名勝負だったーー。
フィギュアスケート世界選手権は3月23日、さいたまスーパーアリーナで男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位のネイサン・チェン選手(アメリカ)が圧巻の演技で大会連覇を果たした。SP3位の羽生結弦選手も今シーズン初の300点超えの演技で追い上げたが、逆転はならず銀メダルだった。
羽生とチェン、四つの4回転で一騎打ち
最終グループ滑走前の6分間練習では、羽生選手がジャンプを跳ぶたびに大歓声がわく異様な雰囲気。ブライアン・オーサーコーチと握手を交わし、気合が入った鋭い目つきでリンクへ。
冒頭、試合前に入念に調整していた4回転ループを決めた。続く4回転サルコーでは回転不足と判定されたが、その後の4回転トゥループ+トリプルアクセルのジャンプシークエンス、3回転フリップ+3回転トゥループの連続ジャンプ、トリプルアクセル+シングルオイラー+トリプルサルコーでは加点を積み上げた。
演技を終えると、「どうだ」と言わんばかりのドヤ顔でガッツポーズ。大量に投げ込まれたプーさんのぬいぐるみを前に、笑顔で歓声に応えた。フリー206.10点、合計300.97点で暫定1位に立った。
羽生選手に続いて登場したのが、12.53点のアドバンテージを持っていたチェン選手。興奮がおさまらない会場の雰囲気に呑まれることなく、冒頭から4回転ルッツ、4回転フリップ、4回転トゥループを完璧に決めた。集中した表情でひとつひとつの要素を確実にこなし、フリー最高得点の216.02点をマーク。ショートでもフリーでもトップに立ち、合計323.42点で圧勝した。
宇野選手は冒頭の4回転サルコーで両手をつくと、続く4回転フリップでも体勢を崩し、コンビネーションジャンプにもミスがあった。後半は立て直したが、合計270.32点で4位となり、メダルには届かなかった。
「負けは死も同然」
羽生選手は試合後のインタビューで、「正直悔しい。(ショートとフリー)両方(チェンに)負けてるんで、もっと強くならなきゃいけないと痛感してます」と語った。
「勝ちたいと純粋に思っていた。(冒頭の4回転ループには)不安も抱えていたので、最初のジャンプを降りたのは良かった。でも、負けは負け。負けは死も同然。本当に勝ちたいです」
「良い演技をしたのに両方とも負けているのは、完全な力不足。次のシーズンまで時間もある。怪我をしないように、追随されないくらい、強くなりたい」
フィギュアは新時代へ
終わってみれば、19歳のチェン選手が大会連覇、18歳のヴィンセント・ゾウ選手(アメリカ)が銅メダル。女子でも19歳のエリザベート・トゥルシンバエワ選手(カザフスタン)が史上初の4回転を成功させたことと合わせ、新時代の到来を印象付ける大会となった。
試合後に行われた表彰式では、羽生選手もすっきりとした笑顔を見せて、表彰台へ。
試合後の記者会見では、「ここにいる2人(チェンとゾウ)と戦えたこと、それにより、さらに強くなりたいと思えたことに感謝している。リスペクトして止まない2人に近づけるような、追いつけるようなスケーターになりたい」と年下のライバルたちを讃えた。
主な選手の結果は次の通り。
1位 ネイサン・チェン(アメリカ) 合計323.42
2位 羽生結弦(日本) 合計300.97
3位 ヴィンセント・ゾウ(アメリカ) 合計281.16
4位 宇野昌磨(日本) 合計270.32
14位 田中刑事(日本) 合計238.40