私は以前のブログで書いたとおり、自分が結婚する未来、子どもを持つ未来にまったく疑いを持っていませんでした。
ところが43年間、日々を積み重ねていくうち、今の私はたまたま「未婚で子なし」でいます。
一方『孤独も板につきまして 気ままで上々、「ソロ」な日々』の著者、あたそさんはまさに今結婚適齢期という年齢にありながら(年齢非公開)、「結婚している自分が想像できない」と言います。そしてこの先も「結婚することはないかもしれない」とも…。
なぜ“結婚している自分”の人生プランを思い描かないのか、そこに隠された深い深い事情と理由をあたそさんに聞きました。
結婚や出産は私にとって大事なトピックではない
――著書の中で「結婚している自分は想像つかない」というようなことは書かれていますが、「結婚する気がない」とも断言はしてらっしゃらないですよね。
そうですね。でも高校生くらいまでは、「結婚したくない」と思っていました。私の家は、いつも両親が喧嘩しているような環境でしたし、離婚家庭で育った人は結婚しても親と同じように離婚するケースが多いなんて話を聞いたことがあったので。
それに加えて性格的に、そもそも結婚だけに限らず、たとえば将来の夢のような、先のことをあまり考えないで、これまで生きてきてしまったという部分も大きいかもしれません。
目指すべき目標や、目の前の仕事は頑張るけれど、結婚や出産は私にとって大事なトピックではありません。だから、そのための努力はこれといってしてこなかった。現在、お付き合いしている恋人もいません。
結婚は絶対したいとも思わないし、子どもも絶対欲しいとも思わない。
かといって、絶対に結婚したくないとも思わないし、絶対に子どもが欲しくないとも思わない、そんな感じです。
もしお付き合いしている人がいて、「この人だったら、一緒にいてもいいな」と思う人ができたとして、「結婚しよう!」となったらするのかもしれませんが、私、多分、うまくいかなかったら、あっさり離婚してしまうと思うんですよ。そもそも結婚にこだわりがないから。
結婚していなくても、恋人がいなくても、1人で旅行も映画も食事も、フェス行ったり、なんでもできてしまうし、十分、人生楽しいですから。
――ではまわりが結婚していっても焦りとかはあまり感じない?
30歳までには結婚とか言っているまわりの人たちもいたし、自分で想像していた今の年齢くらいになれば「私も焦ったりするのかな」と思っていたんです。
でも、焦り、ないですね。
音楽系とか専門的な仕事をしている人が友だちに多いせいか、あまり結婚や出産の話題が出ないのも影響しているかもしれないです。
――確かに、まわりからのプレッシャーや、話題に接する機会が少ないというのは、なかなか結婚や出産に対するリアリティにつながっていかないかもしれませんね。
あくまで自己分析なんですけど、おそらく私の友だちは、結婚や出産している自分を想像できず、なんでもひとりで行動してしまう私に、その手の話題や恋愛相談はしないというか、そういう相談をする相手として認識されていないと思うんですよね。この人に恋愛の話をしても…と思われているというか。
そして、私は母との関係があまりよくないので、母からのプレッシャーもない。となると焦りを感じるきっかけも、ないという感じですかね。
唯一、母方の祖父母から「孫の顔が見たい」とメールが来たり、直接会った際に言われたりすることはありますが、笑顔で流しています。
「あたたかい家庭」は想像上の産物
――今の日本の社会のなかにいると、幼い頃から学校に行って、卒業して、社会人になって何年かしたら、女性の場合、結婚・出産という人生が自然なんだろうなと、刷り込まれていくと、私は思っています。それでも、結婚している自分が想像つかないと、あたそさんに言わしめるものって、何なのでしょうか?
先ほどお話したとおり、私は両親が離婚しています。だから、いわゆる「あたたかい家庭」をドラマや映画みたいな物語、もしくは友だちから話を聞くことで、想像するしかありませんでした。想像上の産物みたいなものなんです、「あたたかい家庭」は。だから、リアルじゃない。自分が人と仲良く暮らすという想像ができないというのが、まず大きな影響のひとつです。
また、今まで築き上げてきた人間関係の中で、すごく信頼できる人という存在を作ることができていないんですよ。相手が男女関係なく、全面的に受け入れられたという経験がないんです。
この人は私のことを嫌いにならないだろうなと思っているような人であっても、心のどこかで「どうせ私のことなんて」って疑ってしまうというか…。いい人だなというのも、すごくわかっているのに、自分から壁を作ってしまっているなと感じる瞬間があります。
そういう人との関係の作り方、コミュニケーションの取り方を考えると、これから先、結婚することなく1人なのかもしれないなと想うんですよね。
――ほかには、何かこれが原因かもしれないと思うようなことはありますか?
最近よく思うのが、私、いわゆる思春期に男性からモテなかったんですよ。
学生の頃とかって、恋愛漫画を読んで「私にもこんなことが起きるのかも…」なんて思うわけじゃないですか。でも一向に私には、ロマンティックなことは起きないわけです。でも、そういうことに憧れていた時期が、結婚を想像できない私にもあって、「漫画みたいなことなかったなー」というのが今思うとコンプレックスだったなと。
男の人に選ばれないって、かなりのコンプレックスになったなと思います。最近は、あまり気にならなくなったけれど。
――でもその一方で、著書の中では「男性に恋愛感情を抱かれるのが苦手」ともかいてありました。
そうなんですよ。矛盾しちゃっているんですよ。
恋愛をしたくないわけじゃない。でもそういう感情をもたれるのが苦手なんですよね。
そこが最大の、私の中の大きなハードルですね。って、こうやって話してみると、ハードルだらけなんですけど。
いわゆる世間が求める女性のイメージで扱われるのがあまり好きじゃないというのもあって、ちょっとこんがらがっているんですよね。
化粧もおしゃれも好きだけれど、世間が想像する「女らしい」を強制的に求められるのがいや。もちろん、恋人がいないのは、淋しくないわけはないじゃないですか。何でも1人でできちゃうし、1人は好きだけど。淋しい。だから誰かにいて欲しいと思うけど、それが恋人じゃなくても、友だちでもよかったりしちゃうんですよね。だから、結婚はやっぱり、遠いところにある感じですね。
結婚せず、子どもを産まないとしたら、仕事で成功しなくちゃいけない
――こうして話を聞いてみると、あたそさんも私のように未婚の40代を迎えるのかなと思う訳ですが、結婚せず、1人で生きていくとなると、自分の食い扶持を一生稼ぐ、老後の住まいとか、将来設計考えておかないと、と思いませんか?
考えていますよ。
ここまでお話ししてきたような自分の性格や、これまでの人生を振り返ると、多分、このまま1人の可能性の方が高いと思っているので。
ただ、もし榊原さんがこのまま未婚でいたとしてですよ。定年退職が70歳になっていたとして、まだあと30年くらいあるじゃないですか? いまこれだけ未婚率があがっていて、男女と共に独身の人が増えているから、30年後は未婚の人のためのサービスがいろいろできている可能性がありますよね。
私は榊原さんより年齢は下ですが、このままいくと今よりもっと未婚率はあがるだろうし、ひとりで年を重ねていくであろう人たちのためのビジネスがひとつの大きな需要となって充実していると思うんです。
――すごく前向き!たしかに、それは予想できますね。
すっごく他力本願ですけど(笑)。
ただ、私、仕事で出世したいとは思っていて。
もし、結婚せず、子どもを産まないとしたら、仕事で成功しなくちゃいけないって、榊原さんは考えたりしませんか?
私には、そういう思いがなんとなくあって、人生の成果を出しておきたいというのがあります。結婚せず、子どもも産まず、それでも自分の生まれた意味のある仕事をしたいと思った時に、人の役に立って、責任のある仕事をしたいなと思うようになってきました。人生を振り返った時に、何もなかったなと思うのは悲しいなって。
結婚して子どもがいる人だったら、子どもがいい子に育って、孫もいて、いい人生だったなと思えるのかもしれません、もちろんすべてが順風満帆にいくとは限らないですけど。
でも私は、それがないかもしれない。だから「私はこんなちゃんと仕事して、こんな影響を与えられたなー」って、20年後、30年後思いたいなという気持ちが強くあります。もちろん、それに見合ったお金がもらえたら、それに越したことはないですけど(笑)
――本の中に書いてありましたが、旅行がお好きで、1人でいろんな国に出かけて行っているじゃないですか?だから、あたそさん自身はそう思っていても、外国でいきなり出会って大恋愛みたいなこともあるかもしれないですよ。
それ、みんなに言われるんですよ。「いやー、だといいけどね」と答えてはいますが…。旅行が好きで、1人でいろんなところに行っているので、恋愛系の話題になった時に私が言われるランキング第1位が、それです(笑)。
結婚は私にとって必要でもないし、不必要でもない。子どももいても楽しめそうだし、いなくても楽しめそう。自分の性格的にたとえ人生に結婚や出産というライフイベントがなかったとしても、自分で楽しいことをみつけられるかなと思っています。
友達作るのは得意なので、コンビニとスーパーしか行くところがなくて、会話の相手は店員さんだけというような老人になることは、自分にはないと思っていて。たとえ1人でも孤独なおばあちゃんにはならないという自信があるから。
結婚にこだわることなく、これからもどこにでも1人で行き、何でも1人でして楽しみながら過ごしていくつもりです。