NPO法人フローレンス(駒崎弘樹・代表理事)は、人工呼吸器や胃ろうなど、医療的ケア児のための日本初のシッター事業「ナンシー」を9月1日から開始すると発表した。
その記者会見には、立ち上げの事業資金2000万円の一部を寄付した企業や個人も同席していた。
なぜ寄付をしたのか。4者が語ったそれぞれの思いを紹介したい。
黒川華恵氏(合同会社西友 / ウォルマート・ジャパンHD 執行役員 人財部部長)
フローレンスとのお付き合いは2011年からになります。情熱に非常に魅了され、パートナーとしていろいろな支援をさせていただいています。社会的な問題に支援ができ、非常に嬉しく思っています。
弊社の事業はスーパーマーケットです。お客様の7割が女性。お子さんのケアをされているお母さんもお客様にすごく多い。ですから、女性をもっと活躍させられるような企業にしたいと思っています。それはグローバルのウォルマートでも力を入れていることです。
女性がキラキラと輝いて活躍できるように、いろいろな人事施策をしています。いろいろな事情があって家庭に縛られている女性は大勢います。自分の自由な時間がとれなくて、女性としてもプロフェッショナルとしても時間的・労力的投資ができない方の支援を積極的にしていきたい。そういう方たちが我々の事業を支えてくれますし、戦力になっていただけると思っています。
この事業の支援をさせていただけることを非常に光栄に思っています。
村上絢氏(一般財団法人村上財団 代表理事)
フローレンスとは、父(村上世彰氏)が設立したチャリティープラットフォームの時代からの付き合いです。
ですが、私自身がフローレンスに支援し、財団を設立しようと思ったのは、2015年秋に起こったことがきっかけでした。
2015年11月、証券取引等監視委員会から強制調査を受けて、調査の結果何も出てなかったのですが、それが公になるまでに1年以上かかりました。度重なる調査の日々の中で、私は当時妊娠していた女の子を死産してしまいました。
その時に駒崎さんにいろいろとお話を聞いていただき温かい言葉をかけていただきました。障害児保育園「ヘレン」(世田谷区初の障害児保育園、2017年開設)の構想もその時に聞いて、これは支援しなくてはいけないと強く思いました。財団設立後、最初に寄付したのがヘレンの開設支援です。
その後「ヘレン」にも行かせていただき、子どもたちが本当に元気で溌剌としているのを見ました。遊びやすいおもちゃを卒園した保護者の方が寄付していたり、子どもたちがここですごく成長しているんだなと感じました。
私の息子も進学の時期を迎え、「ヘレン」の子たちは卒園後にどうするのだろうと気になっていました。その頃に今回の「ナンシー」事業の話を聞いて、是非支援したいと考えました。
子どもは本当にかけがえのない存在である一方、子育ては本当に大変で、時には仕事以上に大変だなと思うこともあります。一時も目を離すことができない、障害をもったお子さんの子育ては、私の想像以上に大変なのでしょう。
「ナンシー」は働いていないお母さんでも利用できるので、多くのお母さんお父さんが自分の時間を持つことも出来るのではないかなと思います。多くの皆様にナンシーのことや障害児のことを知っていただき、子どもたちや保護者が過ごしやすい社会になることを願っています。
個人寄付者:佐俣アンリ氏(ANRI代表パートナー、日本ベンチャーキャピタル協会理事)
ベンチャーキャピタルファンドの代表をしています。「ナンシー」の立ち上げを金銭面でサポートでき非常にうれしく思っています。仕事としては、社会のいろいろな課題に対して、スタートアップ企業という形で解決していく人たちを創業から応援しています。
フローレンスについては、2つの側面で応援したいと思っています。
1つは、全ての子どもは幸せになる権利があると純粋に思っていることです。フローレンスの挑戦することは社会的に一番難しい課題。極めて難しい状況にある子どもたちを幸せにできることができれば、かなり大きな社会的意義があると考えました。
2つ目は、社会問題を解決する起業家という意味で、普段の仕事で投資という形で応援している、FintechとかMaas、公衆衛生を手がける企業と比べても、全くこの事業が見落とりしないどころか、超一流だなと思っているからです。投資家として、私としても非常に勉強になるなと思っています。
非常に難しい社会課題に挑戦する人々に対して、支援者がたくさん集まる社会になることを目指したいと思っています。
個人寄付者:松本恭攝氏(ラクスル代表取締役社長CEO)
支援をするのは同じ船に少しでも載せていただき、世の中を改善する景色をみたいなと思ったのと、フローレンスのビジョンに感銘を受けたことが理由です。
世の中を前進させる、社会をより良くしていく活動は、事業をする者の使命だと思っています。
(医療的ケア児の問題は)人数としては小さいかもしれないが、直面する人にとっては非常に大きな問題です。国は社会保障の全てをケアしきれないかもしれないが、民間の力でボトムアップの事業としてこれを解決することはできる。
世の中を前進させるため、国ができないことに取り組む事業。それは一般の企業と同じことだと思います。
今回に限らずフローレンスは、社会貢献の事業を仕組みにしっかりと落とし込んで長期で継続する形になっています。ステークホルダーを巻き込んで継続性、持続性のある枠組み・仕組みを作るということは非常に重要で、思いだけでは継続しない。
ラクスルも「仕組みを変えれば社会がもっとよくなる」をビジョンに持って、社会の構造をもっと変えていこうという取り組みをしています。その点に非常に共感して、同じ船に載せていただくという形で寄付をしました。