「濡れ手で粟」とはこういうことを言うのだろうか。東日本大震災の震災がれきを受け入れていない自治体・組合に国の復興予算250億円がわたっていた。
朝日新聞デジタルは以下のように伝えている。
東日本大震災のがれきを受け入れていないのに、被災地外の10カ所のごみ処理施設整備に国の復興予算250億円が使われていたことが分かった。当初は受け入れを検討したが、がれき量が当初の見込みより減ったためだという。環境省は「自治体側と約束しており、返還を求めない」としている。復興予算を使い焼却炉やごみ処分場を整備しながら、がれき処理をしなかったのは、堺市や埼玉県川口市など10自治体・組合。【別宮潤一】
(朝日新聞デジタル 「震災がれき来なくても復興予算 10処理場に250億円」 2013/5/20 16:02:46)
■堺市は「検討段階」でも86億円
環境省は2012年10月、震災がれきの受け入れを検討していた大阪府堺市に86億円の復興予算を交付することを決定。同市はがれきを受け入れないにもかかわらず、ごみ処理施設の新設費用などにあてるとしてを巨額資金を受け取ることになった。
市議会からは「道義的に問題だ」という声も上がったが、最終的に竹山修身市長が「ありがたくいただきたい」と受け取りを決めた。その後、堺市には「被災地に返すべきだ」などの抗議が多く寄せられたという。
産経新聞のデジタル版は以下のように伝えている。
環境省の担当者は「(復興予算は)広域処理を促進させるための起爆剤として計上した予算。がれき処理の検討を促すだけでも十分効果があり、問題はない」としており、返還要請は検討していないという。
(産経新聞デジタル 2013/3/9 21:25)
■国が示したルールにもとづき・・・
堺市はホームページ内「清掃工場の整備と復興予算について」で一連の経過について釈明をしている。
清掃工場など大規模な施設整備については、その経費を堺市の税財源(収入)では賄いきれないため、国からの補助金を受けて進める必要があります。
平成24年度は、国からの補助金の対象となる経費が約86億円となり、当初は、約40億円の補助金が交付され、残りの約46億円のうち、42億円は市債(市の借金)を発行する予定をしていました。(市債発行分は後に国から交付税として半分程度が補てんされます。)
しかし、国の方針により、この補助金40億円が、これまでの通常予算ではなく、復興予算(3を参照)から交付されることとなり、堺市が予定していた借入(市債)分についても、震災復興特別交付税として国から交付されることとなりました。
また、復興予算は「結果的に国が交付を決定してきたもの」と説明。
堺市は(中略)平成22年度から計画的にクリーンセンター臨海工場及び東工場基幹改良の整備事業を進めてきました。臨海工場が完成する24年度においても国のルールどおり適正に手続きを行いましたが、結果的に、費用の一部について国が復興予算としての交付を決定してきたものです。堺市としても、国からの補助金は国が示したルールに基づかないと受けることができないため、国の決定に従って補助金の交付を申請しました。
そして、最後に
今後も、被災地復興のために、何ができるのか、どのように支援していくのかということを、検討していきたいと考えています。
という一文が添えられている。
何度読んでも納得できない。復興予算の交付について、環境省は「自治体と約束したから」と言い、自治体は「国がそう言ってきたから」と弁解する。「もらえるものはもらっておけ」という本音は見え隠れするが、被災地への配慮の言葉や動きは見つからない。
被災地から遠く離れ、しかも震災がれきの処理予定のない清掃施設を整備することが、被災者支援・被災地復興にどれほど役立つのか。巨額の税金を「流用」することについて納得のいく説明が欲しい。被災地復興を検討するのはそれからだ。
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