「使わなくなった車ありませんか」困り果てた被災者と助けたいあなた。シェアエコが支援の輪をつなぐ

シェアリングエコノミーは、災害時のインフラとしての役割も担っている。

シェアリングエコノミー。この言葉を聞いた時、何を思い浮かべるだろうか?

「Airbnb」「便利・効率的」「人とつながる」「仲間意識」....。

もちろん様々な機能があるのだが、災害時のインフラとしての役割も担っている。

11月11日のシェアリングエコノミーの祭典「SHARE SUMMIT 2019」で開かれた、防災インフラとしてシェアエコに関するトークセッションの中から、サービスや事例を紹介する。

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「SHARE SUMMIT 2019」の一幕
シェアリングエコノミー協会提供

●Airbnb

シェアエコといえば、まず名前が上がるAirbnb。旅先で地元の人とのふれあいが楽しめるだけでなく、災害時における被災者の一時宿泊施設として、希望するホスト(部屋の貸主)が無償で家を提供する「オープンホーム」というマッチングサービスを展開している。

受け入れを希望するホストの元に、日にちや場所、人数といった条件に合う被災者や支援団体から連絡が寄せられ、受け入れが成立するという流れだ。

「オープンホーム」はもともと、宿を提供する「ホスト」のアイデアがきっかけだったという。アメリカで大規模なハリケーンが襲った際、ホストが自主的に被災者を預かったことを知ったAirbnb側が、正式なサービスとして取り入れた。

日本では、2016年の熊本地震で初めて実施されたという。100人以上のホストが名乗りを上げ、100件以上の予約が入ったが、課題もあったと登壇者の山本美香・公共政策本部長は説明する。

「予約可能だった物件が被災者のニーズの必ずしも近くでないケースがありました。また、Airbnbに泊まると、自治体が被災者がどこにいるか分からなくなってしまい、被災者認定がもらえなかったり、必要な情報が届けられなかったりという課題が見えてきました」

そこで日本では、被災者ではなく、支援のため現地入りするNPOのサポートに切り替えたという。

「テントに泊まっていた、車で数時間のところから毎日通っていますという人たちが多くいるので、無料クーポンを発行して、できるだけ利便性の高い安全な物件を探すサポートをしています」

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Airbnb Japanの山本美香さん
Rio Hamada / Huffpost Japan

●一般社団法人「日本カーシェアリング協会」

東日本大震災の直後にサービスを始めたのが、一般社団法人「日本カーシェアリング協会」

地震や豪雨、津波災害で車が使えなくなり、交通手段を失う人も多い。2011年4月から被災した宮城県石巻市を拠点に、全国各地の被災地に車というインフラを届け、カーシェアしてもらう活動をしている。災害の多かった2019年は、8月の佐賀県豪雨、台風15号の千葉県、台風19号の宮城県などで支援を続けている。

特徴的なのは、寄付で車を集めていること。免許返納や買い替えで使わなくなった車を貰い受け、移動に困っている被災地の交通インフラとして、無料で車を貸し出している。

「『使わなくなった車はありませんか』とSNSで発信すると、必ず『私の車を困っている人のために使ってください』と名乗り出る人がいます。全国から提供してくれる、運搬のボランティアを名乗り出てくださる人もいます」

ひとり一台ではなく地域のみんなでシェアしてもらい、効率・有効的に使ってもらうようにしていると、登壇したソーシャルカーサポート事業部の石渡賢大さんは説明する。

岡山県とは防災協定を結び、災害時の駐車場所の貸し出しと、余剰に車を持っている業界団体に対して車の提供の呼びかける仕組みも整えた。

自動車検査登録情報協会と、日本自動車販売協会連合会のデータを元に計算すると、2018年の廃車台数は490万台以上だった。

「『私にできることがなんだろうと考えた時に車の提供でした』という利用者の言葉に触れます。できることを提供するのがシェアエコのいいところ。有効活用しきれていない部分をもっと循環できるような仕組みを整えたい」

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日本カーシェアリング協会の石渡賢大さん
Rio Hamada / Huffpost Japan

●「使ったことある」が役に立つ

Airbnbと日本カーシェアリング協会。どちらもそれぞれの課題を抱えているが、共通してあげたのは、いかに普段から使ってもらえるか、だった。

「そもそも何か起きてからサービスを使ってみようと思っても、本人認証があったり、突然では不慣れなところもある。被災者の方も安心・安全して使ってもらえるように、事前に一回サービスを使っておくのが、ホストとゲスト両方にとっても重要です(山本さん)

「使ったことがないと、車をシェアしてほしいと言っても、なかなか車を一緒に使うところまで至らない。石巻では、地域で一緒に使う文化を根付かせています。今一般の人にシェアしてくださいと言うと、通勤で使うので無理と言われる。欧米は、通勤を一緒にやっていくのが当たり前の形になっている。平時にどれだけシェアサービスに触れてもらえるかが重要だと思っています」(石渡さん)

災害が起きた時に、「備えておいてよかった」「こうしておけば...」と気づくことがたくさんある。自分を守る手段は、たくさんあるに越したことはない。普段は便利、効率的に使って、いざとなったらライフライン。そんな風なシェアエコとの関わり方を考えてみてもいいかもしれない。

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防災インフラとしてシェアエコに関するトークセッションの登壇者
シェアリングエコノミー協会提供

●11のトークセッション、事例が学べるブースも

SHARE SUMMIT 2019」では、Key sessionを含めて、全11のトークセッションが開催。東京オリンピック・パラリンピックに向けたシェアによるおもてなしや、サブスクリプションモデルの可能性といったテーマで、登壇者が意見を交わした。シェアエコの事例が学べる企業ブースも数多く出展した。

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企業ブースの様子
シェアエコ協会提供