外国にルーツを持つ人々に、浴びせかけられる最低のヘイトスピーチ。「国へ帰れ」などと言ったヘイトは、日本だけでなく世界各国でも問題になっている。
カナダの黒人コミュニティのための旅行サイト「Black&Abroad」は、北米地域では平均するとTwitter上で3分に1回「Go back to Africa(アフリカへ帰れ)」と書き込まれるという調査結果に注目した。
カナダやアメリカはアフリカ系移民が多く、移民へ向けられるヘイトが後を絶たない。
そこで「Black&Abroad」は卑劣な行為がはびこる世の中を180度変えるプロジェクトを実施。
その取り組みが、世界最大級の広告賞の一つとして知られる「カンヌライオンズ2019」のCreative Data部門でグランプリを獲った。
AIが「Go back to Africa」を自動検出すると…
このプロジェクトでは、SNS上に“Go back to Africa”と書き込まれると、AIが自動検出。
「Go back to Africa」以外の文言を削除し、背景にアフリカの美しい風景や観光スポットなどの写真を投稿するというもの。
憎しみに満ちた人種差別を、アフリカの魅力を伝える場としてハイジャックし「Go back to Africa」の意味を逆転させる発想の転換は、大きな評価を得た。
また、投稿される写真には、黒人系の人物が写っている。これは「観光写真=白人」のイメージを変えていくという意味合いも含まれているという。
Black&Abroad社はこのプロジェクトを「新たなテクノロジーが主導するデジタルキャンペーンが、ネガティブなメッセージをアフリカ大陸の多様性を祝福するアクションに変換するのです」と説明している。
カンヌライオンズって?
カンヌライオンズとは、毎年6月にフランスのカンヌで開かれる世界最大級の規模を誇る広告賞だ。
創設は1954年で、広告に限らず世界中のクリエイターが制作した作品の最優秀を選ぶイベントでもある。
2019年は6月17~21日の日程で開かれており、フィルムやPRなど9分野27部門の賞が設定されている。
Creative Data部門は2015年に新設された賞だ。
インターネットやSNSの隆盛により、重要視されてきたビッグデータ。
制作にもデータの重要性が注目され始め、そうしたデータと、クリエイティブアイデアをリンクさせた作品に贈られる。
前回2018年のグランプリは、THE TIMES/NEWS UK & IRELANDの「FKUNSILENCED」。
1963年にアメリカ・ダラスで銃弾に倒れたJ・F・ケネディが、当日話す予定だった演説を再現したプロジェクトだった。
デジタルエージェンシーロスコチームは入手可能なケネディのスピーチを収集し、AIを使って再現している。