■則本と田中将大の類似点
プロ野球の2014年シーズンが開幕。各球団とも熱戦が繰り広げられた。2年連続の日本一を目指す楽天は西武と対戦し、2年目右腕の則本昂大投手が9回を6安打1失点。150キロのストレートに変化球を交え、完投で2-1と初戦を飾った。
エース・田中将大投手が去ったチーム。則本には、今度は自分がこのチームを支えていくんだという気概が見受けられた。
則本は昨年、新人ながら15勝をマークしたが、完投勝利は1度もなかった。終盤に打ち込まれるケースが多かったからだ。だが、この日は違った。回が終盤になり、佐藤義則投手コーチから「行けるか?」と問われると「行きます」と即答した。気迫の133球。「ようやく完投ができました。最後までマウンドに立つことができるって格別ですね」という右腕は、また一つ、段階を上った。
2年目エースがマー君に代わる投手陣の中心になれると、大きな影響を受ける選手がいる。今年の高卒ゴールデンルーキーの松井裕樹投手である。開幕ローテ入りを果たした松井について、球団関係者は田中将大の1年目を引き合いに出し、ある類似点を指摘した。
「田中の1年目の2007年は11勝を挙げ、新人王になった。それは岩隈(久志)の存在が大きかった。弱いチームだったけど、岩隈という軸がいたから、開幕ローテに入っても、勝利をそこまで厳命されることはなかった。いい形で育成をすることができた」
■則本という「木」がチームの幹となる
この年、岩隈は5勝5敗と成績自体はパッとしなかったが、もし、このチームに投手陣の柱となる存在がいなかったら、田中に過度な期待がかかっただろう。今年も則本がいなかったら、オープン戦で好調だった松井に対して期待をかけ過ぎる状況になっていたに違いない。
開幕ローテ入りを果たした左腕はまだ18歳で、プロの経験はない。そこでプレッシャーをかけてしまっては、伸びるものも伸びなくなってしまう。
その点、マー君の1年目は岩隈がエースとして1年間戦ってくれたおかげで、チームの責任を背負うことなく、オールスター出場、11勝6敗、リーグ2位の196奪三振を記録するなど、伸び伸びとプレーして結果を残すことができた。それが成長への大きな足がかりとなった。
昨年の則本にも同じことが言える。昨年24勝したマー君がいたから、則本も順調にその能力を開花させることができた。絶対的エースの存在は大きいのだ。岩隈の影で育ったマー君。マー君の影で育った則本。そして、今年の松井。松井の活躍は、則本という「木」がチームにおいてどれだけ大きな幹となり、松井のために影を作ってあげられるかにかかっている。
松井は4月2日の本拠地開幕戦、オリックス戦でプロ初先発が予定されている。連覇を求められている環境は前例とは違う部分もあるかもしれないが、2人が一緒に飛躍していくことを期待したい。
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(2014年3月29日「フルカウント」より転載)