法律で求められている障害者の雇用率を多くの中央省庁が達成していなかった問題で、厚生労働省の労働政策審議会(労政審)分科会は11月29日、外務省については特例的に基準を引き下げる内容の政令改正をする方針を固めた。
そもそも、民間企業や中央官庁、地方自治体などの事業者は、障害者を一定数以上雇用する義務がある。これを、障害者雇用率制度という。
雇用率は障害者雇用促進法と政令で決められており、「障害者が能力を最大限発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことが制度の目的だ。
制度では、従業員数が45.5人以上の民間企業は、従業員の2.2%以上の割合で障害者を雇用することが求められている。仮にこれを下回った場合、不足人数1人あたり原則月5万円の納付金を国に納めなければならないという、「ペナルティー」がある。
一方で国や地方公共団体などは、「一般の民間企業を下回らない率を持って定める」として、中央省庁や地方自治体は2.5%以上雇用しなければいけないと定める。
しかし、2018年夏以降、中央省庁や全国の裁判所などで、健常者が恣意的に障害者としてカウントされるなど、障害者雇用の水増しが相次いで発覚。その多くで実際の雇用率は、基準を下回っていることが明らかになった。
基準を達成できないとペナルティーがある民間企業に対し、国や地方公共団体などにはペナルティーがない。こうした状況に批判が噴出。菅義偉官房長官は2018年8月28日の会見で「障害のある方の雇用や活躍の場の拡大を民間に率先して進めていく立場として、あってはならないことと重く受け止めている」と謝罪した。
こうした問題を受けて、国は再発防止のために2019年6月、障害者雇用推進法を改正。現在、厚労省の労政審分科会では施行令などについて議論している。
外務省の障害者雇用をめぐる問題に戻る。
外務省は、今年6月時点でも障害者雇用率が1.03%にとどまり、中央省庁で最低レベル。11月29日に開かれた分科会では、外務省作成の資料で、現状について以下のように説明。
「雇用の質を確保しながら採用を進め、活躍領域拡大の可能性を追求してきたが、在外勤務の特殊性から、在外公館に勤務する外務公務員も含め一律に雇用義務を果たすことは困難であることが明らかになった」
その上で、在外公館勤務の職員を、障害者雇用の基準の例外とする必要性を指摘した。
資料によると、外務省の職員数は6476人。その約半数の3196人が海外の日本大使館などの在外公館に勤務している。
厚労省の担当者は、ハフポストの取材に対し、在外公館勤務の外務省職員について「海外における邦人保護の最後の砦でもあり、業務の特殊性がある」と説明。警察官や自衛官などと同様、障害者雇用率制度の例外である「除外職員」にあたるとした。
民間企業にも海外勤務の人もいるが、「例外」は認められていない。この点について厚労省は「民間企業にも海外勤務の人がいるのは事実だが、邦人保護などの業務はない。また、日本の法律が適用されない現地法人を作っている企業も多い」とした。
この特例は、5年の期限付きになっている。この点について厚労省は「5年後以降も在外公館の外務省職員の業務の特殊性は変わらないが、ノーマライゼーションの観点から、外務省も基準を満たすためのロードマップを作ったため5年限定としている」と説明した。
厚労省は12月中旬に開催される予定の労政審分科会で、政令改正案を諮問する予定。改正されると、外務省が採用すべき障害者数は、現在の約160人から80人程度に減ることになる。