Spotify、音楽ビッグデータ大手Echo Nestを買収:競合も導入する音楽レコメンデーション・プラットフォーム、APIは今後も無料提供

400以上のサービスやアプリに導入されているEcho Nestを買収することによってSpotifyはより精度の高い音楽体験と音楽発見のテクノロジーをリスナーに提供し、海外展開戦略と音楽業界への貢献を推進していきます。
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定額制音楽ストリーミングサービスSpotifyが、米国の音楽インテリジェンス企業最大手Echo Nest (エコー・ネスト)を買収することで合意したと本日発表しました。

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400以上のサービスやアプリに導入されているEcho Nestを買収することによってSpotifyはより精度の高い音楽体験と音楽発見のテクノロジーをリスナーに提供し、海外展開戦略と音楽業界への貢献を推進していきます。またEcho Nestのテクノロジーは今後Spotifyを活用するブランドやパートナー企業の音楽マーケティングを支援します。買収金額は不明。

Echo Nestの音楽APIは継続して無料で提供され、デベロッパーへのサポートも継続します。

Echo NestとSpotify両社はデベロッパー・コミュニティの重要性が今後のパートナーシップにおける最大の焦点であると強調しています。

Spotify CEOのダニエル・エク(Daniel Ek)は

私達は長い間Echo Nestのファンでした。Spotifyに参加してくれたことを心から光栄に思います。Spotifyでは、人々がよりたくさんの音楽を聴いてほしいと願い、最高のユーザー体験を構築することに注力していますが、その基礎となるのが、地球上で最高の音楽インテリジェンス・プラットフォームを構築することから始まります。Echo NestがSpotifyに加わることで、人々に最高の音楽を届けるための私達の追求において大きく飛躍することができます。

とコメントしています。

Echo NestのCEO, ジム・ルケーシー(Jim Lucchese)は

Echo Nestを創立以来、Brian WhitmanとTristan Jehanは人々がより多くの音楽を発見するため、音楽の世界の理解に全力を注ぐ完全で素晴らしい企業を作りました。SPotifyと協力することで私達は世界で最も早く成長する企業の一部としてこれまでの活動を継続する機会を手にします。多くの音楽とたくさんの人々をつなげることに情熱を持っているチームに参加できることを大変嬉しく思います

と述べています。

Echo Nestは今後もマサチューセッツの本社を拠点に活動を続け、またサンフランシスコでも活動を継続します。

音楽のメタデータを解析するEcho NestのテクノロジーはSpotifyのライバル企業であるRdio, iHeartRadio, Deezer, Rhapsodyなどの音楽レコメンデーションエンジンやラジオサービスに導入されています。Echo Nestは今後もライバル企業に契約期間は同社のテクノロジーを提供する予定です。

一方で、Echo Nest買収によって、競合他社が必要とするコアなテクノロジーにSpotifyが独占的にアクセスができ、そして今後のEcho Nestの製品開発が関係する音楽レコメンデーションのエコシステムにも影響が出てくる可能性が浮上しました。

Spotifyにはすでに2000万曲以上の楽曲カタログがあります。ですが、これらの楽曲を全て聴くことは到底無理です。逆に、一般消費者にとっては自分の好みの曲が聴ければ十分に楽しいはずなので、「2000万曲」という要素だけでは一般層に今後幅広くリーチしていく上では消費者に響かない可能性があります。ですが、もし好きな曲からジャンルやスタイルが似た音楽をより正確に引き当てられたら、「Spotifyって音楽をよく分かってるね」と消費者が思うような音楽体験をSpotifyのあらゆるプラットフォームで提供出来るようになるはずです。SpotifyのEcho Nest買収の目指すところは、こういう世界なのかなと考えています。

ソース

(2014年3月7日「All Digital Music」より転載)