政治家の“失言“で見る平成史 「神の国」から「復興以上に議員が大事」まで

女性差別、被災地への配慮のない発言など、失言を分析。特に2000年以降、問題発言が大きく報じられた。
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1989年1月8日に始まった「平成」は、2019年4月30日、30年と113日の歴史についに幕を閉じる。

平成は約30年続いたが、国を動かす政治家たちの「失言」は、常に世間の注目を集めてきた。平成以降の政治家たちの主な失言で、時代を振り返る。 

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平成の政治史には失言が多くあった。
Huffpost Japan

(2000年 平成12年)

「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国」

平成以降の政治家の主な失言を分析してみると、特に2000年以降、問題発言が相次ぐようになった。

まず2000年に注目を浴びたのは、当時総理大臣だった森喜朗氏の”神の国発言”だ。発言があったのは、2000年5月15日の神道政治連盟国会議員懇談会。

「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるということを国民のみなさんにしっかり承知していただく」と述べ、当時連立を組んでいた公明党などが強く反発し、謝罪する事態に。

その後、森内閣の支持率は著しく低迷し、内閣は発足から約1年で総辞職した。

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「日本は天皇を中心とする神の国」と自らの発言について釈明記者会見する森喜朗氏(2000年05月26日、首相官邸)
Jiji Press

(2003年 平成15年

「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい」

2003年、当時自民党の衆議院議員の党行政改革推進本部長だった太田誠一氏が6月26日、鹿児島で公開討論会で発言した言葉。

早稲田大学のサークルが起こした強姦事件が話題になった際、「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」と発言した。

討論会後、発言の意図を記者に問われた太田氏は「レイプは重大な犯罪であり、従来以上に厳しく罰するべきだと言おうとしたが、タイミングがなかったことが残念だ」と説明。

これに対し、当時民主党の幹事長だった岡田克也氏は「女性蔑視であるとともに、まじめにコメントするのが嫌になるほど不用意な質の低い発言だ」と批判していた。

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集団暴行事件に関連した発言について自民党の山崎拓幹事長から厳重注意を受けた後、記者に囲まれる自民党の太田誠一氏(2003年06月27日、国会内)
Jiji Press

(2005年 平成17年)

「これで念願のBMWが買える」「早く料亭に行きたい」

2005年9月の衆議院選挙で自民党公認候補として出馬し、最年少で当選を果たしたのが元衆議院議員の杉村太蔵氏。当時、「小泉チルドレン」の1人とされていた。

アベマタイムズによると、当選から約2週間後、「早く料亭に行ってみたい」「これで念願のBMWが買える」「真っ先に調べたのは国会議員の給料ですよ。2500万円ですよ」などと発言し批判が集まったため、謝罪会見を開いた。

杉村氏は当時を、「この謝罪会見は自民党の歴史に名を刻んでいる。新人議員で単独会見を開いたのは私が最初で最後。しかも私は違法行為をしたわけではない。差別的な発言をしたわけでもない。ただただ失言をした」と振り返っている。

日経新聞によると、2009年の衆院選では自民党の公認を得られず出馬を断念した。翌10年には、『立ち上がれ日本』から公認を受けて参院選を戦ったが、落選した。

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街頭演説で手を振る、たちあがれ日本・比例の杉村太蔵候補=東京・千代田区 2010年07月01日(当時)
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(2007年 平成19年)

”女性は子供を産む機械”

当時、厚労相だった柳沢伯夫氏の発言。

2007年1月27日、松江市で開かれた後援会の集会で女性について「機械と言って申し訳ないけど」「15歳から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と述べた。

後日、女性団体や労働組合などからも辞任の要求を求める声が上がったが、内閣は柳沢氏を辞任させることはせず、当時の安倍首相は「多くの女性の心を痛めたことに、私も深くおわびする」と、同31日の参院本会議で謝罪した。

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「女性は産む機械」と発言した問題で、記者の質問に答える柳沢伯夫氏(2007年01月29日・厚労省)

(2009年 平成21年)

「金がねえなら結婚しない方がいい」

2009年8月23日、当時総理大臣だった麻生太郎氏の発言。

学生との対話集会で、「そりゃ金がねえなら結婚しない方がいい。うかつにそんなことはしない方がいい」「稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しいんじゃないか」と語った。

前年の2008年の証券会社の破綻を発端とするリーマン・ショックの影響で、当時の若者たちは”就職氷河期”に突入していた。

当時の河村建夫官房長官は翌24日の定例記者会見で、「若者の就職対策を進めなくてはいけないという思いが、表現として出たのではないか」と麻生首相を擁護したが、野党からの反発が相次いだ。

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閣議後、報道陣の取材に応じる麻生太郎氏=2018年05月18日、首相官邸
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◼️東日本大震災以降は被災地への心ない失言が続出

2011年3月11日、東日本大震災が発生。岩手・宮城・福島の東北3県をはじめ、各地に甚大な被害をもたらした。失言もこの頃からは震災や復興関連のものが多く、被害に遭われた方々に対して、軽はずみは発言が目立つようになった。

(2011年 平成23年)

「やっぱり天罰」「津波を利用して我欲を洗い落とす」

当時東京都知事だった石原慎太郎氏が震災発生から4日後の2011年3月14日に、報道陣に向けて述べた失言。

石原氏は、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と記者団にコメント。

同日の夜に開いた記者会見で石原氏は、「日本人の我欲が政治を左右している。こういうものを打破しないと日本は立ち上がって来ない、ということで申し上げた」などと説明。「天罰だと思う」との部分については、否定しなかった。

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支援者に囲まれ笑顔を見せる石原慎太郎氏(2011年03月24日、港区南青山の選挙事務所)
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「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない」

2011年7月4日、当時復興担当相だった松本龍氏は、宮城・岩手両県を訪問。それぞれの知事と会談した。

初めての被災地訪問となったが、午前に訪れた岩手県庁で当時の達増拓也知事に「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない。そのくらいの気持ちを持って」と、被害に遭われた方々を突き放す発言。

また、「九州の人間だから、東北の何市がどこの県とか分からない」と話したことで、野党などから批判や辞任要求が相次ぎ、翌5日に引責辞任した。

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記者会見で質問に答える松本龍氏(2011年07月04日、東京・赤坂)
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(2017年 平成29年)

「まだ東北でよかった」

  当時復興相を務めていた今村雅弘氏の失言。

東京都内で開かれた自民党二階派のパーティでの挨拶で、東日本大震災の人的被害、社会資本の被害について説明した際、「これはまだ東北で、あっちの方だったから良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大なですね、甚大な被害があったと思う」と述べた。

翌日、自身の発言の責任を取り安倍首相に辞表を提出し大臣を辞任。

安倍首相も自らの任命責任を認め、国民に謝罪した。

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自民党二階派(志帥会)のパーティーで「東日本大震災が東北で良かった」との発言について、報道陣の質問に答える今村雅弘復興相=2017年04月25日、東京都千代田区

(2019年 平成31年)

 「復興以上に議員が大事」

このまま時代が終われば、失言で引責辞任した平成最後の閣僚ということになるのが、前オリンピック・パラリンピック担当相の桜田義孝氏

桜田氏は4月10日、岩手出身の自民党議員のパーティに出席した際、「東京五輪は来年です。世界中の人が日本に来て岩手県にも行くと思います。おもてなしの心を持って復興に協力していただければありがたい。そして、復興以上に大事なのは高橋さんです。よろしくどうぞお願いします」とスピーチした。

朝日新聞デジタルによればパーティは午後6時頃始まったが、この失言を受けて、午後8時40分には首相官邸で安倍首相に辞表を提出したという。

桜田氏の失言は過去にも、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した際、「本当にがっかりしている」とコメントした他、参議院内閣委員会では、宮城県石巻市(いしのまきし)を「いしまきし」と3度間違えるなどし、大臣としての品格の無さを指摘されていた。

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辞表を提出後、取材に応じる桜田義孝五輪担当相(中央)=2019年04月10日夜、首相官邸
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