東京オリンピックに子どもと教師を“動員”? 都担当者は「ありません」

「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところから徒歩」「バス利用も禁止」ーー。Twitterで話題となっている“噂”について、担当者に聞きました。
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Reuters

東京2020オリンピック・パラリンピックまで1年足らず。

都内の学校は「東京都オリンピック・パラリンピック教育」の一環で、希望すれば大会の競技を学校単位で観戦できることになっている。現在は都が約2300の公立校に希望を調査中だが、7月28日には「拡散希望」というハッシュタグとともに、Twitterに子どもや教員が競技観戦に動員されるという噂話が投稿された。

「都からのお達しで、都内の小中学校に通う生徒はオリンピックを盛り上げるために教員の引率でオリンピックの観戦に行くらしい」

「夏休み中だけど生徒の参加は義務で、来ないと欠席扱い」

「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところで降りてみんな揃って徒歩で向かわなければいけないらしい」

Twitterより引用

一連のツイートは、「東京五輪に動員される小学校の先生の話」として投稿されている。「熱中症になる生徒が出るかもしれないし、鞄に入れた弁当は腐るかもしれない」と、炎天下を子どもや教師を心配する内容で、29日午後3時現在で5万5000件以上リツイートされている。

東京都教育庁指導企画課の担当課長に話を聞いた。

 

「義務や動員にならないように気をつけている」

ーーTwitterの投稿はご存知でしたか?

全然知らなかったです。強制、動員……。そういうことでは決してなく、あくまで学校の希望があれば観戦機会を提供します、ということなんですが。

 

ーー「東京都オリンピック・パラリンピック教育」は2016年度から都内全ての公立校で行われていますが、その集大成として、希望校にはオリパラの観戦機会を提供する。チケット代は都が負担する、ということですが。

一番気をつけているのは、子どもたちを義務的に観戦に行かせたり、観客の人数合わせのように動員したり、ということにならないようにということです。ですから、教育の内容も、観戦を希望するかどうかについても、学校の判断にお任せしています。

 

ーーTwitterで話題になっている内容について改めて確認させてください。現在は希望を調査中ということですが、どの程度集まっていますか?

幼稚園から高校までの公立校を対象にしています。希望の有無を聞いているところで、まだ数字はお伝えできませんが、多くの学校から観戦希望をいただいています。年内には詳細を決定し、学校側に伝えられるように動いています。

 

ーーどの競技をどの学校に割り当てるか、どのように決めるのでしょうか?

学校の地理条件を加味して割り当てていきます。学校から最寄り駅までの移動手段や、競技場までの交通手段と移動時間、参加する子どもの年齢。学校ごとに条件が異なりますから、これらを加味しながら決めていきます。

 

「外にいる時間を短縮できるよう検討中」

ーー熱中症などを心配する声もありますが、対策は?

むしろ一般の観戦客とは別の入口を用意するなど、外で長時間歩いたり待機したりする時間を短縮できるような方法を検討しています。競技の割り当てに関しても、例えば小学校低学年には屋外競技は難しいだろうと思いますし、屋内競技を割り当てることも視野に入れています。

一駅前で降りて徒歩で…というようなことを都が指示することはあり得ません。

 

ーー学校が観戦を決めた場合、参加しなければ欠席扱いになるというのは本当でしょうか?

あくまで授業の一環なので、参加しなければ欠席扱いにはなると思います。ただ、夏休み中のことなので、「欠席はダメ」とは考えていません。

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東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が実施競技を題材に製作した小学6年生向けの「算数ドリル」を使った実践学習会=2018年4月、東京都渋谷区
時事通信社

ーー観戦以外にも、ボランティアなどで学校単位で動員されるのではないか、というような不安の声もあります。

そんな風に思われているとは知らなかったです。例えばどんなことでしょう?一つ心配があるとすれば、学校側がよかれと思ってオリパラに合わせて張り切りすぎてしまうことでしょうか。

もしかすると、恒例の地域清掃活動を2020年はオリパラに関連づけてやろう、とかそういうことはあるかもしれません。

あとは詳細は決まっていませんが、高校生も希望すればボランティアに参加できるような仕組みを作ろうとは考えています。ただ、義務にするつもりはありませんし、まだボランティアの内容も決まっていません。

 

ーーそもそも「東京都オリンピック・パラリンピック教育」とは、どんなものなんでしょうか?

そもそも、オリパラ教育というのは、あくまで普段の授業の延長線上にあるものなんです。特別なことをやるのではなく、せっかくなので普段教えている内容をオリパラに関連づけて生かそうよ、ということ。例えば、算数で「速度」について習いますよね。この時、ウサイン・ボルトならどうか、というように競技やオリパラに絡めて考えてみるのもオリパラ教育です。

公式サイトには授業や取り組みの参考にしてもらえるように事例を掲載していますが、内容は学校が自由に決めていいものなんです。

 

ーー実際の観戦が「集大成」というのは?

大事なのは体験することだと考えています。実際に競技を観る、ということになれば、学校でその競技についてルールや参加国についての事前学習をするでしょうし、そういう学習効果も期待できると思っています。

 

ーー改めてですが、教師や生徒の「動員」はないと?

ありません。都が学校や子どもに対して一律に「ああしろ、こうしろ」と言うことはしません。