政府は根拠の無い「一斉休校」を撤回してください

政府による新型コロナウイルス対策「一斉休校」の要請。エビデンスがないうえ、専門家の知見も全く無視した意思決定に戦慄を覚える。
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イメージ写真
MILATAS via Getty Images

驚くべきニュースが飛び込んできました。 

僕は政府のコロナ対策は、色々と失敗はあれど、概ね頑張ってくれているから応援しよう、と思っていました。

しかしこのニュースを見て、あまりにそのダメさに大声で叫びそうになりました。 

 

エビデンスが無い

まず何がダメか。

既に中国では約4万5000人のコロナ罹患者のデータが出ています。

ここで見ても分かる通り、0から9歳までの死亡者数は0人です。

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駒崎弘樹公式ブログより

 

主にお亡くなりになっているのは、60歳以上の高齢者ということが分かります。

高齢者の感染対策だったら、高齢者が行くところを「先に」対応するのが筋でしょう。

何でいきなり小学校・中学校・高校なんだよ、と。

「子どもが媒介するリスクへの対応策」と言うなら、大人同士が直接媒介する満員電車対策と職場の一斉リモートワークが先でしょう。

全く整合性が取れていません。

 

専門家の意見も聞いていない

NHKの報道によると、政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の委員で、感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。判断の理由を国民に説明すべきだ」と仰っています。

また、感染症対策としての妥当性について、「一定の効果はあるかもしれないが、2009年に当時、新型と呼ばれたインフルエンザの経験をふまえると、各地域の状況に応じてそれぞれ対策をとることが有効だ。ウイルスに感染した患者がいない地域もあるのに、全国一律に小中高校の休校を要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」とも仰っています。

専門家の知見を全く無視した意思決定であることに戦慄を覚えます。 

 

医療キャパが無くなる

新型コロナ対策のためには、病院やクリニックでの受け入れ・診療キャパシティを増やさねばならない時です。

しかし、共働き医療者が働けなくなるので、医療キャパシティは減ることになります。

現に、一足早く休校を決めた北海道では、病院の受入制限が既に始まっています。

この北海道の状況が、全国的に発生することが予想されます。医療キャパシティを上げなければならない時に、逆に大幅に下げてしまうことは、非合理極まりないと言わざるを得ません。

同様に、福祉・保育等、あらゆる領域に共働き家庭はおり、労働者減の影響は甚大です。

 

学童保育では足りない

一方、厚労省は保育所や学童保育での預かりは継続することを発表しています。

しかし、人員を準備していないため、学童保育を来週月曜日から終日化できる学校は多く無いことが予想されます。

また、学童保育には定員があり、既に学童に通っているフルタイム就労家庭等の子どもは受け入れることができますが、パート勤務・自営業家庭の子どもは学童保育から排除されることになります。

加えて、学童保育は給食を出しません。よって、給食が唯一の栄養源であるような養育不全家庭の子ども達は、非常に厳しい状況となります。

更に、学童保育は障害児の受け入れを非常に制限しています。障害児をお持ちの家庭は就労不能状態に陥ります。

 

ひとり親等非正規雇用者の収入が激減

ひとり親の半数近くがパート・アルバイトであり、出勤できなくなったら収入の大幅減となり、54%が相対的貧困ライン以下の生活をしているにも関わらず、更に困窮します。

学童保育から排除される障害児家庭も働けなくなるので、困窮度、子育ての困難度は飛躍的に増します。 

 

してほしいこと

最後に政府に対し、して頂きたいことをまとめます。

●約3週間の一斉休校を撤回してください

・撤回が難しければ、休校期間を短縮(1週間ほどに)してください。
・また、その間に以下の手段を取ってください。

●学童保育のキャパシティ増強と給食提供

・学校教諭によるヘルプ等活用し、パート等、普段学童保育を使っていない短時間勤務層も学童保育を緊急利用できるように。

・学童には給食を出す機能はありませんが、学校調理室を利用して給食を提供してください。

●放課後等デイサービスを休校させない&特別支援学校での預かり

・障害児家庭は学童保育に預けることができないので、放課後等デイが最後の安全基地です。ここを休校させられてしまったら、打つ手がなくなります。

・一方、放課後等デイも定員がありますが、緊急的に定員以上預かれるように通知を出してください。

・どうしても預け先が無い家庭は、特別支援学校での一時預かりを行ってください。

●放課後こども教室の終日開校を行ってください

・学童保育の学校版が「放課後こども教室(放課後こどもプラン)」です。夏休みには学校を終日開放し、指導員の指導のもと、様々なプログラムが緩やかに提供されています。

・この放課後こども教室を学校内で行ってください。

●仕事に行けなくなった非正規雇用の親達の所得を補償してください

・パートやアルバイトの家庭は時給制なので、働いていない分は給与が支払われません。

・給与が支払われなかった分、給与を国が財政出動し、補償してください。

●図書館を子ども向けに開放してください

・学校に行けなくなった子ども達は、公園や繁華街やコンビニ、スーパーのイートイン等、街に出ていくことが容易に想定できますが、そこでの事故や犯罪に巻き込まれたりする可能性が増大します。

・感染した場合重篤化しやすい高齢者や基礎疾患の方々には入館規制をし、子ども達には居場所として図書館を開放してください。図書館は安全かつ子ども達の教育にも良い効果をもたらします。

(2020年2月28日の駒崎弘樹公式ブログ掲載記事「政府は根拠の無い「一斉休校」を撤回してくださいより転載)