捨てる側から拾う側へ
ボランティアという言葉に対してどのようなイメージを持つだろうか?真面目な人が参加するものという印象を受けてしまうのが一般的なイメージ像ではないだろうか?現在、NPO法人グリーンバード 福岡代表の東秀憲さんも、そんなイメージ像を持つ若者の一人だった。きっかけは、大学の先輩である、前・グリーンバード福岡代表の木下真裕さんからの誘いがあったからだった。
その時の誘い文句は「ゴミのポイ捨てかっこ悪いぜ」。ポイ捨てをしていた側だったという東さん。この言葉に、自分の今までの行為が恥ずかしいものであったことを悟ったという。社会人になったら「何かかっこいいことしたい」と考えていた東さんを「掃除」というボランティアに一歩に踏み出させたのだった。
グリーンバード福岡の活動は手袋とトングが欠かせない。
「何しようとね?」街の人に声をかけてもらえる喜び
前・代表木下さんの交友関係で集まった約10名のボランティアスタッフで、福岡市一番の繁華街・天神から活動スタート。当初は「何しようとね?」なんて声を掛けられる横では、まだまだ活動に関心を示してくれなかった街行く人々。それでもめげずに、仲間とともに無心にゴミを拾い続けた。
折れそうになる心を、仲間同士「何か面白い事しよう」と声をかけあい励ましあう日々。また、掃除が終わった後の飲み会では「街をこうしたい!」とか「地域を楽しくしたい!」という話で盛り上がった。こうした仲間内でのコミュニケーションが掃除を続ける楽しさに変っていったのだと、当時を振りかえって語る東さん。
そうやって地道に活動すること3年が過ぎたあたりから協力者が増えていき、ようやくグリーンバード福岡の活動が認知されるようになってきたのだった。そこで東さんは、自身が住んでいる福岡市南区大橋でも活動を広げていくことに。その頃には、活動に参加してくれる仲間は続々と集まってくれた。このとき東さんは、継続していく事が力になることをあらためて実感した。
年々ボランティアスタッフは増え続け現在は約2000名。
コミュニケーションをとれば何か見えてくる
グリーンバード福岡の活動も早くも12年目を迎えた。ボランティア団体で10年以上続くことは、異例ともいえる長さだ。現在は約2000名を有する団体にまで成長。今では大学や行政からもアイディアを出して欲しいと、頼られる存在にまでになった。
ボランティアには多様な人達が参加している。その中には引きこもりの子達も。最初はコミュニケーションの取り方がわらない子達も、仲間が声をかけていくことで、徐々にまわりと打ちとけて話すようになっていく。そんな子達が社会人としてアルバイトができる様になる姿を見て、「この活動をやっててよかった」と感極まるという。出会えるはずのなかった人達に出会えることがボランティア活動の良さだと東さんは語る。
ボランティア団体として12年目を迎え熱が入るミーティング。
東さんは、複数の会社経営者として多忙な日々を過ごしているにも関わらず、グリーンバードの活動には必ず参加。"忙しい"を言い訳にせず、黙々と活動する姿にメンバーもついていく。
そして常日頃メンバーに言っていることがある。「街のプロモーターになれ!」。社会人とは街や社会に貢献すること。それを押しつけでなく、楽しく活動していくことこそが東さんが目指す「かっこいい大人」。そんな明るい東さんは、職場の頼れる兄貴であり、リーダーとして信頼されている。博多祇園山笠の様な男らしさに、福岡・博多の方言で「山のぼせ」といわれる熱さで場を盛り上げていくエネルギーに満ちあふれる存在。
今日も彼のかけ声の元で、ゴミ拾いを通して「自分も楽しく」の心が、街のすみずみをきれいにしている。
東さんが代表を務めるグリーンバード福岡主催のAQUA SOCIAL FES!! in福岡は10月31日(土)に室見川河川敷で開催。詳細は、公式サイトをご覧ください。
(取材・執筆 西日本新聞社東京支社 吉村元気)