スタバ、新店舗を地域近郊の木材で木質化。林業が抱える課題に貢献

昨年からスタートした同プロジェクトはこれまで25店舗で展開し、今後さらに50カ所の新店舗で実施する予定だ。
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スターバックスコーヒー「LINKS UMEDA 2階店」店舗内には河内材をふんだんに使い店内には木の香りが漂う
サステナブル・ブランド ジャパン

スターバックスコーヒー ジャパンは、家具を製造販売するワイス・ワイス(東京・渋谷)と協力し、新店舗を地域材で木質化するプロジェクト「JIMOTO table」を進めている。スターバックスは、長年国産材を使った製品を製造するワイス・ワイスの知見やネットワークを活かし、新店舗を地域近郊の木材で木質化することで、地域コミュニティと森をつなぎ、林業を含む地域経済の循環をはかる。昨年からスタートした同プロジェクトはこれまで25店舗で展開し、今後さらに35カ所以上の新店舗で実施する予定だ。(環境ライター 箕輪弥生)

店づくりに地域材を取り入れることでコミュニケーションも活発に

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伝統の「背割り」という加工が施された丸太のテーブル(LINKS UMEDA 2階店)
サステナブル・ブランド ジャパン

日本は7割を森林が占める森の国。それにも関わらず、日本の木材が輸入材に押されて使われず、山にお金が落ちずに山が荒れていく。ワイス・ワイスの佐藤岳利社長は、これを「出口がない状態」と表現する。国産材の供給量は3割を超えるところまで回復しているが、家具類などはまだまだ輸入材を使ったものが主流だ。

この問題に対してワイス・ワイスが長年取り組んできたのが、国産材を利用した家具づくり「森をつくる家具」というコンセプトだ。この考え方に共感し、店づくりに国産材を取り入れることで日本の林業が抱える課題に貢献できるのではないかと考えたのがスターバックスコーヒー ジャパン(以下:スターバックス)店舗開発本部の中川拓真氏だ。

これまで店舗の内装や家具に木材を使う場合でも、木材産地を把握して利用することは少なかったと中川氏は話す。しかし、「JIMOTO table」プロジェクトでは、店舗が立地する地域の木材を使うため、詳しい産地や場所まで明らかだ。たとえば、大阪・梅田の複合商業施設「LINKS UMEDA」にオープンした店舗では、店内の内装や家具に大阪産の木材をふんだんに使用している。

オープン前にはパートナーと呼ばれる従業員らも実際に木材を伐採した河内長野市の森に入り、林業家の話を聞いたり、間伐などを体験した。店内には河内材の杉のほかに、大阪産のクリの木も使用している。

地域材を使った家具や内装は顧客にも従業員にも好評だという。森に入った体験は、従業員のコミュニケーションを促進し、自分が働く店舗の近くの森から生まれた家具や内装を、自信をもってお客様に説明する。そして、それがまた顧客から拡散していく。スターバックスの中川氏は「地域の材がコミュニティにつながるためのきっかけをつくっている」と話す。

今後50店舗での「JIMOTO table」を展開

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「JIMOTO table」でコラボするスターバックスコーヒー ジャパン中川拓真氏(右)とワイス・ワイス佐藤岳利社長
サステナブル・ブランド ジャパン

「JIMOTO table」は、地域材を使うだけでなく製材や加工も地域で行う。ワイス・ワイスの佐藤社長は「地域に仕事とお金を届けることで、森づくりをすることができる」と説明する。森が健康になっていくまでを含めてデザインの領域として考えているからだ。

「JIMOTO table」の製作は地域によって製材や木工の技術も異なる。たとえば福岡では糸島市の森で育ったセンダンの木、沖縄本部町店では、沖縄県木である「琉球松」というように。そのため、製作に手間がかかり、またコストもかかるのが課題だと佐藤社長は言う。それでも、手間をかけ地域の顔の見える木材で施工した店舗は、地域の個性を取り込み、コミュニティの顔となっていく。

スターバックスによると、「JIMOTO table」プロジェクトは現在25店舗で展開、今後37店舗を予定している。店舗の広さや店舗特性に応じて、地域材を使った「コミュニティテーブル」と呼ばれる大テーブルのみの店舗と、インテリアなど内装も含めて木質化するケースがある。

今年3月には東京、新宿御苑内にも同プロジェクトを導入した新店舗をオープンする予定だ。中川氏は「森とまちがつながる取り組みとして、今後首都圏でも展開を強化していきたい」と話す。