」ことで嫌味を言われてきた自分を重ね合わせていた。
帝国データバンクの2019年の統計によると、日本における女性の経営者は日本全国で7.9%だという。
今ではたくさんの女性が会社を立ち上げたり、フリーランスとして自分で事業を伸ばしたり、経済分野で活躍している。しかし、マクロな視点で見てみると、女性社長は2019年時点で7.9%しかいない。
彼女たちは社長になっても「女性だから」という理由で不当な扱いを受けてきた人も多い。
女性の経営者たちは、どうしたら良いかわからない迷路の中で、不当な扱いをされたことを気にしないように努めたり、自分なりにできることをしたりしながら、今の日本の社会で踏ん張っていた。
そして私は悟った。女性が「できる」人材になるには日本の土壌や環境的にやはり険しい道のりが待っていることを。
私がこの問題を可視化し、解決策を提案しよう、そう思った。
だから、私は大学を卒業しても、就職しないで、そのための勉強と研究を続けようと決めた。
自分の“これから”に迷っているあなたへ
最後に、同じように大学院に進もうか迷っていたり、何か疑問を抱えながら生きている方々にお伝えしたいことがある。
私は大学院で、今までの大変な状況を生き抜いていらっしゃった女性経営者の声を聞き、そして自分自身が経験してきた女性差別の課題を可視化し、解決策を提示できるようになりたい。
文系なのに大学院に行くことで周囲の反対などに遭うかもしれない。
私は幸運にも親などに反対はされなかった。しかし、中には「女の子なのに大学院にいくのの?!」「女の人が大学院に行っても、その先がないって」というような差別的な発言を向けられている人もいるだろう。
私は大学院に進学すること自体にはあまり悩まなかった。なぜなら自分がこの疑問を解決したい!という明確な目標設定ができたから。
もし悩んでいる人がいたら、ぜひ一度自分の疑問の原体験を文章化してみたり、「おかしいな?」と感じることを羅列してみるのはどうだろう。そうすると見えてくるものがあったり、決心するきっかけになるかもしれない。
もちろん、大学院の生活が始まったばかりの私もこれから「あれ、私が勉強したいことってこれだっけ??」など悩んだりすることはあると思う。
そんな時に、一緒に自分が持っている疑問や勉強するきっかけになった原体験をいろいろな人と話せたら嬉しいと思う。
(編集:榊原すずみ)