新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の患者を受け入れている神奈川県立足柄上病院の医師などのグループが、ぜんそくの治療薬「シクレソニド」を患者3人に使用したところ症状が改善したとの報告書を公表した。
報告書によると、シクレソニドは未熟児・新生児から高齢者まで広く用いられる吸入タイプのぜんそく治療薬。気道の慢性炎症の抑制に効果があるという。
シクレソニドの投与で症状が改善した患者3人は大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客。いずれもシクレソニドの投与から2日程度で呼吸の状態や食欲、倦怠感が改善されたという。
このうち73歳女性は全身の倦怠感が強く、HIV治療薬が投与されたものの肺炎の症状は改善しなかった。副作用とみられる食欲不振や下痢も続いたため、HIV治療薬の投与を中止。シクレソニドの吸入を開始すると、2日程度で症状が改善した。その後ウイルス検査で陰性が確認され、すでに退院したという。
報告書は「COVID-19の肺傷害の病理はいまだ明らかになっていない」としながらも、「シクレソニドの持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が重症化しつつある 肺傷害の治療に有効であることが期待されている」とまとめた。
一方、効果に関する考察として「この症例数のみで効果を論ずることはできない」とし、他の症例の経過も追加で報告する考え。他の医療機関などとも協力して症例を蓄積し、有効な治療法になるかどうか検証するという。