新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻化しているフードロス。旧築地市場から場所を移して1年半になる豊洲市場でも、今その影響を強く受けている。
一般見学者の入場は禁止するが、首都圏の食を支える場であることから通常通りに営業を行っている豊洲市場。外食需要が落ち込んだことで取り引きは減り、周囲には休業する飲食店も目立つ。市場の人気も減っているという。
そんな中、従来であれば飲食店などに向けて販売している食材を、ネット通販を通して割安で販売するサービスが注目を集めている。
豊洲市場に入荷する旬の果物や海鮮品を販売する通販サイト「豊洲市場ドットコム」では、「行き場を失った食材を特別価格で!」と銘打ち、新鮮な食材を毎日入荷し、販売している。
「豊洲市場ドットコム」を運営する株式会社食文化の萩原章史社長は、現在の反響についてこう話す。
「この数週間で、料亭に行くはずだった筍やうにが数百から数千箱、また結婚式場やホテルに行くはずだった高級メロンも数千個売れている状況です。これは従来の売り上げの10倍以上です。購入される方は、東京を中心にした一般家庭の方々が多いですね。外食もできず、デパ地下の休業も増える中で、おいしいものを食べたいという方が購入してくださっています」
外出自粛に伴って、自宅での食事が増え、また消費活動も減っていることから、割安の高級食材を購入して贅沢をしようという人々が増えているようだ。
同社は豊洲市場の買参権を持っており、市場内に拠点があるため、産地から入荷された食品を見ながら、その日販売するものが決められるという。日持ちしない食品を多く取り扱うことから、萩原さんは「弊社では通販サイトのコンテンツ作りから出荷まで一貫してやる体制が整っており、スピーディに対応することができます」と話す。
TwitterやInstagramでは、「#豊洲市場ドットコム」というハッシュタグとともに、手元に届いた新鮮な野菜や果物、海鮮品の写真を投稿する人々もいる。中には、その大ぶりなサイズに驚く声も多い。同社は、「うまいもんドットコム」でも、「食べて応援!学校給食キャンペーン」を実施しているが、最初は半信半疑で始めたことだったという。
「最初は正直、給食用食材を誰が買うんだ?と思いました。でもその予想を反し、多くの方が購買してTwitterに写真をアップしてくださって、そこから広がっていますね。量はかなり多いので、家庭同士で分け合っている方もいるようです」
外食需要の低迷で卸値が下がったことで、都内のスーパーマーケットや八百屋・魚屋では、筍やかつお、ホタルイカなどの旬の食材が多く出回っており、普段はなかなか見ることのできない食材に出会えるチャンスかもしれない。
売上の回復、販路の確保を目的としたこのような取り組みは各地でされており、札幌や栃木、福岡などの商工会議所のオフィシャルサイトでは、テイクアウトやデリバリー、ネット通販が可能な店舗・企業の情報を掲載。さらにFacebookの公開グループ「フードロス無くそう!」では、全国各地で行われているフードロス対策について共有されている。