最もジェンダー平等が進んでいる国の一つといわれるアイスランド。
アイスランドでジェンダー平等の意識はどのように育まれたのだろうか。その背景には1975年の「女性の休日」と呼ばれる大規模ストライキがあった。
1975年10月24日、男女の給与格差や性別の役割分担に抗議し、アイスランドで国中の女性がストライキを起こした。仕事や家事をやめた女性たちは、街に出て集会などを開催。国の女性の約9割が参加したといわれている。
当時の出来事を朝日新聞は「女性ゼネスト アイスランドは完全マヒ」の見出しで報じた。これはロイター通信が配信したもので、「男性たちは最初、スト突入の警告を全くの冗談と受け取っていたが、本当とわかってビックリ。女性がいないと1日も国がもたないことがわかったようだ」と書いている。
2020年にアイスランドのエーリン・フリーゲンリング駐日大使(当時)はハフポスト日本版のインタビューでこう語った。
「SNSもない時代ですが、女性の労働者団体が呼びかけ、メディアや草の根の口コミを通じて広く伝えられました。結果的にほとんどの女性がストライキに参加し、高齢女性も夫に『今日はあなたにコーヒーは淹れません』と宣言して町へ出たほどです。この日をきっかけに男性たちは、女性なしでは社会が回らないことを突きつけられました」
この日をきっかけに、アイスランドでは女性の政治参画が発展。1980年にはヴィグディス・フィンボガドゥティル氏がアイスランドだけでなく、世界で初めて民主的な選挙で女性大統領となった。
現在のアイスランドのジェンダー平等への取り組みは様々な分野におよぶ。公共の委員会や上場企業の取締役会にはジェンダークオータ制があり、男性の3ヶ月の育児休業の取得を法律で定めている。
かつてアイスランドでも「育児や家事労働は女性が担うもの」といった男性優位な風土があったとフリーゲンリング氏。当時高校生で、自身もストライキに参加したフリーゲンリング氏は振り返る。
「今でも忘れられない一日です。町を行進しながら、参加者どうしの連帯感がとても心強く、空を飛んでいるかのような気分でした。『私たちは変化を求めている』という思いを共有する、熱狂的なシスターフッドでした」