すやすや眠っている赤ちゃんは、どんな夢をみているのだろう?
もしかしたら、こんなふうに「波動拳」をキメているかもしれない。この写真のように……。
赤ちゃんが寝ている隙に、身近なグッズでデコレーションして撮影した「寝相アート」が今、ネットで大人気となっている。ブームの火付け役となったのは、東京都在住の漫画家、小出真朱(こいで・まみ)さん。当時生後10カ月の愛娘の「寝相アート」写真をツイッターユーザーの夫(@wondernunothc)が公開したところ、「かわいい」「面白い」と大反響を呼んだ。以来、小出さんの寝相アートはネットでファンが増え、2012年7月に夫との共著で出版した「ねぞうアートの本 寝てる間にHAPPY赤ちゃん写真」(ぶんか社)は3万部のヒットに。現在、東京・六本木の「フジフイルム スクエア ミニギャラリー」で写真展が開かれている(5月16日まで)。
今ではすっかり、「寝相アート」第一人者の小出さんだが、最初は夫や友人に見せるためだけに撮影していたという。
「バー営業で帰宅が遅い夫に、娘がよく眠っている姿を伝えようと思ったんですけど、どうしても似たような写真になってしまって。そんな時、仕事仲間に北欧の眠った赤ちゃんのアートを教えてもらって、これ素敵!と。家庭の日用品を使ってやってみたら、主人も友達も『面白い!もっと見たい!』と言ってくれて、たくさん撮るようになりました。うちでは『いたずら写真』と呼んでました」
漫画家の小出さんは職業柄、構図を考えるのが得意。例えば、横向きに寝ている娘の姿から着想したのが、「お花と妖精」だ。パールのネックレスで触角を作り、洋服やタオルで妖精の羽とお花をかたどっている。構図が決まったら、携帯でさっと撮影。「寝相アート」は、自宅にあるもので作ることができて、お財布に優しいところもうれしいのだ。
そんなふうに身内で楽しんでいた「いたずら写真」だが、娘が1歳を迎えた誕生日に夫がツイッターで写真を公開したところ、一晩に2000ビューを超える反響があった。「色んな方にもっと見たいと言われて、びっくりしました。それから撮った写真を夫がツイートしていたら、ある時、ユーザーの方が『寝相アート』と名付けて、まとめを作ってくれたんです」
「寝相アート」はまたたく間にネットで広がり、ツイッターのハッシュタグ(ツイートを検索できる目印)「#NezoArt」も誕生。「真似してみました」と「寝相アート」にチャレンジして写真を投稿する人たちが増えていった。今では、公式サイトも開設され、コンテストも開かれている。
「自分の子供をかわいく撮りたいというのは、世界共通の願いなんだと思います。親以外にも、テスト勉強中の学生さんが『夜中に見てかわいくて癒されました』と言ってくれたこともあって、すごくうれしかったです」
実際、始まったばかりの写真展の会場をのぞいたら、親子連れだけではなく、若いカップルや年配の人の姿も目立っていた。
漫画家、小出真朱さん(東京・六本木の「フジフイルム スクエア ミニギャラリー」)
「仕事では、時にはブラックな漫画を描いて、賛否両論の感想を頂くことも。でも、『寝相アート』は心が温かくなるようなコメントばかり頂きます。みんながふわーっとよい気持ちになってくれたんだと思うとうれしいです」とにこにこする小出さん。見ると誰もが幸せになってしまう魔法が、「寝相アート」には隠されているのかもしれない。
ただし、「寝相アート」には厳しい鉄則がある。「安眠の邪魔をしない!」「世界観はハッピーに!」「赤ちゃんが寝返りを打ったら潔くあきらめる!」。くれぐれも、お守りくださいね。
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