ラグビーワールドカップ日本大会は9月25日、岩手県釜石市の「釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム」で、1次リーグD組のフィジーVSウルグアイ戦が行われた。
東日本大震災から8年半。復興を象徴する同スタジアムでの初戦は、テレビ地上波では放送されなかったが、ラグビーワールドカップの日本版公式Twitterが詳報した。様子を振り返る。
復興のシンボルとして
「釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム」は震災で津波に流された旧鵜住居小学校、釜石東中学校の跡地に建設された。
2015年にラグビーワールドカップの開催都市が決まった際、国内12の開催都市の中で釜石市だけがスタジアムを持っていなかった。小中学校の跡地に、復興のシンボルとして建設されたのが、同スタジアムだ。
メインスタンドの屋根幕は、鳥の羽根や、船の帆をイメージ。「羽ばたき」や「船出」という震災からの復興への願いが込められている。
津波で流された小学校に入学するはずだった子どもたちは、他の学校や仮設の校舎で学んだ後、2017年4月に鵜住居小学校の新校舎に戻り、2018年3月に小学校を卒業した。
「今日は特別な日です」
ラグビーワールドカップの日本版公式Twitterは、25日午前に震災から今日までのスタジアムをめぐる動きを伝える動画を投稿した。
さらに、キックオフ前の午後1時55分、「今日は特別な日です」というコメントとともに、子どもたちが制作に関わった動画を投稿。
動画のフルバージョンには、子どもたちが街の大人にインタビューをしたり、高台に建てられた新校舎から完成していく競技場を眺める映像も。
「ラグビーは、後ろにいるみんなを信じてパスをだして、進んでいくんだ」
「背が高い人も、低い人も、足が速い人も、頭の回転が速い人も、力が強い人も、心が強い人も、ボールを投げるのが得意な人も、受けるのがうまい人も。ラグビーのように、私たちの、それぞれの個性も、きっと活かされるだろう」
「海よ、もう、ノーサイドだ。わたしたちは、未来だ。わたしたちは、この海も、悲しみも、のりこえていく」
ラグビーに復興への思いを託したメッセージも盛り込まれている。
晴天に恵まれた競技場には、試合前に「3・11の地震と津波の時はサポートをありがとう」とメッセージが書かれた巨大フラッグがフィールドに広げられた。
スタジアムには、たくさんの子どもたちの姿も。笑顔で手を振る体操着姿の子どもたちの様子も投稿。「楽しんで」とメッセージをつけた。
隊列を組んだブルーインパルスもスタジアム上空を飛行。大歓声が上がった。航空自衛隊松島基地では、3・11から今日までを一緒に駆け抜けてきた。
力強い和太鼓に迎えられ、ウルグアイとフィジー、両チームの選手入場後は、震災の犠牲者を悼んで黙とうがささげられた。
続いて、フィジーとウルグアイの国歌斉唱。ウルグアイの選手とともに歌うマスコットキッズの頭をウルグアイのキャプテンが撫でる様子も。
キックオフ直前には、フィジー代表による戦い前の儀式「シビ」が披露された。ウルグアイの選手たちは横一列に並んで対峙。スタジアムからは大きな歓声が上がった。
ウルグアイのキックオフで試合開始。序盤からウルグアイのリードで進んだ。
試合はウルグアイの歴史的勝利で幕。
ウルグアイは1999年大会のスペイン戦、2003年のジョージア戦に続く、16年ぶりのワールドカップ3勝目を飾った。
試合が終われば「ノーサイド」。
最後は「選手もファンの皆さんも、釜石で美味しいものをたくさん食べて」とツイートを締めくくった。