2019年10月に茨城県で開催される国民体育大会(国体)で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技とする『eスポーツ』の都道府県対抗の選手権が初めて行われる。同選手権の予選大会の開催が4月が迫る中、学校教育の現場で、eスポーツの『部活化』の議論が活発になっている。
eスポーツを部活動として認める学校が増えている一方、検討しながらも未だに実現に至っていない学校もあるのが現状だ。
ハフポスト日本版は、eスポーツを部活動として認めた学校と現在も議論が進んでいる学校、それぞれに取材した。
■ 部活化が進んでいるのは、定時制・通信制高校が目立つ
定時制・通信制高校では、eスポーツの部活化が進んでいる。
愛知県立城北つばさ高校は、2017年4月に開校した定時制の学校だ。同校では、2018年9月にeスポーツ部が発足した。
教頭の鳴澤由紀子さんに、eスポーツ部発足の経緯と活動の印象について聞いた。
━━eスポーツ部が発足するまでの経緯を教えてください
我が校は2017年に開校したので、初年度は部活動自体がありませんでした。開校から2年目のタイミングで生徒と教員の数が増え、部活動を立ち上げようということになりました。
eスポーツを個人でやっている生徒がいたのですが、最初から部活動だったわけではありません。
部活となったきっかけは、校長が「eスポーツを部活化したら面白いのでは?」と教員たちに呼びかけたことでした。
その後、教員たちと話し合い、「eスポーツ発足支援プログラム」に参加しました。PC5台を3年間無償レンタルされるこのプログラムによって、練習環境が整ったことは部活化にとっても大きかったと思います。
━━ゲームが教育の場所に入ることへの賛否が、部活動を立ち上げる際の議論になっています。実際にeスポーツ部の活動をどう見ていますか?
eスポーツを通じて、生徒たちは様々なことを学べていると思います。
5人1組になってプレイするゲームもありますから、チームの一員としての責任感やコミュニケーション能力が培われていると感じます。それに、勝負に勝つための思考力や戦略を立てる力なども身につく。
eスポーツを部活動にしたことでのネガティブな面は、現状出ていません。
同じくeスポーツ部の活動が活発なのが、インターネット通信制の学校法人角川ドワンゴ学園 (N高等学校)だ。部員数が現在150名以上を超える同部は、2018年10月に発足。同年に初めて開催されたアジア大会のeスポーツ部門で金メダリストを輩出した。
同校でeスポーツを担当する職員の鎌田智美さんに聞いた。
━━部員数が多いですが、どう部活化を実現したのですか?
同校は「ネット部活」といって、インターネット上で出来る競技を部活にしています。eスポーツ部は元々、ネット部活のサッカー部と格闘ゲーム部が合併して出来ました。
eスポーツは、オンライン上でも部活動として活動する上で相性が非常に良いんだと思います。
━━部活化のメリットは、どのようなところでしょうか?
部員たちはオンライン上で、プロゲーマーなどの特別顧問から指導を受けられたりします。大会には何人かでチームを組んで出場するので、個人でやるよりも部活動の方が、仲間を巻き込んで楽しく出来ますし、その点も良いところだと感じます。
■公立高校では「部活化」が難しい現状も
一方で、全日制の公立高校では部活化が思うように進まない現状もあるようだ。
茨城県立大洗高校では2019年1月、校長の猪瀬宝裕さんがeスポーツ部の設立を発案した。2月にはeスポーツ体験会を開催したが、部活化の実現には至っていない。
同校の教頭は取材に対し、「eスポーツ部の設立は、生徒からの声を受けて教諭を通じて校長が発案しました。ただ、現在はまだ議論の段階です」と話した。
部活動化に至らない理由については、「様々な見方があり、賛否を含めて教諭の中でも意見が分かれています」と語った。
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全日制の公立高校では、eスポーツを部活化した場合に、公費である部費を使って練習環境を整備したり、ゲーム機器を購入してよいのかという議論が教員や保護者の間でもあるようだ。
加えて、学校側が部活化に積極的でも、教育委員会などの方針と異なっていると足並みが揃わずに実現が難しいという見方もある。
eスポーツを部活化することの難しさは、eスポーツをスポーツ競技の一つとして完全には認めきれていない日本の現状を反映しているのかもしれない。