安倍晋三首相は29日夕、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の取り組みなどについてスピーチしました。
そこで語られた一斉休校の理由は「何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子どもたちや教職員が日常的に長時間集まる。そして、同じ空間をともにすることによる感染リスクに備えなければならない」というものでした。
【WHO曰く「子どもの感染例は少ない」「子どもから大人に感染したという話は無かった」】
一方で、同日にNHKから以下のようなニュースが報道されました。
そこで語られたのは、以下のことです。
「重症や死亡のリスクが高いのは60歳を超えた人や高血圧や糖尿病、それに、循環器や、慢性の呼吸器の病気、がんなどの持病のある人だということです。」
「逆に子どもの感染例は少なく、症状も比較的軽いということで、19歳未満の感染者は全体の2.4%にとどまっていて、重症化する人はごくわずかだとしています」
子どもの感染例は少なく、19歳未満でも2.4%しかいないわけです。
同程度にウイルスに曝されているはずなので、感染しても発病しづらい可能性が示唆されます。
なぜ対策を打つのに、97.6%の部分からではなく、2.4%から打つのか。全くエビデンスに基づいていると言えません。
しかし、「子どもが高齢者に伝染すから仕方がないのでは」という反論もあるでしょう。
それに対しても、WHOはレポートしています。
「子どもの感染について報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。」
ええっ!?「子どもから大人に感染したと話す人はいなかった」?
じゃあ一斉休校の意味って一体何なの!?
そんなバカな、と思って原文を当たってみました。
「注目すべきことに、合同調査団のインタビューを受けた人々は、子どもから大人に感染したというエピソードを思い出せなかった」
本当に書いてありました…。
もちろん全ての事例をインタビューできているわけではないと思うし、無症状でも媒介の可能性はあると思うし、今後突然変異で状況も変わるかもしれないので何とも言えませんが、WHOのレポートに記載されるというのはそれなりのインパクトです。
【「1人感染で学級閉鎖・2人以上感染で休校」の台湾方式】
WHOの調査報告からも、今の日本の一律一斉休校の効果が疑問視される、ということは言えそうです。
では、我々はどうすれば良いのか。
そこで非常に参考になるのが、台湾の事例です。
台湾の学校では新型コロナウイルスに対し、これまで「冬休みの延長」という形で一律休校をしてきました。
しかし2月20日に新基準を発表しました。
それは、「教員か生徒1人の感染が確認されたら学級閉鎖とし、2人以上が感染したら休校」というものでした。
全く感染児童がいないエリアで、新型コロナにかかりづらい子ども達を休校して家に押し込める意味は極めて薄い。よって実際に感染した児童 or 先生が出た時に、そのクラスや学校をピンポイントで閉じる、という大変リーズナブルなものだと思います。
日本でも、可及的速やかにこの「台湾方式」に切り替えて、エビデンスに欠けた一斉休校を軌道修正させていくべきでしょう。
非常時だしこれまで無かった事態なので、間違ったことをしてしまうこと自体は、仕方がないと思います。
しかし、よりベターな選択肢が見つかった時に、勇気を持って方針転換することこそ、真のリーダーシップと言えるでしょう。
安倍総理には、今こそ真のリーダーシップを発揮していただけるよう、心から願います。
(2020年3月2日の駒崎弘樹公式ブログ掲載記事「安倍総理、一斉休校を今すぐ止めて「台湾方式」に切り替えてください」より転載)