「電子書籍をどこで売る?」【cakes加藤×ハフポスト松浦】

出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォームを立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。「もしドラ」電子書籍化の舞台裏、さらに続きます。
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Chika Igaya

「cakes」CEO加藤貞顕さんと松浦茂樹ハフィントン・ポスト日本版編集長が徹底対談

 出版社でベストセラーを手がけた後、自らデジタルコンテンツ・プラットフォーム「cakes」を立ち上げた加藤貞顕さんとハフィントン・ポスト日本版の松浦茂樹編集長が、ハフポスト日本版オープン目前の4月30日に緊急対談。思想家の東浩紀さんがプロデュースする知的空間「ゲンロンカフェ」(東京・五反田)を舞台に、これからのメディアに求められる「編集力」とは何かを徹底的に話し合いました。その論点をまとめてご紹介します。「もしドラ」電子書籍化の舞台裏、さらに続きます。

加藤:もうひとつ、あるんですよ。電子書籍に違和感を感じたことが。マーケティングなんですよね。電子書籍ってマーケティングがすごいしにくくて、紙の本だったらいっぱい刷って書店に営業して……

松浦:いかに平で積んでもらうかみたいな感じですよね?

加藤:そうそう、それで売るんですけど。電子書籍って僕らも作ってから、どうやって売ればいいんだろうって思ったわけですよ。肝心の売り場は当時、アップストアなんだけど、検索でたどり着く個別のページ以外だと、ランキングしかないんですよね。

松浦:ランキングしか導線がないんですよね。

加藤:これだけに頼ってたら、えらいことになるだろうなと。実際、そのころから安売り競争が始まったわけです。今、アップストアの有料のブックカテゴリ見ると、もう笑える状況なんだけど、1位から100位まで8割くらいが85円なんですよね。85円ってのはアップストアで値付けができる一番安い価格なんです。

だからもう出版社の市場じゃなくなっていて、編集プロダクションとかウェブ制作会社とかがライターと組んで、ちっちゃい本を作ってちょっと1発、ランキング5位とかに入ったら100万円くらい儲かるみたいなビジネスになっていて、違うビジネスに変容しちゃってるんですよ。ちっちゃい情報商材の売り場になっちゃってるわけですね。キンドルストアもかなり危険な香りがします。

松浦:そうですね、今もうアマゾンもほぼ99円で、無料域のところでだいぶプロモーションみたいになってるのもありますからね。

加藤:この間、堀江貴文さんが「ニコニコ超会議2」で松浦さんと対談してて、「EPUBはクソ」って言ってたんだけど、つまり電子書籍はクソって話とほとんどイコールですよね。結局デジタルっていうのは、オープンでソーシャルだからいいのに。

松浦:なんでパッケージにこだわるんですかね?

加藤:パッケージで閉じちゃうからできなくなっちゃうんですよね。自由でオープンなのがいいとこなんですよね。だからウェブで始めたわけなんですが、ただひとつ、すごい問題があって、最初に戻るんですが、ウェブは儲からないということですね。

松浦:儲からないんですよね。「cakes」は立ち上げて、どうですか?

加藤:最初、有料でウェブって正直、自分でもまったくわからなかったんですよ。世界中であらゆるメディアが失敗してきてる。でも、そろそろできるようになったんじゃないかなと思って。まず、ウェブで課金をするっていうのは色んな理由でできなかったんです。まず、課金がそもそも不便。小額の課金ってクレジットカード会社もあんまりいい顔しないですし、わざわざポイント1回買ってとか面倒なんですよ。

あと、やっぱり端末もスマホがなかったですからね。PCでメディアなんて見ないですから。コンテンツっていうのはもうちょっとセクシーな存在なので、ああいう事務的な機械では見ないわけですよ。つまり、今はスマホがある。小額課金もしやすくなった。あとは人々のマインドも、キャリア課金とか抵抗感がなくなって慣れてきていて。それから、クリエイター自身がやりたくなかったんですよね。なぜかというと紙がめちゃくちゃ儲かってたから。

松浦:あとは紙への思い入れ、次の媒体にうつって何かいいことあるのっていう問いに対する答えっていうのがなかった。

加藤:ネット怖いみたいな。でも、みんな慣れてきて、紙がそれどころじゃなくなってきてるってところもあって、全ての条件が揃ってきたのでそろそろウェブいけんじゃないのと思って始めたんですね。よくわかんないまま始めてみたんですが。予想以上に見てくださる方、入ってくださる方がいることにまず驚きました。

(この連載のバックナンバーはフォトギャラリーよりご確認ください)

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