世界のマーケットに動揺が広がっている。中国経済の減速懸念を背景に、世界の投資マネーがリスク資産から引き揚げられ、同時株安の連鎖が止まらなくなっている。リスク回避の投資ムードが強まる中、低金利国の通貨である円を買い戻す動きもぐっと強まっている。8月24日は一時、1ドル120円台後半まで一気に円高が進んだ。
このところの中国株の急落や、過去20年間で最大の人民元の切り下げをきっかけに、リスクマネーの逃避圧力にさらされ、変調をきたすマーケット。これは中国経済の悪化に伴う、長期的な投資資金の撤退なのか、あるいは、短期的な調整なのか。
みずほ銀行国際為替部チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は24日、ハフポスト日本版の電話インタビューに応じ、今回の世界同時株安の背景について「中国経済の先行きに対する不安が高まっている」と指摘。そのうえで、世界景気が減速する中、アメリカの中央銀行が利上げに踏み切れず、2016年の年明け以降からは円高ドル安の基調に入るとの見方を示した。
■背景は「中国経済の減速」
――先週以来の世界同時株安が止まらず、8月24日の日経平均も大幅に続落。投資マネーが引き揚げられて逆流しているように見えますが、背景には何があるのでしょうか?
背景にあるのは、中国経済の減速です。これを受け、原油を含めた商品価格が下落しています。(アメリカの中央銀行の)FRBも今秋に予定通り、利上げをできなくなっているのではないか、との見方も強まっています。
――中国株の下落が止まらず、確かに中国発の世界同時株安の様相ですね?
はい。中国経済の先行きに対する不安が高まっています。ただ、マーケットでは、中国経済のハードランディング(急激な失速)はないだろうとの見方が今も支配的です。リーマンショック級の景気後退はないだろう、というのがメインシナリオかと思われます。中国政府による財政出動の余地に期待を寄せる向きは多い模様です。
ただ、当初、中国経済は2015年10-12月期に底を打つだろう、との見方が優勢でしたが、今はそれが来年の年明け以降になるのではないか、との不安が高まっています。
■「2016年からはドル安・円高となる公算」
――マーケットでは、アメリカのFRBが9月にも利上げをする、との見方がありますね?
はい。過去2年間の為替市場では、FRBによる利上げを見越して、ドル高の基調が続いてきました。しかし、本当にこんな状況の中で、利上げができるのでしょうか?私はこのような世界経済の海外環境の中で、アメリカは金利の正常化をできないと思いますし、やるべきではないと考えています。ラフな見通しではありますが、ドル高円安の基調は今年でいったん収束し、FRBの正常化プロセスが頓挫することによって来年から反転(ドル安・円高)となる公算が大きいとみております。しかし、日本の貿易赤字構造が早晩変わることも考え難く、円高の程度はさほど大きなものにはならない、とも見ています。
――今月中旬以降の人民元の切り下げによって、多くのアジア諸国が通貨安と株安の加速に見舞われていますね。
人民元は過去2年ほど、実効ベースで10 %以上上昇してきました。ですから、人民元が4〜5%ほどの切り下げたからといって、それだけで競争力が劣化するアジア諸国は多くないと思われます。
例えば、インドネシアやロシアといった国々は既にインフレに見舞われ、通貨安に誘導するのが難しくなっております。この点、物価の上昇率が低く、輸出依存度の高い国が、通貨安に誘導していくかもしれません。例えば、韓国などは物価上昇率が穏当な幅に止まっており、通貨安に誘導する余地はありそうです。
――株価についてはどのようにご覧になっていますか?
日本の株価も、アメリカの株価も、これまで急激に上昇してきて、調整がない方がおかしかったのです。まだ「健全な調整」の域だとみています。
【UPDATE】24日午後7時40分ごろには、1ドル120.015円まで円高が進んだ。(2015/08/24 20:02)
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