しんゆり映画祭『主戦場』の上映見送りに抗議 「『表現の自由』を殺す行為に他なりません」

慰安婦を題材にした映画『主戦場』の上映見送り。上映作品の製作者らから抗議の声が上がった。
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10月27日に開幕した第25回KAWASAKIしんゆり映画祭で、慰安婦を題材にしたドキュメンタリー映画『主戦場』の上映が見送りとなったことを受け、同映画祭で2作品を上映予定だった若松プロダクションが28日抗議声明を出し、作品の上映を取りやめると発表した。

映画『主戦場』の上映見送りについて同映画祭の事務局は、共催者である川崎市からの“懸念”を受けたことを明かした上で、上映時に起こりうる事態を想定し、検討した結果、今回は上映を見送らざるを得ないと判断したと公式SNSでコメントしていた

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KAWASAKIしんゆり映画祭公式サイト
KAWASAKIしんゆり映画祭公式サイト

2作品の上映取りやめた若松プロダクション「表現の自由がさらに奪われていくことになる」

同映画祭で『止められるか、俺たちを』『11,25自決の日〜三島由紀夫と若者たち』の2作品の上映取りやめを決めた若松プロダクションは28日、『止められるか、俺たちを』監督の白石和彌さんと脚本を担当した井上淳一さんの連名で抗議声明を発表

今回の映画祭側の決定に対して「過剰な忖度により、『表現の自由』を殺す行為に他なりません」と非難した。

声明文ではさらに、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止や文化庁が補助金を不交付とした決定、さらには日本芸術文化振興会が、 麻薬取締法違反で有罪判決を受けたピエール瀧さんが出演する『宮本から君へ』への助成金交付の内定を取り消した問題などに触れ、今回の映画祭の決定も、「一連の問題の延長線上にある」ことは疑いようがないと指摘。

「このようなことが続けば、表現する側の自主規制やそれを審査や発表したりする側の事前検閲により、表現の自由がさらに奪われていくことになるでしょう」と危機感を示した。

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©2018若松プロダクション【2018/日本/DCP/シネスコ/119分】公式サイト:www.tomeore.com
映画『止められるか、俺たちを』公式ツイッター

『沈没家族 劇場版』は予定どおり上映へ。配給会社「映画そのものを観る機会を失わせてはならない」

一方、同映画祭で『沈没家族 劇場版』の上映が決まっている映画配給会社ノンデライコ代表の大澤一生さんと映画監督の加納土さんも28日、連名でコメントを発表した

10月30日と11月2日に予定されている上映については、「ボイコットせず、予定どおり上映」すると報告。

しかしコメントでは、あいちトリエンナーレにおける一連の問題や前述の映画『宮本から君へ』への助成金取り下げなどを「表現の自由を取り巻く暗い案件が続いている」とした上で、「今回のしんゆり映画祭の対応は、さらにその流れの加速に加担してしまった悪手であると認識しております」とした。

さらに、「“表現の自由”の安易な放棄としか思えない事なかれ主義に対して私たちは残念に思っております」とし、「今後の説明責任と対応を明確にするための“オープンな対話の場”を映画祭期間中に設けるよう強く求めます」と映画祭側に要求した。

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『沈没家族 劇場版』公式サイト
『沈没家族 劇場版』公式サイト

しんゆり映画祭の事務局代表 「大変忸怩たる思い」

映画『主戦場』の上映見送りに端を発した今回の問題。

新たに2作品の上映が見送られる事態となったが、同映画祭の事務局代表の中山周治さんは公式Facebookで、映画『主戦場』の上映見送りについて、「今回の見送りに際しまして、映画祭内部でも賛否両論があり、結果として表現の自由を委縮させることにつながる恐れがある判断を映画祭が決めざるをえなかったことには大変忸怩たる思いがあります」とコメントを発表した。

上映の中止を決めた理由については、同映画祭がほぼすべての運営を市民ボランティアが行っているため、「映画館での妨害・いやがらせなど迷惑行為への対応を市民ボランティアで行う事には限界があること、市民ボランティア自体の安全の確保や、迷惑行為などへの対策費が準備されていないこと、お客さま等との連絡がとれなくなること」など運営面での課題があったとし、「私たちが自信をもって安全に上映を行うことができないと考えました」と明らかにした。

◇「 #表現のこれから 」を考えます◇

「伝える」が、バズるに負けている。ネットが広まって20年。丁寧な意見より、大量に拡散される「バズ」が力を持ちすぎている。 

あいちトリエンナーレ2019の「電凸」も、文化庁の補助金のとりやめも、気軽なリツイートのように、あっけなく行われた。

「伝える」は誰かを傷つけ、「ヘイト」にもなり得る。どうすれば表現はより自由になるのか。

ハフポスト日本版では、「#表現のこれから」で読者の方と考えていきたいです。

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