終日の仕事、家での育児・教育、それに加え、1日3食の準備や家事...これらを同時にこなす。そして、またその繰り返し。
これが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務となり、家で子ども達を育児・教育する親たちが直面する現実だ。多くの親たちが「もうすぐ限界」と悲鳴を上げるのも、驚きではない。
これはもちろん、日本に限ったことではない。ここでは、イギリスの家庭や学校の状況も踏まえて見てみよう。
一部の親は、新型コロナの影響で休校になっているにも関わらず、子どもたちを再び登校させることができないか、校長に相談までした、とハフポストUK版に話した。
子どもたちに家での教育を続けさせることに困難を感じる親たちは、他の親たちがSNSに投稿する様々なアクティビティの様子を見て、無力さを感じさせられる、と涙ながらに語った。
一方、学校の校長も、親は「訓練された教師ではない」ため、学校は家庭に高い理想を求めてはいけない、と話した。
「今、私の2歳の子どもは砂箱で遊んでる。6歳は算数の勉強。そして私は12歳に宿題をやるよう説得してる」とエイミー・キャロルさんは話す。28歳の彼女には、2歳、6歳、そして12歳の息子たちがおり、それぞれの年齢のニーズに合わせるのは難しいと語る。
「彼らがいながら座って仕事をすることはできません。だから、それぞれにタスクを与えるのです。外出できず、ニーズが違う彼らみんなにそれぞれ集中させるのは困難です」
「普通の休日のように公園に連れて行くことはできません。できるのは、散歩に行くことだけです」
「6歳の子はすごく退屈にしています。お絵かきとか、どんなアクティビティをしてもだめ。とにかく家にいすぎて、落ち着きがないのです」
彼女は、家で子ども達の教育をするのは難しいと話す。彼らが説明を求める時は特にだ。
エイミーさんは、一部の親は、他の親がSNSでどれだけ子ども達を教育しているかを、様々なアクティビティをしている写真を投稿し「自慢」するのを見て、「自分は無能だ」と感じているという。しかし彼女は、「SNSに投稿される全てがリアルではない」と話し、人々に「落胆する必要はない」と加えた。
「子どもとの時間をSNSに投稿し自慢している多くの親がいますが、それが現実の繁栄ではありません」
「現実は、新型コロナウイルスによる外出制限は全ての人たちに影響していて、私たちは最善を尽くす事しかできません」
在宅勤務と同時に、家で小さな子どもの育児・教育をしようとしている親たちにとっては、毎日が奮闘だろう。
リーズに住む36歳の母親は、マーケティングの仕事を在宅でこなしながら、5歳と11歳の子どもの面倒を見ている。
日々とても困難で、相反する要求へのプレッシャーに、突然泣き出してしまうこともあるという。
「たくさんの事をやろうとするあまり、全てに失敗しているように感じます。ダメな母親で、子ども達に教えることも下手で、仕事もろくにできていない、と」とハフポストUK版に語った。
彼女は、ビデオ会議に参加しながら、子ども達に学校の勉強を教えようとし、それに加え、子どもたちに食事を与え、家が豚小屋化しないように掃除するなど、全てをやろうとしていた事について話した。
気分や感情は擦り切れ、彼女と子ども達は一緒に閉じこもっている状況からのプレッシャーに涙しているという。
「以前の、彼らは学校に通い、私たちも友人と会ったり、旅行に行けた頃とは違います。今は、私たちみんなが同じ家にいて、私は仕事をし、彼らを家で教育しなければなりません」
イギリスの場合、英語が母国語でない親にとって言語も問題になる。子どもが学校の勉強で質問があっても、助けてあげることができないからだ。
パキスタン出身で3人の子どもの母親は、少しの英語の読み書きしかできない。ウルドゥー語で取材に答えた彼女は、夫は国民保健サービスで働いているため、新型コロナウイルスパンデミックの最中とても忙しく、終日仕事だという。そのため、日中は彼女が3人の子ども達に学校の勉強を教えようとするが、子ども達が何かわからなかったり、説明を必要とする時は問題になるという。
「子ども達に『父親が戻るまで待って』と伝えますが、そうすると勉強から興味が失せ、遊びたがってしまうのです」
ムーアサイド・コミュニティ小学校の校長であるダニ・ワーシントンさんは、親たちは長期間子ども達が登校できず、家にいる事へのプレッシャーを感じ始めていると話す。
「アドバイスは、もし子ども達が家で安全なのであれば、学校に来るより家にいた方が良いでしょう。しかし今、一部の親たちからは、子ども達の家での行動の質が低下しており、学校へ登校させられないかと相談されることがあります」
ワーシントンさんは、親たちに困難を強いたくはないが、不可欠な仕事を持つ親の子どもや、学校にいた方が安全とされる子ども達に限って、生徒の数を少なく保つことが必要とされており、非常に難しい状況だという。
また、貧しい地域の家庭にとっては、この状況は更に困難ものだと話す。
「親たちは、子ども達を外出させないように、という指示へのプレッシャーを感じ始めています。多くの家は庭もなく、子どもは屋内、そして限られたスペースの中で生活しています」
「子ども達は外出できず、家の中にいます。親たちは、子ども達は学校から帰ってきて、テレビを見たりiPadを少しいじったり、という生活に慣れています。ところが突然、子ども達を家にいさせ、外で遊んだり友達と会っては行けないというのです。物資に困っている家庭もあります。ある親は、子どもと一緒に勉強に使うため、紙とハサミが欲しい、と連絡してきました」
学校は、最も影響を受けている家庭に週一度食料を調達しているが、ある家族から家にパンもミルクもないと連絡があった際は、ワーシントンさんは自ら買い出しに行って届けたという。
「私たちは毎週全ての親たちと電話連絡をとっていますが、多くが困難だと話しています」
「人々のストレスレベルがすでに高い中、子どもたちが終日家にいるプレッシャーが多大な不安を引き起こしています。多くの子どもや親たちは、新型コロナウイルスの感染拡大によって起こっている全てのことに対し、恐怖と不安を感じています」
「多くの親たちが、子ども達を終日多忙にさせている教師たちを新たな尊敬の眼差しで見ている、と話します。家でそれを実践するのがどれだけ難しいか分かったというのです」
クレッグ・バーゲスさんが校長を務めるウールストン・コミュニティ小学校は一般的な学校だが、自閉症を持つ子どもたちのいるクラスがあるという。
「多くの子ども達はルーティンが好きですが、自閉症を持つ子ども達は特に、ルーティンやスケジュールが必要で、長期間そのルーティンが変わることは、彼らにとってとても苦しいことです」
「多くの親が困難に直面し、学校での居場所を検討し始めるでしょう。しかし、自閉症を持つ子ども達の社会や感情への影響と共に、登校した場合の健康へのリスクも考慮する必要があります」
また、この多大なストレスがある時期に、親たちに更なるプレッシャーを与えないよう話す。
「親たちは、訓練された教師ではありません。家庭で在宅勤務をしたり、複数の子どもたちの世話をしているかもしれない親たちに、多くの課題や理想を押し付けてはいけません」
「私たちは、子ども達にやってほしい2時間分の勉強を設定しており、もっとやりたい家庭には、更なる選択肢を用意しています」
モアキャンブル・ベイ・コミュニティ小学校校長のシオバン・コリンウッドさんは、現在のパンデミックの収束後は、学校には重要な事を中心に教育させて欲しいと話す。
「学校が再開する時には、大きな遅れがあるでしょう。子どもたちの教育で何が重要か、優先順位を付けなければなりません」
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。