昭和が終わり、新時代の幕が開けた1989年。その翌年、平成最初の国勢調査が行われた。15歳以上の国民における、職業の男女数も調査された。
まだ“専業主婦”が当たり前だったころ。共働き家庭は823万世帯に上っていたが、依然として専業主婦が夫や家族を支える家庭が共働きを74万世帯上回っていた。
ただ、働いて経済的に自立する女性も昭和時代より増えてきた時代でもあった。
1990年、 職業の総数に占める女性割合1位は家政婦(ハウスキーパー)、家事手伝い、歯科衛生士、助産婦(助産師)、保健婦(保健師)で、いずれも100%だった。
一方、一人も女性がいない職業は、船大工や炭鉱で働く採炭員、電気・ディーゼル・蒸気機関の機関士など8職種。
電車の運転士も、女性はたった4人だった。パイロットと、操縦を補佐をするフライトエンジニアの女性は合わせて14人。
電車の運転士は、男性が4万269人、パイロットとフライトエンジニアは5852人。それぞれ、女性の比率は1%にも遠く及ばなかった。
それから25年。平成最後の国勢調査は、2015年に行われた。
女性が従事する割合が伸び悩んではいるものの、女性割合が低い職業10位までで、女性が1人もいなかったのは鉄道線路工事従事者のみ。
1990年には女性が4人だった鉄道運転従事者も、2015年には1120人に増えた。その割合も0.01%から3.04%になっている。ただ、パイロットはいまだ10人で、0.17%となっている。
しかし、依然として家事や育児、介護などに割く家事関連労働の時間は、女性が圧倒的に多い。
1991年にあった総務省の調査では、1日の家事関連時間は女性が3時間52分で、男性は24分。アニメの1本分くらいしかない。
2016年には、女性が3時間28分に対し、男性は44分。たった20分しか伸びなかった。
男性社会の職業、女性はどのくらい増えたのか
いまだに男性社会だと揶揄されるマスコミ業界。
2015年時点で記者・編集者における女性の割合は36.4%。1990年には22.5%だったので、徐々に増えているようだ。
新聞社の中でも写真部の女性は特に少ない。
カメラ業界にいる女性は2015年時点でも29.467%で、記者よりもカメラを扱う仕事のほうが、女性の割合が少ないことが分かる。
男性が多いイメージの建設現場。大工の女性は1.003%(2015年)で、1990年より0.1%だけ増えた。これは、女性の志望者が少ないことも要因とみられる。
大学入学試験での不正な得点操作で減点されていたことでも話題になった医師の世界ではどうか。
女性医師の割合は1990年に11.85%だったが、2015年には21.41%と倍近く伸びている。
しかし、東京医科大学などの不正得点調整に見られるように、依然として女性が少ない環境で、医学部医学科の入学男女比を見ても、男女が1対1以上になる大学は、2018年度入試で76校中18校しかない。
同じくらいの割合で見ると、2015年時点のバーテンダーの女性割合は18.48%。こちらも1990年から2倍弱増えている。
女性の警察官・海上保安官は、9.426%(2015年)で意外に少ない。ただ、こちらは15年前よりも約3倍に増加していた。
司法における男女比のいびつさも、25年で少し変化があった。
1990年、裁判官・検察官・弁護士といった法廷に立つ職業は、女性が1040人で全体の5.9%。2015年には、4920人に増え、16.67%に。ただ2割にも届いておらず、司法に女性の声が反映されにくい要因になっている可能性がある。
意外だったのは調理人。コックや板前は男性のイメージが根強いが、女性の比率は2015年で59.424%と、男性よりも占める割合が高かった。
女性の割合が高い職業トップ10はどう変化したか
女性の割合が圧倒的に少なかったり、なかなか比率の伸びない職業がある一方で、いまだに女性だけの職業というのもある。
1990年には男性が0人だった保健師も、2015年には820人増えて2.07%に。しかし、いまだ男性には受験資格がない助産師は、2015年も女性が100%で1位となった。
このほか、保育士の人数が約25万人から約52万人と倍以上に増加。しかし男女比率はほぼ変わらず、いずれも90%台後半だった。
2015年現在、国内で働く女性の人数を見ると、事務として働く女性が681万2730人で圧倒的に多い。
これは1990年も同じ構図で、715万2947人が事務に従事していた。
また、雇用される女性に占めるパートタイマーなどの短時間雇用者の割合は年々増加。2015年には、46.7%が短時間雇用だった。
労働力調査の2018年の速報値では、非正規雇用における女性の割合は68.4%と圧倒的に多かった。
平成の時代を通して、雇用される女性が増えてきたのは確かだ。
女性が性別によって就きたい職業をあきらめず、就職する土壌が少しずつできてきたのかもしれない。
しかし依然として女性が就業する仕事の構図は、医師や弁護士などの専門職や技術職では割合が低い。
そして、家事や育児をこなすために短時間や非正規の仕事を選ばざるを得ない女性も多い。
女性だけでなく、家事を顧みない代わりに長時間労働を強いられる男性社会の認識も変えていく必要がある。
幼いころの夢や、就きたいと思った職業に「女の子だから、男の子だから向かない」「女性が少なくて働きにくいから」「家事を担わないといけないから」などといった理由を押し付けられ、夢を変えたり、自分を縛ったりしない未来は、次の時代の一歩にかかっている。