5月18日、ハフィントンポスト日本版のローンチを記念して「Webメディア業界のキャリアデザインって?」というテーマで、下北沢B&Bにてトークイベントが行われた。
登壇者はハフィントンポスト日本版編集長の松浦茂樹とサイラボ編集長の川原崎晋裕さんの2人。Webメディアでの編集/プロデュース経験の豊富な2人が、「3年後になくなっていそうな職種orスキルは?」「息の長そうな職種orスキルは?」など6つの質問を軸に、Webメディア論を語り合った。本稿では全6回に分けてその模様をお届けする。
■ハフポスト編集長とサイラボ編集長、2人の歩んできたキャリア
まずはスライドを使って2人が自己紹介。松浦が「アタック25で優勝したことがある」と意外な経歴を披露して川原崎さんが感嘆の声をあげるなど、トークイベントは和やかな雰囲気でスタートした。
松浦は「職種だけは非常に多いです」と語るとおり、多種多様な転職歴の持ち主。新卒で配属された宇宙開発事業部でのシステムエンジニアを皮切りに、ネットワークエンジニアやシステム営業など次々と会社を渡り歩き、「これからはWebのフロントが一番面白い」と思いライブドアへ入社。「堀江さんがあれやこれやと投げてくるボールを必死に受け止めていたら、いつの間にかポータルサイトのトップページ担当」になっており、その後、Web4コマ漫画や「やわらか戦車」などでコンテンツ作りの楽しさを知るようになった。その後は培ってきた経験を生かして「WIRED.jp」の立ち上げや「GREEニュース」などのプロデュースを担当。「B向けのSEからどんどんC向けのフロントの方に近づいてきて」現在、ハフィントンポスト日本版の編集長を務めている。
川原崎さんは「世の中で一番きつい職種である営業を経験しておけばあとで何やっても大丈夫だろう」という理由で、エン・ジャパンの営業として新卒入社。3年後、「もともと文章を書いたりするのがすごく好きで、文章に携わる仕事がしたかった」という理由からサイゾーへ。転職には「持ち前の営業力を活かして」編集長に直接電話をかけるという方法で見事入社を勝ち取ったという。入社後は「日刊サイゾー」「サイゾーウーマン」「メンズサイゾー」などを創刊。実質ほぼ1人体制でサイゾーのWeb事業を立ち上げた。現在はWeb事業全体を統括しつつ、サイラボ編集長としてWebメディア運営者へのインタビューやWeb運営のノウハウ公開などをしている。
「Webメディア業界のキャリアデザインって?」というトークイベントのテーマを受け、川原崎さんは「Webメディア周りの仕事は寿命が短い」と指摘。Googleの検索システムが最適化され、検索エンジンで自サイトを上位に表示させるための職種・SEOが不要になるのではないか、という例を挙げた。
また、業界の成熟に伴って技術やノウハウが「誰でもできるようにマニュアル化されている」「クラウドソーシングや海外人材の流入による大幅なコスト減」も同様の問題を招いていることから、仕事をしていく上で何をやっても共通して重要視される「普遍的なスキル・マインドについて考える」ことを本日の大きな目的とした。
■Q1:3年後になくなっていそうな職種orスキルは?
1つ目のトークテーマは「3年後になくなっていそうな職種orスキルは?」。松浦はさまざまなWebメディアに携わった経験から「3年後にものすごい勢いで希釈されている可能性があるのはライティングのスキル」と言う。Wikipediaの充実などで知識が一定化され、「極端な話、誰でも書ける」時代になる一方、専門性を持ったライターの原稿料も安く、「食えるかどうかと言う部分での人の絶対数は減っていく」と指摘した。
川原崎さんはGoogleのターゲッティング技術が向上し、個人に対して自動的に最適化された広告が表示されることで広告営業が不要化する点について言及。「すごく企画性の強いもの、人間にしかできないものを売る方にシフトしていかなきゃいけない」と述べると、松浦氏も「管理画面を見れば分かることではなく、数だけでは語れない話ができる営業になる必要がある」と同意した。
また、今隆盛を極めているソーシャルゲームに話が及ぶと、松浦は「課金ボタンを押させるだけじゃなく、人の心を掴んで楽しませる分析能力を持った人は残る」と語った。「Webだとすぐ技術や数字に走ってしまうけど、いざそこが自動化された時にスキルが吹っ飛んでしまう」というのが全体を通しての結論であり、次のテーマ「息の長そうな職種/スキルは?」にも発展していく。
(文:大井正太郎)
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