緊急避妊薬のオンライン診療認可に「相談窓口を通す」要件が追加。性犯罪被害に限る文言は削られる

第4、5回の検討会で議論されていた「性犯罪の被害者に限る」という文言はなくなり、代わりにオンライン診療をする前に性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどの「相談窓口」を介す要件が追加された。
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性暴力や避妊を失敗したときなど、望まない妊娠を避けるために服用する緊急避妊薬
Peter Dazeley via Getty Images

性暴力や避妊を失敗したときなど、望まない妊娠を避けるために服用する緊急避妊薬のオンライン診療の解禁ついて、厚生労働省の検討会は6月10日、直接オンライン診療にかかるのではなく、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどの「相談窓口」を介する要件を追加する方針を決めた。

前回までは▽近くに受診可能な医療機関がない▽性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある場合に限る━━とした案が出ていたが、今回「性犯罪被害者」に限定する文言が削られた。

この指針案では、利用者はオンライン診療に直接アクセスするのではなく、原則としてまず女性健康支援センターや婦人相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどに連絡を入れて判断を仰ぐ必要がある。

その相談窓口で医師が「性犯罪被害のため対人恐怖がある」などの心理的な状態にあるかを診断する。対面診療が難しいと考えられる場合のみ、オンライン診療につなぐことになる。

緊急避妊薬を必要とする人には「対面診療が一番望ましい」と結論。指針の公表は7月中にも

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厚生労働省のオンライン診療検討会。第6回で指針の内容がほぼ決まった=東京都千代田区内幸町、2019年6月10日
Huffpost japan/Shino Tanaka

 厚労省医事課の担当者は検討会後、今回の判断について「対面診療のほうが、緊急避妊薬を飲むことができる時間が早いため、一番望ましい。オンライン診療であればまず相談窓口に行く。ワンストップセンターのほうがサポートやサービスを受けられる」と話した。

オンライン診療が必要な「心理的な状況」とは、「性犯罪、性暴力などを受けた場合で対人恐怖があったり、産婦人科への受診で過去に内診が苦痛だったなど抵抗感があったりした場合」などを想定している。

オンライン診療の可否を仰ぐ相談窓口には直接行くほか、電話相談またはビデオチャットでの相談も可能という。

利用者が相談窓口を介さず、直接オンライン診療へアクセスした場合、オンライン診療の医師が「対面診療が望ましい」と判断すればそこで対面診療できる医療機関へ行くことを促される。

また、「近くに医療機関があるかどうか」の基準となる地理的な要因ついては、「今年の10連休などの例もあるので、休日で開いている医療機関がない時なども『地理的要因』に含まれる」という。

相談窓口は、ワンストップセンター以外にも、保健所のように同じような機能を有するものでも対応するようにする方針だ。

オンライン診療で処方する場合、薬は「院外処方」とし、処方箋を利用者へ送ったのちに、利用者が薬局で処方してもらう。

現在、オンライン診療で「院内処方」として、自宅に緊急避妊薬を送る医療機関があるが、今後はガイドライン違反になるという。

医事課の佐々木健課長は「性教育などの問題が絡んでおり、その点は文科省の協力を得る必要が出てくるなど、関係部局の対応先が広くなった。前提条件が多いので着々と進めつつ、できるだけ早くしたい」と話した。

文言を整理し、6月中には緊急避妊薬の処方を含むオンライン診療改正案について、パブリックコメントを募集する見込み。そのほかの修正などの期間を経て、指針の改訂は、7月中の公表を目指す。

産婦人科医「薬剤師が緊急避妊薬を扱うようになることに意義」

今回、オンライン診療で緊急避妊薬を処方できるようになったとしても、多くの条件が課されており、緊急避妊薬が手に入りやすくなったとは言いがたいかもしれない。

だが、検討会を傍聴していた産婦人科医の遠見才希子さんは「院外処方が原則となり、薬剤師の方が緊急避妊薬を扱う機会が増えることで風穴があくのでは」という。

その理由について「緊急避妊薬へのアクセスを改善するには、オンライン診療がゴールではない。将来的には、処方箋を必要とすることなく、薬局で薬剤師に相談し、説明を受けた上で購入できる、世界のスタンダードともいえるBPC(Behind The Pharmacy Counter)という仕組みや習慣が日本に根づくことが重要です。多くの薬剤師の方が緊急避妊薬を扱うようになることは、その足掛かりになると考えられます」と話した。