EU離脱をめぐって揺れるイギリスで、テリーザ・メイ首相の後任として、ボリス・ジョンソン氏が次期首相になることが決まった。
「イギリスのトランプ」とも評され、破天荒なキャラクターで知られるジョンソン氏は、どんな人物なのか。経歴や言動、EU離脱への姿勢などを振り返る。
庶民派、巧みな演説、過激発言
ジョンソン氏は、1964年6月生まれの55歳。出生地はアメリカのニューヨーク。家族とイギリスに戻ったのち、名門イートン校を経てオックスフォード大学に入学。
デイビッド・キャメロン元首相は後輩にあたる。卒業後はデイリー・テレグラフ紙の記者を経て、週刊誌「スペクテイター」で編集長を務めた。2001年からは下院議員を2期、2008年にはロンドン市長に就任しロンドンオリンピック成功の立役者となった。
もともとは、庶民派として知られ、奇抜な言動や巧みな演説で人気・注目を集める一方で、失言やスキャンダルも目立つ。過激な発言などから、アメリカのトランプ大統領と比較されることもあった。
BBCによると、スペクテイター時代だった2004年、イラクで起きたイギリス人の誘拐事件をめぐり、悲しみにくれるリバプール市民に対して、同情を買おうとしたと批判する記事を掲載。保守党のハワード党首(当時)から、現地に謝罪に行くよう命令された。
2008年からロンドン市長を2期務めた。犯罪や住宅、交通政策で成果を強調し、ジョンソン氏陣営のTwitterアカウントでも、その功績をイギリス全体にも届けると訴えていた。
主な政策に、2010年に始まった通称「ボリス・バイク」と呼ばれるレンタルサイクルがある。自身も積極的に利用する姿が知られ、市長職の最終年となった2016年には、利用回数が1030万回に達した。
外相就任時は、閣僚経験のなかったことや、過去の差別的な言動を理由に、懸念や反発の声が広がった。
外交では、ロシアへの強硬姿勢を支持。イギリスの元スパイのロシア人男性とその娘に神経剤が使用されたとする事件では、ロシア外交官の国外追放を発表した。
「10月末までにBrexitを遂行する」
ジョンソン氏は、EU離脱の急先鋒。2016年6月の国民投票では、公式の離脱運動「Vote Leave(離脱に投票を)」の主導者として活動した。
投票で勝利すると、離脱に不安を訴える国民に、「さらに安全で豊かな未来を保証するもの」だと語っていた。
一方で、離脱派を支持したにもかかわらず、次期首相になるために離脱派の負けを望んでいたと、保守党のアラン・ダンカン議員が明かしていた。
外相時代の2018年、EUと協調しながら離脱を目指すメイ首相の方針に反発して辞任している。
今回の首相就任にあたっては、期限となる10月末には離脱を辞さない強硬な姿勢を打ち出しており、離脱の進め方をEUとの合意ができなくても実行に移す考えだ。
7月23日には、保守党首選での勝利スピーチで、こう語っている。
「我々は、10月31日までにブレクジットを遂行する。やればできるという新たな精神で、ブレクジットがもたらすあらゆる機会を生かしていく」