インドネシア・アチェ州のイスラム裁判所は、5月17日、性行為をした男性カップルに対して、イスラム法(シャリア)違反として、ムチ打ち85回とする刑を言い渡した。
人権団体や国連などからはこうした人権侵害に懸念の声が寄せられていたが、裁判所はこれを受け入れなかった。ロイター通信などが報じた。同性カップルにこのような処罰が下されるのは初めて。被告の男性カップルは、刑を受け入れ上訴しないと表明したという。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の声明によると、この男性カップルは2017年3月28日夜、同性同士で性交渉をした疑いで州の自警団に逮捕された。その後、自警団が男性2人を殴ったりけったりする様子がインターネット上に投稿された。
アチェ州は在住者の中にイスラム教徒の割合が多い。インドネシアの中で、同国の刑法に加えて、シャリアと呼ばれるイスラム法を適用してよいとされる唯一の州となっている。
同性の性行為を処罰する法律は、2014年にアチェ州で導入された。有罪判決を受けた場合、100回を上限に、ムチ打ちの刑が科せられる。
HRWの調査では、同州では多くのLGBTなどの人々が拘束されている。イスラム教徒の女性が人前で頭を隠さなかったことや、飲酒をしたことなどが罪とされ、2016年の1年間で339人に対してムチ打ち刑が言い渡されている。
2015年に一時拘束されたレズビアンの女性2人に対して、シャリア警察が、SNS上から同性愛者とみられる人々の写真を見せるように強制したことも明らかになっている。
2016年4月、国連はインドネシア政府に対して、シャリア法に基づくLGBTなどの人々への人権侵害や虐待行為が行われていることへの懸念を表明し、対応を求めている。
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