オバマの夏の読書リスト2019 村上春樹作品なども推薦 「ネット・バカ」も…。

バラク・オバマ氏が今年もFacebookで恒例の読書リストを公開している。日本の作家、村上春樹の小説も。
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Fabrizio Bensch / Reuters

アメリカの前大統領、バラク・オバマ氏が今年もFacebookで恒例の読書リストを公開している。

今年のリストでも、小説を中心に、黒人、女性や移民といったマイノリティが直面した物語が多く、現代のアメリカ、そして世界の有り様を照らすジャーナリスティックな作品がほとんどとなっている。

また、今年のリストには日本の作家、村上春樹の小説も入っていた。オバマ氏が紹介した作品を紹介する。

 

「まず読むべき本」トニ・モリスンの作品群

 オバマ氏が、一度読んだ人でもぜひ再読をとまず紹介したのは、8月5日に88歳で亡くなったトニ・モリスンの作品群。アメリカの黒人作家として初めてノーベル文学賞を受賞した女性作家で、オバマ氏は2012年に大統領自由勲章を授与している。

デビュー作となった1970年の『青い眼が欲しい(The Bluest Eye)』では、白人の容姿に強迫的に憧れる黒人の少女を通じて、アメリカ社会の価値観を問うた、衝撃的な作品だ。 

オバマ氏はその他にも『ビラブド(Beloved)』『ソロモンの歌(Song of Solomon)』『スーラ(Sula)』…その他すべてを読んで欲しいとして紹介している。

 

 「国の宝だった」「彼女の作品は、私たちの良心や道徳的想像力に訴えかける美しさと意義深い挑戦があった」と、彼女の死を悼むツイートをしたオバマ大統領

 

『女のいない男たち』(村上春樹)も紹介

 

オバマ氏が挙げた村上春樹氏の作品は、短編小説集の『女のいない男たち』だった。愛した女性が去っていった後の男性たちを描いたものだ。

オバマ氏は「それはあなたを揺さぶり、混乱させ、時には答えより多くの質問を残します」と紹介している。

オバマ氏のお気に入り作家の1人に、村上春樹氏は入っているようだ。

2018年末に公開された「おすすめ映画」の中でも、オバマ氏は『バーニング』を挙げている。これは韓国のイ・チャンドン監督の作品だが、原作は村上春樹氏の短編『納屋を焼く』を元にした小説だった。

 

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村上春樹氏
Scanpix Denmark / Reuters

 

 

黒人や女性をテーマにした作品

『The Nickel Boys』コルソン・ホワイトヘッド

フロリダ州に実在した、教師による生徒への体罰や虐待などが長年に渡って行われたことが明らかになった学校をモデルにしたもの。

「時に飲み込むのが難しいが、必読です。ジム・クロウ法(人種差別的なアメリカ南部の州法の総称)や、大量収容が人々を引き裂き、今日にまで波紋を引き起こす方法について、詳細に描き出しています」(オバマ氏)

 

『Exhalation』テッド・チェン

生命倫理やAIなどのストーリーが含まれる短編SF小説集。

「考えさせられ、より多くの疑問と格闘し、人間とは何かを感じられる、最高のサイエンスフィクション」(オバマ氏)

 

『ウルフ・ホール(Wolf Hall)』ヒラリー・マンテル

16世紀のイギリス宮廷を舞台にした、「稀代の天才政治家」と呼ばれ、駆け引きに優れたトマス・クロムウェルを主人公にした歴史小説。

「2009年の発表当時、私は少しだけ忙しかったので読み逃しました。今日でも素晴らしい」(オバマ氏)

 

『アメリカン・スパイ』ローレン・ウィルキンソン

冷戦中のFBIの黒人「女スパイ」マリー・ミッチェルを主人公にした歴史フィクション。

「単なるスパイ・スリラーではなく、家族、愛、そして国の絆を含んだ物語です」(オバマ氏) 

 

『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること(The Shallows)』ニコラス・カー

インターネットが人々の集中力を奪い、思考能力を退化させると論じた話題作。

「発表は数年前(2010年)ですが、インターネットが私たちの脳や生活、そしてコミュニティに与える影響に関する議論は、今の時代でもまだ価値のあるものです」(オバマ氏)

 

『Lab Girl』ホープハーレン

女性植物学者による自伝的作品。研究費の確保や科学コミュニティでの性差別などの問題にも触れている。

「科学界の女性の人生、素晴らしい友情、そして木の豊かさについて美しく描かれた回想録。素晴らしい」(オバマ氏)

 

『Inland』テア・オブレント

アメリカ西部を舞台にした歴史小説で、トルコからの移民と、干ばつに苦しむアリゾナの農場の妻の2つのストーリー。デビュー作がベストセラになったテア・オブレント待望の作品とあって、オバマ氏も「ネタバレ」を警戒してこのように紹介するに留めたようだ。 

「昨日出たばかりなので、何も言いません。でも、オブレント氏の次回作を待ち望んでいた皆さんががっかりすることはないでしょう」(オバマ氏)

 

『How to Read the Air』ディナウ・メンゲストゥ

エチオピア生まれの作家が描いた、アメリカへ逃れた難民家族のストーリー。

「アメリカ移民の物語の複雑さと、救済についてより良く理解できるでしょう」(オバマ氏)

 

『Maid』ステファニーランド

シングルマザーになり、メイドとして掃除をすることになった作家自身の回顧録。

「シングルマザーの個人的な体験であり、アメリカの格差社会への正視であり、 多くの家族が渡っている綱渡りのロープについての解説、そしてすべての仕事の尊厳を思い出させるものです」(オバマ氏)