7月8日、東京・渋谷のステージに吉本興業の芸人たちが立っていた。
彼らは持ち前のトークスキルで場を盛り上げるが、いつもとは会場の空気がやや異なっていた。
客席にいたほとんどの人が、耳が聞こえない・目が見えないなどの障がいを持っているか、日本語が分からない在日外国人だったのだ。
障がいや言語の壁を乗り越え、誰しもが共に楽しめる“遊び”を作ることを目的に開かれたワークショップ。当日の様子を取材した。
「よしもと芸人とアソブ 未来言語でNEWゲーム」と題して開かれたこのワークショップ。
参加型のゲームを通じて、コミュニケーションを学ぶことが目的だ。
誰もが「会話」をできる未来を目指す「未来言語」と吉本興業の共催で2018年末に第1回が開かれ、今回は2回目の開催となった。
参加したのは、お笑いコンビ・次長課長の河本準一さんや、しずるの村上順さんと池田一真さん、大西ライオンさんなど総勢10人以上の吉本芸人たちと、「目が見えない」など何らかの障がいを持つ人、日本語が話せない在日外国人。
まず、イベントが始まる前に6〜7人ほどのグループに分かれ、1グループあたり1人の芸人が加わり自己紹介をする。
紙とペンを用いて筆談しながら話を進めたり、大きなリアクションで互いを伝え合っていた姿が印象的だった。
グループ間でコミュニケーションが取れてきたところで、いよいよゲームの時間へ。
参加者は「みえない」「きこえない」「はなせない」と書かれたカードを引き、引いたカードに書かれた言葉に応じて、目隠しをしたり、イヤホンで耳を塞いだり、口を塞いだりして、情報を伝えづらく、かつ受け取りにくい状況を作り出す。
最初に挑戦したのは、山手線ゲーム。
与えられたお題に対して、それに応じた言葉を答えるものだ。(例:お題「国」→回答:日本、アメリカ...)
「たべもの」というお題が与えられると、それぞれのグループのメンバーたちは、自分の答えを相手に伝えようと身振り手振りを交え、必死になっていた。
なかなか上手くゲームが進まないグループもあったが、途中、全体の進行を務めていた河本さんが「きこえない人・みえない人は、いま誰が喋っているかも分からないかもしれないよ?その上でどう伝えるかを考えて!」とアドバイスを送る。
すると、メンバー同士で状況が理解できているか、互いを想い合うような気遣いが次第に生まれていった。
吉本芸人が障がい者のアート作品の“名付け親”に
ゲームに続いてワークショップの中盤で行われたのが、今回から新たに企画された「よしもとアートオーク笑(ショウ)」。
障がいをもつアーティストのアート作品を、参加者が競り落とすという流れは一般的なオークションと同じだが、同企画ではさらに、障がいのあるアーティストの作品ついて、進行の河本さんが質問をし、それを聞いた芸人たちが大喜利の要領で絵のタイトルを考えていく。
どんな意図で作品が描かれたのかなど、インタビューを通じて作者の話が引き出されることで障がいを持つアーティストとのコミュニケーションが生まれ、大喜利で作品に名前をつけることで“遊び”の要素が加わった。
芸人たちが大喜利で付けていく絵のタイトルに会場は爆笑の渦に包まれ、肝心なオークションも落札金額がどんどん上がる盛り上がりを見せた。
オークションの終わりには、河本さんが「芸人が作品名をつけてオークションをするってのは画期的。これ、続けていきませんか?」と新たな可能性を感じていた。
【イベント参加芸人】
次長課長・河本準一 、大西ライオン、キャベツ確認中・キャプテン★ザコ、しまぞうZ 、しずる・村上純、池田一真、 光永[ひなた]、レインボー・ジャンボたかお、池田直人 、マイマイジャンキー・宮崎駿介、明賀愛貴、カエルサークル・ソイくん