オーストラリアの主要新聞各社に10月21日、一斉に「黒塗り」文書が掲載された。
「SECRET(極秘)」と記されたスタンプが押された文書の大部分は「黒塗り」でまったく読めない。 政府に対して「報道の自由」を訴えるため、普段はライバル同士の各紙が足並みを揃えて実施されたキャンペーンだ。
総合メディア企業「ニューズ・コープ」傘下の全国紙「オーストラリアン」「ガーディアン オーストラリア」などを含む数多くの全国紙、地方紙が参画した。
BBCによれば、キャンペーンを企画したのは「Right to Know Coalition(知る権利連合)」。参加した有力紙の「シドニー・モーニング・ヘラルド」は、オンラインに掲載したキャンペーン解説記事の中で「競合社同士が連帯する前代未聞のキャンペーンだ」と記している。
ニューズ・コープ・オーストラリアのマイケル・ミラー会長は20紙の「黒塗り」画像をTwitterに投稿。
「政府がジャーナリストの報道に制限を課そうとするたびに、私たちオーストラリア国民は『政府は何を隠そうとしているのか?』と問いかけなければならない」とツイートした。
オーストラリアで何が起きているのか?
きっかけは6月。オーストラリアの連邦警察が、政府に不都合な報道をめぐってニューズ・コープ所属の記者宅と公共放送「ABC」本社を捜査したことに激しい反発と批判が起きた。
前者は2018年に同記者が書いた、政府がオーストラリア国民に対してスパイ活動をしているという記事に関連して、後者はABCが2017年に公開した「ザ・アフガン・ファイルズ」というシリーズの報道番組に関連するものだとみられている。警察はこの2件は「機密情報を公表した疑い」による調査だとしている。
こうした当局の動きに対して、政府はその妥当性を擁護する姿勢をとり続けている。
BBCが報じたところによればスコット・モリソン首相は20日、報道の自由はオーストラリアの民主主義にとって重要だとした上で、「法の支配」が守られるべきだと強調。 「それは私も、どのジャーナリストも、他の誰もが対象になることだ」と語ったという。
オーストラリアでは日本をはじめとする多くの民主主義国家と違って、憲法で明示的に「表現の自由」が保障されていない。