「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」を書籍にするという無謀な話。原稿をまとめたり打合せを進めたりしつつも、これはどこかで行き詰まったりするんじゃないかと怪しんでいた。現実のこととはなかなか思えない。
それが今日、三輪舎の中岡祐介が印刷会社の方を連れてきて、装丁をしてもらうBeeStaffCompanyの上田豪さんと関口美樹さんとの打合せにぼくも立ち会い、表紙の紙をどれにしたらどうだとか校正をどうするとかの話をぼーっと横で聞いていたら、なんだかこれはホントに出るらしいぞとやっと思えてきた。
カバーの印刷見本なんかが出てきたりすると、これは決してPCのモニター上の話ではなく、書籍という手にとってさわれる「物質」ができていくのだと真実味をにわかに帯びる。
そうかー、出ちゃうんだー、おれが書いた育児の社会論の本。・・・えー?!ホントなの?ホントに?この中岡祐介という青年が今年起ち上げたばかりの出版社から?出るの?いいの?大丈夫なの?おれの前の本は『テレビは生き残れるのか』というメディアの将来を考える書籍だったんだけど、まっっったくつながってないよー。
これはつまり、ぼくがまだ戸惑っているのだ。だってほんの一年前まで、育児と社会の関係を論じた本を出すなんて考えてもみなかったことだから。一年前のぼくに、あんたはねえ、一年後に赤ちゃんが増えるはずがない、という本を書くんだよ、と言っても、は?何言ってんすか?そんなわけないっしょ!とケンカ腰で言い返されるだろう。
だってね、「赤ちゃんにきびしい国で・・・」の記事を書いて以来、いろんなところに取材に行ったり、さらにこのテーマの意見をブログに書いたりしたのは、ぼくの意志というより、みなさんの意志だ。ぼくが書いたというより、みなさんに書かされたという感じ。「集合知」という言い方があるけど、「集合意志」みたいなものがソーシャルメディアとハフィントンポストを伝って集まってきて、ぼくを動かしてきたのだ。
シャーマンという存在がある。あるいは、依り代という役割がある。そのコミュニティのみんなの心を受け止めて神との間を仲介する。そういうポジションが人間集団には昔からあった。そんな役割をぼくがみなさんからもらったのかもしれない。
表現というのは、表現者個人の中のみにある言葉や音階を表出したもの、だけではないとぼくは思う。その人と何らか接する人々みんなの意志を言葉や音階にしたのが表現なんじゃないか。だから、表現をする人はシャーマンに近い。コンサートはどこか宗教的な行為だ。それは、そこに集まる人々の意思の受け皿をミュージシャンが引き受けるからだ。
そう考えると、ぼくは戸惑ったりせず、もうジタバタしないでみなさんの気持ちを受け止める役割に静かに身を置くべきなのだろう。そうです、あなたが言いたかったことが、つまりあなたが書いたも同然の本が、ぼくの名前で世に出ます。
みなさんから送ってもらった赤ちゃんの写真も、こんな感じでレイアウトされていますよ。メッセージは一部ちょっとはしょったりしちゃってますが、掲載してます。
打合せでスケジュールもいよいよ固まってきた。発売日は12月15日と書け、と中岡くんが言うので、そうお伝えしておきます。書籍の発売日は、書店に届く日がまちまちだったりするので、言い方が難しいらしいよ。
すでに予約がはじまっていて、三輪舎のサイトで申し込めるそうです。いまの時点でけっこう予約してもらってるみたい。書展さんからの注文も来はじめているそうで。ありがとうございます。→三輪社WEB SHOP
そうそう、発売を前に12月13日に記念イベントをやろうとなってます。詳細は、Facebookページでお伝えするとのことなので、ここから↓見に行ってくださいね。
というわけで、12月15日を楽しみに!
コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
sakaiosamu62@gmail.com