男性が家事を引き受け、会社はボーナスも。その理由は「教育」か「贖罪」か?【国際女性デー・ベトナム編】

ベトナムの国際女性デーをのぞいてみたら、「尊敬と感謝」を持って、なんとも微笑ましい過ごし方をしていた。
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3月8日は「国際女性デー」。私が今住んでいるベトナムでは、知らない人がいないほど、国民にとって大事な日。そこで今回はベトナムで「国際女性デー」がどのように祝われているのか、そしてどのように過ごされているのかを紹介します。 

 

定番はプレゼントやレストラン 

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イメージ写真
Buppha Wuttifery / EyeEm via Getty Images

ベトナムでは「国際女性デー」の日、一般的に恋人、妻やパートナー問わずに、男性は女性にプレゼントをします。昔からの定番はバラの花束。しかし最近の若者は花束は時代遅れだと考える人も多く、アクセサリーなど、女性が好きなアイテムを贈ることが多くなったそう。

 

またレストランで食事をする人も増えてきたのだとか。いつもよりも少し高級なレストランで、おいしいものを一緒に食べて過ごします。

 

最初この話を聞いたとき、日本で言えば、クリスマスのような過ごし方をするのだなと思いました。クリスマスと違うのは、男性からのプレゼントのみで、女性からは何も贈らないこと。

 

また、ベトナムの「国際女性デー」は、どちらかというと恋人同士の日ではなく、家族で過ごすのが主流。この日、家族内にいる男性陣は妻や母、姉や妹に、感謝の気持ちを込めてプレゼントを送ります。さらに驚いたのが、恋人や家庭などプライベートな人間関係間だけではなく、学校や職場などオフィシャルな場でも、男性は女性に感謝の気持ちを伝えます。

 

学校では、生徒はみな女性のクラスメイトや先生に渡すプレゼントを手作りするそう。職場では、男性社員が昼ごはんやコーヒーをごちそうしたり、会社から少額のボーナスが支給されることもあるのだとか!

 

女性であれば皆、この「国際女性デー」にまつわる感謝の気持ちを受けられるのです。

 

プレゼントに加えて行動でも感謝の気持ちを伝えます

「国際女性デー」の日、男性はプレゼントを用意するだけではありません。ここから紹介することが、今回ベトナムで「国際女性デー」について周りの人にきいたとき、私が一番驚かされたこと。

 

それが「行動と態度」。この日、家庭内のベトナム男性は大忙しです。朝は早起きをして、洗濯掃除をし、それから食事の準備をします。普段、慣れない家事に四苦八苦すると、たくさんのベトナム男性が話してくれました。

 

妻や母、姉妹はこの日は何もしません。男性いわく“まるでクイーンのように“座って優雅に1日を過ごすのだそう!  物だけではなく、行動でも感謝の気持ちを表す習慣は、日本ではあまり見かけませんよね。とても興味深い習慣です。

 

なぜベトナムで「国際女性デー」の日が大切にされているのか

 

3月8日、ベトナムでは女性の人権を考えるイベントやパレードは大々的には行われません。あくまでも周りにいる女性に、感謝の気持ちを伝える日となっています。日本では女性の人権や平等を改めて考える日となっているのと比べると、違った過ごし方ですね。

 

そこでベトナム男性になぜこのような習慣が根付いたのかをたずねてみました。

 

周りにいる女性に感謝を伝えるスタイルになったのは、2000年代からだそう。それまでは、日本と同様に女性の人権について考えるイベントが公的機関を中心に催されていました。

 

数名の男性が、近年スタイルが変わってきたのは、「学校教育」の影響かもしれないと教えてくれました。ベトナムでは、歴史の授業で時間をかけて、これまでベトナムの発展に寄与した女性について学びます。日本では一般的に歴史の時間に出てくるのは男性ばかり。しかしベトナムでは、ヒロインについて深く知る機会があります。だからこそ、女性に対する自然な尊敬の気持ちが生まれ、それを周りの女性に対して示すようになった、そう教えてくれました。

 

一方、女性に聞いてみると、こんな理由が出てきました。それは「埋め合わせ」です。おしゃべりとお酒が大好きなベトナム男性は、仕事が終わると飲みに出かけることが多いとか。普段、家の中のことを手伝っていないから、日頃の行いを懺悔する気持ちで家事を引き受けるのだそう。この1日があるから、日々の不満を耐えられるのよ、という声も多かったです。

 

男女それぞれ「国際女性デー」に対する考えが違って面白いですね。



ありがとうの気持ちを自分なりに伝えることで、社会が変わる? 

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Asian couple dating
Rawpixel via Getty Images

「国際女性デー」に女性に感謝の気持ちを伝える方法や、その動機はベトナムでも人によって違うみたい。しかし、日本にはない家事を引き受ける習慣はとても新鮮に感じました。日本のように、女性の人権について真面目に考えるというよりも、身近な女性に自分なりの方法で尊敬を示すやり方が、なんとも柔らかくてベトナム的だと思いました。

 

あるベトナム男性に、ベトナムでは同じように祝福される「男性の日」はないし、女性ばかりがプレゼントをもらいボーナスを支給されるなんて。羨ましいと思ったりしないの? と聞いてみました。

 

すると「国際女性デー」はもうベトナムでは当たり前の習慣になっていて。それに私たちみんな、普段女性に助けられていることを分かっているから。彼女たちと仲良くやっていくために必要なんだよ、と。

 

前日の3月7日から、私が住んでいるダナンの街では、道路脇にいっぱい即席花屋さんが並びました。そして花束を抱えて歩いている男性の姿がたくさん。満面の笑みで、花束を買う男性を見て、なんとも微笑ましくアットホームな「国際女性デー」を過ごすのだなぁ。と、見ているだけで心があたたかくなりました。また、3月8日当日は街に出てくる人が少なく感じました。今年はコロナウイルスの影響もあるとは思いますが、きっとベトナム男性は、“家庭サービス“に精を出していたんでしょうね。

 

女性の人権を考えていくときに、どうしても意見がぶつかり合い、「戦い」の様相になることもあります。もちろん今おかれている現状を改善するために、「戦う」ことは大事だと信じています。だけど、いちばん大事なのは、やはり「尊敬と感謝」。ジェンダーの問題関係なしに、もっと普段できることで、ありがとうの気持ちを自分なりに周りの人に伝えていくことって、意外に世界を変えるパワーがあるのかもと思ったのです。

 

(文:東洋子/編集・榊原すずみ