6月に大阪で、日本で初めてG20が開催されました。そのタイミングに合わせて、Japan Youth Platform for Sustainability(JYPS)主催で「G20ユースサミット G20とSDGsー地方創生とパートナーシップ(若者✖︎〇〇)一緒に若者の力で社会を変えるための2日間」
というイベントが行われました。
これは若者たちが主体的にSDGsについて考えることを目的としたもの。
私は、この「G20ユースサミット」のジェンダー平等をテーマにしたSDGsのセッションに登壇者として参加しました。その時のことを、レポートしたいと思います。
ある大学生が、社会を変えるために伝えたいこと
ここで、私のことを少し紹介させてください。
京都大学経済学部に在籍していて、2020年3月卒業予定。友人たちと、ジェンダー・セクシュアリティに関わらず、誰もが価値を認められる社会を作りたい!という思いで、Genesis(ジェネシス)という団体を立ち上げ、一般社団法人を設立中です。
「G20ユースサミット」では、私と同じように、日本でより多くの人が声をあげられるような環境を作り、ジェンダー平等を目指して活動しているVoice Up Japanの山本和奈さんや、上智大学で性的同意のワークショップが義務化されるように働きかけているSpeak Up Sophiaの横井桃子さん、大阪市男女いきいき財団(正式名称:一般財団法人大阪市男女共同参画のまち創生協会)の岸上真巳さんらとパネルディスカッションを行いました。
日々学校に行ったり、会社に行ったり、家で家事をしたり、友達と遊びに行ったり、そんな毎日を過ごしていたら、わざわざSDGsについて考える機会はないかもしれません。
なんかまた「意識の高い」学生がイベントしているな〜と思うかもしれません。
そんなことはない!ということを伝えたくて、今、筆を執っています。
私が考えるSDGsとは?
まずは、私が考えるSDGsについてお話しします。
SDGsとは、Social Development Goals の略称です。持続可能な社会を作る上で、この地球に生きる全ての人が幸せに、これからの世代のことと、私たちが暮らしている地球のことを大切にするために達成するべきゴールだと思います。
これまでの長い歴史の中で、私たちの暮らしは随分と豊かになりました。
食材が長期保存できるようになったり、何日もかかった船の旅が飛行機に代わり、ガラケーからスマートフォンになったりました。とても便利で幸せな時代を生きていると強く感じます。
でも、その幸せは、実は誰かの犠牲のうえで作られてきたものです。
例えば、私たちが使っているスマートフォン。レアメタルが使われていますが、レアメタルは紛争地帯に存在するもの。レアメタルによって紛争地帯が利益を得ることは、戦争の長期化に影響を及ぼすことがあると考えられています。
そして、私たちが気軽に買っているファストファッションの服。悪質な労働環境の元で生産者が苦しんでいます。
今回、私はG20ユースサミットのなかで、SDGsの中のジェンダー平等について議論をしたわけですが、幸せなように見える世の中でも、この地球上からは性差別や性暴力は無くなっていません。ジェンダー平等も、重要なSDGsのテーマなのです。
私たちの生活の中で、何気なく使っているものや、何気なく考えていることなどが、おそらく誰かを、何かを、傷つけているのだろうと思います。
そして、こうした問題を全て一気に解決することは不可能です。
でも、まずは知ること、自覚することで、より多くの人が幸せになれると私は信じています。そのために目指すべきものがSDGs。私はそう考えています。
皆さんもSDGsについて一緒に考えてみませんか?
SDGsの初めの一歩、それはまずは興味を持つことですから!
G20ユースサミットで話し合われたこと
例えば、G20ユースサミットの登壇者の1人である大阪市男女いきいき財団の岸上さんは、学生の時に「ウーマンズダイアリープロジェクト」という活動をしていました。その活動が、今でもジェンダー平等に携わる原動力だそうです。
ウーマンズダイアリーとはセックスワーク、HIVなどについて思うことを色んな方に書いてもらい、毎週それらの原稿について議論、学生間のチェックを経て販売していた冊子のことです。
また、Speak Up Sophia の横井さんは、伊藤詩織さんが執筆した『Black Box』を読んだことが、ジェンダー平等に情熱を燃やすきっかけになったそう。
彼女はその夜、怒りで眠れなかったと言います。伊藤詩織さんが実際に被害にあったと訴えているレイプの体験を赤裸々に書いている本を読み、日本でこんな衝撃的なことが起きているんだとショックを受けたそうです。
そして、彼女は「性的同意」という概念を知る機会に出合いました。
性的同意は、様々な団体によってその定義が異なりますが、ここでは私が共同代表を務めています、Genesisのワークショップで使う際の定義を紹介します。
「性的同意は推測、想定、威圧、そして搾取によって得られたものではなく、自由で、積極的で、そして個人的な選択です。(TEACHING ABOUT CONSENT IN PSHE EDUCATION AT KEY STAGE 3 AND 4 by PSHE Associationより引用、和訳)」
簡単に説明すると、対等な関係で、相手の体に触りたい時はちゃんと相手に聞いてからにしようねということです。
当たり前の話なのですが、セクハラやレイプの話になると、被害者が責められることが多々あります。
「あなたのペンを借りてもいい?」「このプリン食べてもいい?」普段から、誰かとコミュニケーションをする際は絶対に許可を得ているはずです。
それなのに、セクハラや性被害の時は、被害者が責められてしまう…。
横井さん自身、セクハラ被害などに遭った際は自分のことを責めていたそうです。しかし、性的同意の考え方を知ってから、自分の体をもっと大事にしようと思えたと言います。
当事者意識を持つのは、何かきっかけがないと難しい?
日本は世界経済フォーラム(Global Economic Forum)から出される「ジェンダー・ギャップ指数(Global Gender Gap Index)」の数値が149カ国中110位、G7の中で最下位と非常に低く、どこを見渡しても子どもを連れているのはパパよりママの方が圧倒的に多いのに、「男とか女とか関係ないじゃん〜」「むしろ女性の方が優遇されてるよね〜」と言われることがあります。
そもそもジェンダーやセクシュアリティの話をしだすと、「うるさいな〜」というような反応をする人もいます。
やっぱりジェンダーってなかなか問題意識を持ちにくいのでしょうか?
「何かきっかけがないと…」
「セクハラとかそういう嫌な目に遭わないと問題意識を持つのは難しい」
そう思う人も多いかもしれません。
でも「そんなことはない」と私は断言できます。私は壇上でこんな風に伝えました。
「例えば、気づかぬうちに、女の子は行動を制限されている。女性は夜遅くに一人で出歩いてはいけない、夜一人で歩いているときに足音が聞こえると恐怖心を感じる、など。夜歩いている時に背後に気をつけるためにイヤホンをつけちゃいけないと言われること。気づいていないだけで、被害の有無にかかわらずみんな当事者だ」
今回のイベントでは女性の事例だけを挙げましたが、男性でもあるはずです。男性だからという理由で、料理が好きだったり、リップや顔パックをしているだけで、「男らしくない」と人に言われた経験はありませんか? それは、性別が理由で行動を制限されている差別ではないでしょうか?
自分の力では何も変えられないと思わないで
さらに考えてみましょう。
みなさん、男でよかったな、女でよかったな、逆に、男で嫌だったな、女で嫌だったな、という経験はないでしょうか?
その「よかったな」や「嫌だったな」という経験は、本当に、性別が理由になって良いものでしょうか?
そんなことはないはずです。もちろん生理の有無など、避けられないことはあると思います。
でも、例えば「女の子はヒステリックが多い」「男の子は共感能力がない」などなど、性別によるイメージを理由で自分のことを勝手に決めつけられていいものですか? こうして考えてみると、例はたくさん出てくるのです。
みんなが性別による決めつけに苦しんでいる。だから、私はみんなが当事者だと思います。
では、私たちはどうしたらいいのか?
私をはじめ、今回のジェンダーセッションの登壇者は、法改正のための署名を始めたり、大学に性的同意のワークショップを求めたり、SNSで発信したり、問題解決のためにさまざまな活動をしているように見えると思います。
しかし私は、みんながみんな、そういうことをしなければならないとは考えていません。
登壇者のVoiceUpJapan・山本さんのこんな言葉でイベントは終了しました。
「誰か1人に、自分が考えていることや、自分の思っていることを伝えた時点でアクティビスト。自分の力だけでは、何も変わらないと思ってしまうかもしれない。1人ができることは少ないが、1人の力が大きな力になることもある」と伝えてくれました。
何もできないか?と聞かれたら、そんなことはないと伝えたい。
まず、私たちみんなが当事者であると自覚すること。
そして、目の前の誰か1人を救うこと。
私たちは、目の前の誰かが苦しい思いをしていたら、寄り添おうとすることができるはずです。
(編集:榊原すずみ @_suzumi_s)