子育て世代の25~44歳でり患のピークが来る子宮頸がん。
年間約3000人の女性が命を落としており、幼い子どもを残して亡くなる人が多く「マザーキラー」の異名が付けられている。
ただ、この子宮頸がんを防ぐためのワクチンの接種は、厚生労働省が「積極的勧奨」を一時的に差し控えている。
この現状について3月8日、医師らでつくる有志団体がワクチン接種の勧奨を求める要望書を、根本匠厚生労働大臣に宛てに提出した。
HPVってなに?
子宮頸がんの主な要因はヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)。HPVは男性の陰茎や口、喉のがんも引き起こす。
HPVはワクチンによって、感染やがんになる手前の異常を9割以上防ぐことができたと報告されている。
だが、日本ではワクチンを打つことによってけいれんや慢性疲労症候群などの事象を引き起こしたと訴える患者らが、国と製薬会社2社を相手取り、損害賠償を求め提訴。
厚生労働省はHPVワクチンを定期接種としているものの、「積極的な推奨はしない」と通知を出した。
現在、ワクチンと副反応の関係性は明確には立証されていないが、こうした背景から、国内では「危険なものではないか」といった不安感が広がり、ワクチンの接種率は著しく低下した。
世界がんの日にあたる2月4日には、WHO本部直轄の研究所である国際がん研究機関(IARC)が「HPVワクチンに関する根拠のないうわさによって、子宮頸がんの予防に必要とされるワクチン接種の拡大をいたずらに遅らせ、妨げている」と声明を発表している。
WHOは、世界すべての少女に対してワクチン接種を勧めている。
検診率も低い日本
HPVの感染やがん化を防ぐには、ワクチンのほか検診での前がん病変の発見なども重要になってくる。
だが、日本では子宮頸がんの検診受診率は、日本医師会によると20代で22.2%。30~40代も40%前後だ。
一方、アメリカでは21~65歳の女性で9割近くが検診を受けている。
文京区でクリニックを開業している小児科医の細部千晴さんは要望書の提出に先駆けた記者会見で「20代もそうだが、30代以上になると特に育児や家事、そして仕事に追われて自分の健康を二の次にしてしまう女性が多い」といい「検診に行く時間がなく、気が付いたときに手遅れになってしまうこともある。国際女性デーを機に、自分の身体のことも考えてもらいたい」と話した。