中国本土への容疑者引渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正をめぐって、多数のけが人が出る大規模なデモが続いていた香港。香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は6月15日に記者会見し、改正案の審議を一時中断することを発表した。
会見を詳報する。
「当面延期」でも「撤回」はせず
現地メディア「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、会見をテキスト記事としてタイムラインで速報した。現地時間の午後3時10分すぎに始まった会見は約1時間半に及んだ。
林鄭長官は改正案について、「もとは香港への愛情と香港人への配慮から進めたものだった」と釈明。「私たちが至らなかったせいで、香港で大きな対立を引き起こしてしまった。私たちは多くの人を失望させ、悲しませた。私もまた、悲しみ、後悔しました。私たちは誠意をこめて、そして謙虚に批判を受け入れます」と語った。
問題となっている改正案のきっかけは、2018年に台湾で発生した殺人事件。香港人の男が犯行後に香港へ逃げ帰ってしまったため、台湾当局による拘束を免れたのが問題視された。
今回の改正案は、香港が犯罪容疑者にとって「拘束されない地域」として逃げ場にならないように提案された側面もあった。
林鄭長官は、「私たちは法の抜け穴を塞ぐ必要があります。したがって、現段階では法案を撤回することはできない」と述べた。
続投には意欲
会見では、「辞職するか」という質問が7回上がったという。
林鄭長官は明言を避け、「社会的な分断を引き起こしてしまったことを悲しく思うとともに後悔している。香港の未来のために私の経験をいかしたい」と続投に意欲を示した。
「デモ隊の抗議は平和的ではなかった」
6月12日には、「暴動」レベルの大規模なデモが行われた。デモ隊が立法会に続く幹線道路を占拠。警官隊が催涙弾を発射して応戦し、デモ隊やメディアなど多くのけが人が出た。
記者会見では、警察のやり方が過剰だったのではないかとの質問も出たが、林鄭長官は「警察官が法律を執行することは合理的かつ自然なことで、彼らの使命です」と述べ、問題視しない姿勢を示した。
「私は彼らの捜査や司法手続きを妨害するつもりはありません。警察が押収した武器を見れば、デモ隊の抗議が平和的なものでなかったことが分かるはずです。警察に向けて多数のレンガが投げられました」
「 決定は中国の要請ではない」
「審議の当面延期の決定は中国からの要請か」
会見では、こんな質問も飛んだ。
林鄭長官は「決定は私が下した。私はコミュニティリーダーを含む多くの人々に会い、この決定をした。私が北京に知らせ、北京はこれを尊重し、支持した。北京からの要請ではない」と述べ、審議延期は社会の平穏を取り戻すためだったと強調した。
「このまま対立が続けば、警察官や市民にもっと深刻なダメージがあるかもしれなかった。どうすれば社会の平静を取り戻し、より多くの法執行官が怪我をするのを避けられるのか考え抜きました」