寝ている間に子どもの体調に異変があったら…子育て中の人たちは、誰しもそんな不安に駆られたことがあるだろう。かといって、ずっとつきっきりで見ている訳にもいかない。
そんな悩みを解決するために、株式会社リキッド・デザイン・システムズ(LDS)は、子どもが寝ている間の呼吸を測定する「ベビーセンサー」を開発。保育園や家庭向けに提供してきた。ユーザーからの声を取り入れ、より便利で使いやすいマット一体型の新製品のために、A-portでクラウドファンディングに取り組んでいる。
■介護用製品からの出発
LDSは2008年に創業。人間の呼吸・心拍・体動・眠りなどを電子的に計測する独自の「バイタルセンサー」を使って、眠りを記録・解析する製品の自社開発を手がけてきた。
ある日、同社に保育園からの問い合わせが舞い込んだ。
「介護用製品を保育園でも使えるようにアレンジできないか」という相談だった。
嘔吐や異物による「窒息」や乳幼児突然死症候群など、0歳児が昼寝中に突然亡くなってしまう事故は、家庭や保育の現場でしばしば報告されている。そうした事故を避けるため、保育園では、息をしているか、どっちを向いて寝ているかなど、保育士が5分おきに細かく記録しているということだった。
「保育士さんたちの負担を少しでも減らしたい」
そんな思いを受けてLDSは、生後3カ月以上の子どもを対象としたベビーセンサーの開発をスタート。試行錯誤の末、6人の呼吸を同時に見守ることができる保育園向けベビーセンサー「IBUKI PLUS」として製品化に成功した。
■大きな反響と新たな挑戦
「IBUKI PLUS」を保育園へ納入すると、これが保護者の間で評判となった、一般家庭向け製品の開発を望む声があがり、LDSは開発に着手。モニター調査や実証実験で寄せられた約300件の意見やクレームと半年間かけて向き合い、家庭用呼吸見守りセンサー「IBUKI」を完成させた。
「『IBUKI』は入荷するたびに即完売という大きな反響を頂き、生産が追いつかないほどでした」と代表取締役・遠山直也さんは語る。
これまでに約1000台を販売し、購入者からは「安心感が違う」などの好評を得ているという(現在、個人用は販売を終了。保育園用のみ販売中)。
「IBUKI」や「IBUKI PLUS」を開発してきた経験を踏まえて、今回LDSが世に問うのは、世界初のマット一体型ベビーセンサー「Baby Ai」(ベビーアイ)だ。
大学や医療メーカーでも採用されるほどの計測精度の高さは維持しながら、ユーザーからの生の声を活かし、一般家庭向けの機能を充実させた。アプリを使い、同時に2人までのデータを記録・保存、通気性やクッション性に優れ、パーツによっては丸洗いや水洗いができる、といった機能を備えている。「要望やクレームに対して、ほぼ100%応えました」と遠山さんは胸を張る。
■偉大な先輩へのオマージュ
取材の終わりに、「是非書いてもらいたいことがあります」と遠山さんが口にしたのは、ある人物の名前だった。
「『Baby Ai』をはじめとする弊社の製品に使われている基礎技術は、SONYの技術者だった高島充(たかしまみつる)さんの発明によるものです。我々は彼への敬意を忘れることなく、受け継いだものを大いに活かして今後も発展させていきたいと考えています」
LDSは「Baby Ai」開発者ブログの「開発までの道のり」で高島氏の功績に触れている。その記事によると、ソニーの生命情報研究所が解散した後、高島氏が設立した企業が研究を引き継ぎ、岩手大学との共著で「空気動圧による呼吸・心拍・体動情報の計測」という論文を発表した。直接触らずに呼吸などを計測する技術だ。LDSは2013年にその研究を引き継ぎ、製品化へとつなげてきた。
LDSでは、「必要とされる方々に、できるだけお求めやすい価格で提供したい。そのためにはまず、1人でも多くの人に製品の存在を知ってもらうことが重要」と7月4日までクラウドファンディングに取り組んでいる。詳しくはこちら