またストーカー行為の果てに女性が殺害される事件が起きました。
東京都日野市の会社員、堀田さとみさん(24)が同市内の河川敷で遺体で見つかった事件。堀田さんは元交際相手の飲食店従業員、安保克(あんぼ・まさる)容疑者(24)=死体遺棄容疑で逮捕=から、ストーカー行為を受けていると職場の上司に相談していたことが分かっています。
繰り返されるストーカー殺人。2013年に全国の警察が把握したストーカー被害の件数は2万件を超え、DV被害にいたっては5万件に迫る勢いで、いずれも過去最多となっています。ストーカー規制法が改定され取締りが強化されたことで、警察が把握する件数が増加した背景もあると思いますが、一方で、なぜストーカーによる悲惨な事件を防ぐことができないのでしょうか。
「報道ステーションSUNDAY」は、ストーカー行為をやめることができないという男性A氏に(40)に話を聞きました。宮城県仙台市に住むA氏は、これまでDV、ストーカー行為を繰り返し、現在は妻子と別居しています。彼は自分では抑えることのできない感情、葛藤、加害者の心理を訴えます。
「私、正直、ストーカー殺人事件の加害者を見ると、他人事ではないなと思います。(妻子)を自分で仕留めて、自分の所有物のまま歴史を終わらせたい。そういう風に思っていましたから」
A氏には離婚歴があり、その原因となったのも彼の度重なるDV行為でした。
「前妻が出て行ったときは、もう勝手に出て行って、何やってやがるんだと。それで、なんとか居場所を割り出して連れ戻そうと。心の奥底から『奪還せよ。奪われた獲物を奪還せよ!』と、本当にそういう声が聞こえてきたことがありました」
しかし、前妻の居場所を割り出すことはできず、4年前に離婚が成立。それから2年後、ぽっかりと空いた穴を埋めるようにA氏は再婚し、娘が生まれました。それにも関わらず、A氏は「あなたとあなたのお母さんに、合法的な手段で復讐(リベンジ)します。ウラミハ必ず晴らします」といったメールを妻に送るなど、精神的暴力を振るい始めたのです。
結局、再婚した妻も1歳になる娘を連れ、家を出て行きました。
「一人で孤立しているときに、視野がどんどん狭くなって、ネガティブなことばかり考えてしまうんですよ。相手は俺から逃げるつもりだ。相手はほかに男を作るつもりだ、と。もう、そういうことは気が狂うくらい許せない。永遠にパートナーは自分の所有物だから」
「妻は自分の所有物」という心の声が消えず、ストーカーと化したA氏はスマートフォンの位置検索機能を使い、ついに妻の居場所を割り出しました。
「ここ(妻のいた家)をハンマーで、工事現場用の大きいハンマーを持ってきて、叩き割って入っちゃたんですよね。妻を殺して自分も死のうと。いよいよやる時がきたのかなと」
しかし、A氏に様子に異変を感じた知人が駆けつけ、最悪の事態は免れました。
「執着心ですよね。自分ではそれが愛、愛情表現だと思っているんです。この人との関係が終わってしまえば自分の人生は終わりだと」
現在A氏はカウンセリング施設に通い、自分を見つめなおす日々を送っています。同じ境遇にある参加者とお互いの体験を共有し、自分は被害者ではなく加害者なのだという意識を自覚することで、更生と再犯防止を実現していく実践的なグループワークが行われている施設です。
A氏の取材をすることで、いくつか見えてきたことがあります。まずA氏にとって、最悪の事態を回避することに大きな歯止めとなったのが「問題を理解している第三者の知人がいた」ということでした。妻との間に、この第三者が入ることは、一瞬でも自分を冷静にするきっかけになったと彼は言います。第三者の存在という点で、警察はこの春から、ストーカー加害者に積極的にカウンセリングを受けさせるなどの対策を進めていますが、NPO法人や民間などのカウンセリング施設との連携を強化することも必要です。
決して、被害者と加害者が直接向き合うようなことはしないこと。さらに、被害者が相談をしたときに、相談先が考えすぎではないか、被害妄想ではないか、と受け取る場合と、相談者の訴えをそのまま受け取る場合によって、相談した人の命が左右されることが決してないように、警察をはじめコミュニティ、関連施設のさらなる意識向上、情報共有が求められます。
さらに、心の声が聞こえるようになると、どんな手段を使っても加害者は被害者を探し出そうとするとA氏は言います。とにかく、DV行為、ストーカー事件の被害者の居場所が決して加害者にわからないようにすることが大変重要です。近頃、探偵を利用して探し出す加害者もいるようですが、個人情報の取り扱いについて罰則を設けるなどの法整備も必要なのではないでしょうか。