長時間労働やパワーハラスメントを従業員に強いている企業を選出し「表彰」することで、皮肉に取り上げる「ブラック企業大賞」。弁護士やジャーナリストらでつくる実行委員会が12月13日に会見し、2019年のノミネート9社を発表した。
実行委ではこの賞で選定する「ブラック企業」の定義について以下のように定め、ノミネートの基準としている。
・労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を意図的・恣意的に従業員に強いている企業
・パワハラなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人そのうち、裁判や行政処分などで問題があると明らかになった企業
取り上げるのは有名企業ばかり?
今年も9つの企業・自治体が選ばれた。その中心となっているのは有名企業だ。
一方で、記者会見では「名の知れていない企業でも、ブラック企業のような行為はある。企業側から見ると、これでブラック企業と言われるのは心外というのもあると思うが、どう考えているか」と、一部の有名企業を取り上げることを疑問視する質問も上がった。
弁護士らが参加し、基準を設けているとはいえ、一民間団体が名指しで企業を批判する取り組みではある。大手メディアでは記事として取り上げないところも多い。
これに対して、実行委員の労働運動活動家で都留文科大学非常勤講師の河添誠さんは、力を込めてこう答えた。
「メディアも、あまたあるブラック企業的な事案をすべて記事にはしないですよね。やはり社会的な影響力のある大きなところを記事にするし、大きなところであればあるほど大きく扱う。なぜかというと、(大きな企業には)社会的な影響力と社会的な責任において、そのように(ブラック企業にならないよう)ふるまってもらわなければ困るわけです」
「何度も何度も指摘されながら…」
今回のノミネート9社の中には、過去にブラック企業大賞で大賞になったことのある企業が3社も入っていることが特徴の一つだ。
2015年のセブン-イレブン・ジャパン、2016年の電通、2018年の三菱電機はいずれもすでに「大賞」に輝いたことがある。
こうした企業を複数回取り上げることについて、河添さんは「たった8回しかやっていない中で複数回ノミネートされるというのは、それだけ異常な事態が起こっているということなんですよ」と、企業の労働環境に対する意識の低さを指摘。
そして、「ブラック企業大賞」を続ける意義をこのように訴え、締めくくった。
「何度も何度も、過労死、過労自死、いじめ、パワハラの中で人が死んでいるような事案を労基署に指導され、労災で認定され、あるいは残業代・賃金が払われていないということで労基署から指摘されながら、それを直しもしない。そういうことを大企業がやっていると告発するのは当然のことだと考えています」