「こんな時だからこそ…」疑心暗鬼になる前に、海外リーダーたちの言葉を聞こう

新型コロナウイルスへの不安に駆られてマスクやトイレットペーパーを買いに走る前に…理性を保って行動しましょう。
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シンガポールのリー・シェンロン首相=2019年10月、ジャカルタ
ADEK BERRY via Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、海外リーダーたちのメッセージが話題となっている。

日本では3月2日から多くの学校が臨時休校となり、物流や検査体制などへの疑心暗鬼も広がっているが、不安に駆られてマスクやトイレットペーパーを買いに走る前に、このスピーチに耳を傾けたい。

 

シンガポールのリー首相が、3カ国語で国民にビデオメッセージ

まずはシンガポールのリー・シェンロン首相。2月8日に英語と中国語、マレー語で国民に向けた約9分のビデオメッセージを公開した。メッセージの内容は、タミル語にも翻訳され、文章で掲載されている。

リー首相はピンク色のシャツの第一ボタンを外したラフなスタイルで、新型コロナウイルスについて分かっていること、感染拡大を防止するために政府や専門家が行なっていることを説明。

感染者の数が増え続ける場合は「戦略を再考する必要もあります」として、医療体制がパンクしないように軽症の場合は自宅療養を奨励し、「医療は重症患者や高齢者、幼児や合併症がある患者に集中させる」と語った。

注目すべきは、状況が悪化した場合のシナリオを示した直後。「まだその時ではない」と断ったうえで、こう語った。

まだ、その時ではありません。それは起こるかもしれないし、起こらないかもしれません。

でも、私たちは先を考えて、次のいくつかのステップを想定しています。

そして、私はこうした見通しをみなさんにシェアします。

ですから、私たちは皆、この先起きるかもしれないことに対しても心理的に備えられるでしょう。

 

「恐怖や不安は人間の自然な反応です。でも…」

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世界的にマスクの品薄状態が続いている。
時事通信社

さらには、マスクなど備蓄品の買い占めなどについても言及。

「恐怖や不安は人間の自然な反応です」と、国民の恐怖や不安に寄り添ったうえで、恐怖がパニックを誘引したり事態を悪化させる可能性を指摘し、「恐怖ではなく勇気を持って、一緒に乗り切ろう」と呼びかけた。

恐怖や不安は人間の自然な反応です。私たちは皆、未知の病気から自分や家族を守りたいと思っています。

しかし、恐怖はウイルスそのものよりも、害となることがあります。

恐怖は私たちをパニックに陥れたり、事態を悪化させることがあります。

例えば、オンラインでうわさを流したり、マスクや食べ物を買いだめしたり、アウトブレイクの責任を特定のグループのせいにしたり…。

恐怖ではなく勇気を持って、このストレスの多い時間を一緒に乗り切りましょう。

終始落ち着いた表情で、時折笑顔をのぞかせたり、力強く拳を握る様子も見せながらカメラを通して国民に語りかけたリー首相は、最後にこう結んだ。

「賢明な予防策を講じ、助け合い、落ち着いて、私たちの日常生活を続けましょう」

 

「こんな時だからこそ、散歩をしたり、良い本を読んだりしてください」

イタリア・ミラノからは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い休校となったアレッサンドロ・ボルタ高校の校長先生のメッセージ。

こちらも、ドメニコ・スキラーチェ校長が公式サイトを通じて学生たちに呼びかけているのは、「冷静に、群衆のデマやパニックに惑わされることなく、必要な対策をしたうえで、いつも通りの生活を送ってください」ということだ。

朝日新聞によると、メッセージでは、17世紀にペストが流行した時の様子を描いたイタリアの文豪マンゾーニの名著「許嫁」を引用。

現在起きている、外国人や感染源への疑心暗鬼、デマや生活必需品の買い占めなどは、すべて「許嫁」の中に書かれていることで、歴史が繰り返しているのだと指摘した。

さらに、感染が急速に拡大している状況で一番のリスクは「社会生活と人間関係が毒されること」だとして、理性を保って日常生活を送るように呼びかけた。

こんな時だからこそ、散歩をしたり、良い本を読んだりしてください。元気であれば家に閉じこもっている必要はありません 

17世紀と違い、私たちには現代医学があります。私たちの社会と人間性を守るために、理性を保ちましょう。もしそれができなければ、ペストが本当に勝ってしまうかもしれません。

学校で待っています。