留学先のオランダ、大学が突然の休校。新型コロナが私たちの日常を変えた日

緊急事態に大学はどう対応したか。オランダのライデン大学に在籍する大学生、佐藤翠さんによるレポートです。
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ライデン大学

ある日、突然大学が休校した

3月12日、木曜日。

私は、オランダの第二の街・ハーグにあるライデン大学の図書館で翌週の中間テストの勉強をしていた。私と同様、テスト勉強をしている学生たちで満杯の図書館はとても静かだった。

16時ごろだろうか。

ルッテ首相の記者会見で、3月25日までオランダ全土の学校は休校するようにとの要請が発表された直後、

「来週のテストはキャンセルする」

といった内容のメールが、私のパソコンに届いた。大学からだった。

テスト勉強の必要はなくなったと、勢いよく立ち上がりバタバタと図書館を立ち去る学生たちを目にし、私も図書館を出た。

「中間テストがキャンセルって、成績どうなるの?」「授業はキャンセル?」「私たち、帰国するべき?」「そもそも帰国できるの?」

連絡を受けた学生や留学生たちで、大学内はざわついていた。

オランダは、ヨーロッパの中でも国内感染者が発見されるのが遅かった国の1つであり、

私たちの日常にはほとんど変化はなかった。それだけに突然の休校発表は、あまりにも衝撃的だった。

私たちは前代未聞の事態に直面し、不安を抱え、混乱することしかできなかった。

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その日、私は、友人たちと共に街にあるタピオカ屋に足を運んだ。彼女たちに次会えるのはいつになるのだろう
MIDORI SATO

翌3月13日。

3月31日までの対面授業は全てなくなったという大学からの連絡を皮切りに、情報が次々とアップデートされていく。

いつのまにか、大学のホームページに新型コロナウイルス情報の関連ページが作られており、何か新しく決まれば情報がそのページに記載されるシステムになっていた。

怒涛の週末が過ぎ去り、翌週の中頃には、しばらくオンライン授業が行われるという発表が大学からあった。

各授業を受け持っている教授や講師から、これからどのように授業を行うのか、課題の内容や締め切りの変更等ついてのメールもひっきりなしに届いた。

ただ、学期最後までオンライン授業が続くと決定されるまでには数日かかった。もし今学期中に対面授業があるのなら、旅費のことも考えて、オランダに残った方がいいのではないか。日本に実家がある私は帰国すべきかどうか気を揉んでいた。

結果として、私は、学期最後まで対面授業まで行われないと決定した直後に航空券を購入し、3月22日には日本に戻ることができた。

しかし、外国人生徒が半数を超える私の学部の友人の中には母国の国境が封鎖されてしまい帰国できなかった人も沢山いる。

 

慣れないオンライン授業は、大変なことだけではなくメリットもある 

さて、私の学部では、最大500人が大講義室で受けるレクチャーの授業と、最大20人で行われる小規模のセミナーと呼ばれる2種類のクラスがある。

オンライン授業の形式は、それぞれのクラスによって異なる。

 

◼️レクチャーの場合

元々、基本的にレクチャーは録画され、対面授業の後に学生と教授・講師のためのプラットフォームに投稿されていた。

休校によるオンライン授業が決定したあとには、彼らが1人で話している様子が同じプラットフォームに上げられ、いつでも授業を見られるようになった。

私のようにオランダと時差がある国にいる学生も多い中、自分のペースで録画を見ることができるのは本当にありがたいと感じている。

◼️セミナーの場合

一方で、セミナーのクラスは、Zoomに似たオンライン動画配信プラットフォーム、Kalturaを使って行われている。セミナーは、学生同士の議論やインタラクティブさが重視されているため、レクチャーと違いライブで授業に参加する必要がある。

 

オンラインのセミナーの授業で個人的に好きな点は、普段の対面の授業よりも発言しやすい点だ。発言する際、対面の授業よりも視線を浴びていない気がするため、気楽に話せると感じる。必要に応じてチャットを使うことも可能だ。

また、2、3人のグループで議論する時には、権限を持っている講師がグループを振り分けてくれるので、毎回違う学生と意見交換をすることができる。

対面のクラスの時にはどうしてもいつも同じメンバーと座り話し合うことが多いので、非常に新鮮で視野が広がったような気がした。

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オンライン授業の様子。家にこもりがちなこの状況下で、他の学生とコミュニケーションを取ることができるのは本当に有難い
MIDORI SATO

もちろん、オンラインでの授業にも課題は沢山ある。

インターネット環境が不安定な時には音や画面が飛んでしまう。特に、教授のインターネット環境が安定していない時には、何が何だかわからなくなってしまう。何らかのエラーが生じてなかなかクラスに参加できないこともある。

1番大きな問題は、やはり集中が切れてしまうことだろう。教授の直接的な視線がなく、パソコンを目の前にすると、どうしても気が散ってしまうことも正直少なくない。皆が授業に集中しより議論を活発化させるためには、教える側・教えられる側が対応策を考えることが必要だ。

隔離状態にある学生たちの健康を守るための、大学のアプローチとは? 

それぞれの授業の今後の方針が決まり、オンライン授業にも慣れて来た頃、学生の健康を気遣う内容のメールが大学から送られるようになった。

多くの学生が、普段とは違うリズムの生活を送り、家から出られず1人で毎日を過ごしている状況を考慮してのことだろう。

それらのメールの内容は、多岐に渡る。

ストレスなく勉強できる環境を作るためのハウツーが記載されているウェブサイトの紹介、家の中でできる運動の紹介、オンラインで人々と交流できるコミュニティの紹介等も行われている。

大学のスポーツジムで教えているヨガやダンス講師たちが「家でできるWorkout」のビデオをYouTubeにアップロードしていた。また、この状況下でストレスを感じた際に相談できるセラピストの窓口の連絡先が記載されているメールもあった。

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大学のWebサイトには、身体と精神の健康を維持するためのハウツーが集約されていて、わかりやすい
MIDORI SATO

大学の一連の対応を振り返って、私が考えたこと

新型コロナウイルスの影響で、大学との交流のほぼ全てはオンラインで行われるようになった。

もちろん慣れないことも多く、普段の大学生活を恋しく感じることもある。それでも、大学側は今できることを行っているし、そのおかげか私が大きな不便を感じることはない。

いざという時に連絡できる場所があることや、生活を充実したものにするために大学のプラットフォームにアクセスできることは本当に有難いと思う。

学期末まで、あと1カ月半。期末テストもある。

日本の実家で過ごしながら、オンラインでの大学生活を滞りなく終えられることを期待している。

(文:佐藤翠/編集:毛谷村真木