ブランド・パーパスの専門家が予測する、2020年のトレンド

パーパスとは、ビジネスが世界に果たせるユニークでポジティブな貢献を意味する。企業責任ではない。チャンスのことだ。
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サステナブル・ブランドジャパン

イケアやP&G、ヴァージン・メディア、ジョン・ルイスなどのブランド・パーパスやサステナビリティ戦略のコンサルティングを手掛ける「Given London」のベン・ヘイマン執行役員が2020年のパーパスのトレンドを予想する。

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1.  言葉を少し減らし、行動を少し増やす

2020年、ブランド・パーパスはこれまで以上に成熟し、統合的な規律となる。だからこそ、ブランドがパーパスをどう伝えるかというコミュニケーションでの新たな潮流が生まれると考えている。

そのカギは実行することだ。変化を生むために、たゆまぬアプローチを行うことだ。成功するブランドは、マーケティングの流行に飛び込むよりも、ブランド・パーパスをビジネスの変化、イノベーション、新しくより良い方法で製品とサービスを届ける「機会」と捉えているだろう。これは、本当にやるべきことに取り組むことであり、犠牲も生むものだ。2020年、成果を収めるブランドにとって、パーパスは単なるマーケティング・プラットフォームではなく変化のための包括的で体系的な手法なのだ。

自信を持って、自らが進むべき方向を確立するブランドには誠実さと創造性を持ってパ―パースを伝えるより多くの機会が訪れるだろう。もしくは、そうしたブランドはまったく語らないという選択をするかもしれない。消費者や世界に委ねて、より良いビジネスを行うことで恩恵を受けるのだ。

2.  政治への虚無感を満たし、自ら立ち上がる

2020年、ブランドは自らのパーパスに取り組む上で、さらに政治的になっていくと見ている。とは言え、ブレグジットの騒ぎが収まるまで待たなければ、今のところはリスクが高すぎるし、いさかいが生まれるかもしれない。

消費者は、社会問題に対するブランド自らの考えがあり、そのためにキャンペーンを行う勇気のあるブランドを支持する。活動家精神やメッセージの裏に意図を持つブランドは大きな影響力を持つ。ボディショップやラッシュのようなブランドが際立っている理由の一つはそれだ。

しかし、そうした議論をもたらすブランドは、自らの顧客が誰なのかを把握することが重要だ。顧客を知ることは、政治的要因に伴い発生するリスクを管理し、コントロールする手助けになる。政治的視点の正しさは人によって異なる。しかし、政治や政治家への信頼が下がり続ける時、ブランドが確固たる視点を持つことで、政治によって生まれる虚無感を満たし、世の中の人にとってさらに意味のあるつながりをつくる機会にもなる。

3.  企業文化が変わる:社内活動家が求められる

2020年、ブランド・パーパスは社員の関心を引き、インスピレーションを与える手段として、企業にメリットをもたらすだろう。人々はますます、違いを生み出すことに投資するブランドのために働きたい、変化の一部になりたいと考えるようになる。2016年のLinkedInの調査は、英国の若者の採用において、企業のパーパスが就職先を選ぶ決め手になると半分以上の人が答えている。2020年、グレタ世代(ジェネレーションG)に目を向ける若者を意識したビジネスが増え、大企業はさらなる取り組みを行うことが求められる。

もちろん、事業を行う上で、パーパスを声高に叫ぶことで才能のある人たちを呼び込むコストも増える。例えば、ナイキは大きな目標を達成する女性を応援する、パーパスを反映した「ドリーム・クレイジアー」というメッセージを流しながらも、妊娠した女性アスリートの契約料を削減していた。批判を浴びた同社はこれを撤回している。

4.  もっともっと循環型に

2019年にビジネスを循環型にするという考えが主流になり、業種を横断した新しい考えが形成された。循環経済はビジネス用語になり、消費動向の一種になってきている。どう資源を管理し、どう製品を作り、どう使い、そしてその後どう資源の価値を確保するかに関して意識的な決定を行うことは非常に重要だ。主要なブランドはそのことに気づき始めていて、「循環」という考えをビジネスモデルやパーパス・アプローチに融合させようと取り組んでいる。高級ファッションから新しい企業まで、循環という考え方はイノベーションと破壊を後押しし、その速度は加速している。

循環性という考え方の興味深い点は、多くのサステナビリティの取り組みよりもさらにビジネスに焦点を当てているように感じられることだ。循環型経済は、ビジネス・リーダーが現状に疑問を抱き、後押しし、染みついたビジネス・プロセスを再定義し、自社の事業を理解する方向に転換するビジネス・リーダーを後押しする。循環性はビジネスや消費者の新たな価値の源をつくるものだ。

もちろん、循環性を万能薬と捉えるのは危険だ。消耗しないようにしなければならないし、より持続可能な消費のあり方をただ探すだけではいけない。2020年、循環経済に対するより深い理解に加え、循環性の取り組みはより洗練されたものになることが求められる。ブランドはそうした新たな取り組みを通常の業務として行い、パーパスに基づいた取り組みをより深い意味で実行することになるだろう。どのブランドがいち早く動きを見せるだろうか――。

5.  共に目標を達成し、前進できるパートナーと組む

過去5年間、革新的なNGOと社会的企業、製造業者によるパートナーシップによって突破口となるイノベーションが実現してきた。2020年、さらなるパートナーシップが生まれると見ている。大企業は新たな課題を解決する手助けを行う支援者を探し、中小企業は新たなグローバルパートナーと協働して迅速に目的を達成していく。企業間のパートナーシップやコラボレーションは多岐にわたる課題を解決するのに非常に重要になるだろう。

パートナーシップの誕生には、持続可能なものを生み出す方法からより包括的な統合まで、さまざまな新しい形がある。海洋プラスチック危機を解決する手助けとなるアイディアに投資をする「スカイ・オーシャン・ベンチャー・ファンド」など、面白い新たなビジネス・インキュベーションがある。スカイはロビー活動や科学的調査、問題意識を高め、イノベーションを起こすために、WWFやナショナルジオグラフィックなどの大きな組織と連携している。

パートナーシップの取り組みには固有の課題がある。ブランドにフィットするかの判断、同意やサポートを得ること。そして最も重要なのは、小規模な専門家集団が速く成長するように、支援することだ。しかし来年1年間は、持続可能なソリューションを見つける競争がさまざまな分野で激化し、さらに面白いパートナーシップが生まれ、さらなる投資とイノベーションが起きるだろう。

パーパス2.0は、流行ではなく、2020年への期待

過去5年間、マーケティング界において、「パーパス」は歓迎され、同じぐらい冷笑されてきた。広く論争されてきたが、パーパスの最大の問題は言葉にあった。マーケターは、ブランド戦略におけるパーパスの概念は以前からあったものであり、ビジネスやブランドが消費者にもたらすことのできる最大のメリットを示すものだと正しく指摘してきた。多くの人にとって、ブランド・パーパスは社会にとって良いものとは限らなかった。単に、消費者の生活に対してブランドが果たせる最大の役割を理解することだった。

われわれのような企業がパーパスについて話す時、パーパスとは、ビジネスが世界に果たせるユニークでポジティブな貢献を意味する。企業責任ではない。チャンスのことだ。この違いは大きい。すべての企業は責任感があるべきだ。人を公平に扱い、税金を納め、サプライチェーンを管理し、倫理的な振る舞いを行うべきだ。

企業には、新しく、より良い方法で世界に貢献するチャンスがあり、自社の資源・規模を社会的に良いことに使うことができるのだ。そうすることで、ブランド価値は高まる。パーパスは「悪しきを減らし、良きを増やすこと」だ。そして、これは企業を変革し、文化をつくり、ブランドに新たな価値を組み込むものだ。

これが、われわれの考えるパーパスだ。エシカルで、サステナブルなブランドを求める声はこれまで以上に主流となり、パーパスは現代を生きるすべてのブランド、企業にとって不可欠な要素と考えている。

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