お友だちに怪我をさせられて、傷ついた息子の心。我が子をどうやって守るのか?

息子は顔面から思いっきり地面に。顔を上げると、おでこからぴゅ~っと鮮血が!
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総勢6人の子どもたちが大集合

愛する我が子がお友だちに怪我をさせてしまったり、怪我をさせられてしまったとき、親としてどう向き合えばいいか? そんなことを考える、ある事件が起こりました。今回は、そんなお話。

 

このあいだ親戚の集まりがあり、20人もの「村橋家」が集合したんです。兄弟やいとこなど子ども連れの親戚もいるので、まあうるさい。大人のための用事なため、1時間もすると、「あきたー」「つまんないー」と案の定、子どもたちが騒ぎ出した。そのため6人いた子どもたちを、僕も含めた親3人で近隣の公園に連れて行き、遊ばせることにした。

子どもたちがキャッキャ遊んでいる姿を眺めていると、ウチの子が親戚のユウくんと楽しそうにじゃれていた。ウチの子は4歳の男の子で、ユウくんは5歳。ウチの子は親戚の子ども達のなかでも特にユウくんが大好きで、集まりがあるといつも「ユウくん、ユウくん」といって背中を追っているほど。

 

我が子のおでこからぴゅ~っと鮮血が!

ヤンチャになってきたふたりは、この年代のお約束、「たたかいごっこ」で遊んでいたのですが、1歳違いとはいえ、見ているとやはりユウくんのほうが力が強い。興奮してきたユウくんはウチの子の背中をドン! と押すと、我が子は顔面から思いっきり地面に。ここまではよくあることですが、息子が顔を上げると、おでこからぴゅ~っと鮮血が!

息子:「いた~い! いたいよ~~!」

僕:「大丈夫かっ!?」

その後、すぐに医者に連れて行ったところ、先生いわく「縫う寸前」という、かなりのケガでした。

 「ごめんなさいね~! ほらユウ! 謝りなさい!」

 驚いたのはユウくんのママも同じで、困惑気味に力ない笑顔をこちらに向けてきました。(でもあんまオオゴトにしないでよ。だって親戚じゃない…)という心の声が聞こえてしまったのは、我が子がケガをしたことに対するとっさの怒りだったのか。

 しかしもちろん、ユウくんも、ユウくんのママも恨んでいないですよ。子ども同士の小競り合いですから、誰が悪いという問題ではなく、責める気なんてさらさらありません。

 ただ、問題は我が子です。医者から戻ってきた息子は…それはもう、どんよりと塞ぎこんでしまったのです。普段、すっ転んでも何しても「でへへ」と笑っているのに、「誰かに傷つけられた」、しかも「ユウくんが大好きなのに、お医者に行くほどの怪我をした」ことがよっぽどショックだったのでしょう。

いつも騒がしい息子が、何ひとつ喋らず、ずっと下を向いている。心の傷は額に負った傷より深く、そのことが親である僕の心にも深くのしかかり、彼の塞ぎこんだ表情を見るだけでこちらも泣けてきました。

 

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 傷ついた心を取り戻すことが大事

 彼は、とても気が弱い。もっと小さいときから公園のお砂場で、そこらのキッズスペースで、おもちゃを持ってるお友だちに、「かーしーてー」が言えない。そんなとき決まって「ぱぱがとってきてよ」とばかりに、僕の手をぐいっと引っ張る。

 気性が荒く言いたいことは全部言わないと気が済まない性分の僕からすれば、「もうちょっと頑張れよ!」という思いもあり、「自分で取ってきなさい!」と、突っぱねていた。そのため、いつかこの子もお友だちとモメ、喧嘩になることもあるだろう。そんな日がきたら「負けて悔しくないのか?」とどやしつけてやろうと思っていたのだが……、現実、大好きだったお兄ちゃんと遊んでいて怪我をし塞ぎこんでいる我が子を目の前にしたら、そんなことは言えなかった。

 「いったん、おうちに帰ろうか」。

そう言うと、息子を電動チャリの後部座席に乗せた。いつもなら「仮面ライダー ジオウ!」「ライダーキック!」とひとりでも騒がしくはしゃぐ息子が、無言のまま。

そして、ぽつりとこう言った。

「もう、おくち、ききたくない」。

ユウくんとはもう喋りたくもない、と。僕は「そうだ、別に喋りたくないなら喋らなくていいんだぞ」と返し、ふと思った。

 そう、戦う必要なんてないんだ。逃げたっていいんだ。やられたらやり返す、ではなく、やり返さなくたって、そんなの負けじゃない。とりあえず逃げて、その傷ついた心を取り戻すことのほうが大事。

立ち向かっていったら、今度は愛する息子が「ケガをさせてしまう側」になってしまうかもしれない。何かの歌詞にあったが、大切な人を“被害者にも加害者にもしたくない”。それが多くの人の願いなのだから。

「ぶった・ぶたれた」ならまだしも、この先我が子はネットやSNSといった底なしの悪意に叩きつけられるかもしれない。そうなった場合、どう我が子を守ってあげられるのか? 僕は「やられたら、やり返してこい!」側の人間だったが、このような場面に実際に出くわすと、その考えは崩れ、100%消えていった。

もう息子に強さを求めすぎるのはやめよう。彼には彼の強度というものがある。それより彼に少しの時間の逃げ道を与え、そこでずっと寄り添っていられる親でありたい。

 こんなふうに珍しく真面目なことを考えていたら、何だか頭がグチャグチャになってきた。

「パパ、何だか疲れちゃったよ」

 そう後部座席の息子に漏らすと、こう返ってきた。

 「ねえぱぱ、あとでぼくのきゃんでーあげるね。きゃんでーたべると、つかれがとれるんだよ」

 そう、この子はやさしい。強くなんかならなくていい。

 「そうだ! 仮面ライダー・ジオウのゲーム、やりに行くか!?」

 「じおうのげーむ、やりたい! いく~!」

 やっと息子に笑顔が戻った。

 

■村橋ゴローの育児連載

親も、子どもも、ひとりの人間。

100人いたら100通りの子育てがあり、正解はありません。

初めての子育てで不安。子どもの教育はどうしよう。

つい眉間にしわを寄せながら、慌ただしく世話してしまう。

そんな声もよく聞こえてきます。

親が安心して子育てできて、子どもの時間を大切にする地域や社会にーー。

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