ISSCCが行われたサンフランシスコから金曜日に帰り、昨日は修論審査をやって、これからまたUSに戻ります。今度はNVMW(Non-Volatile Memories Workshop 2015)が行われるUC Sandiegoに出張です。
ISSCCで発表した技術については日経テクノロジー・オンラインに記事を掲載していただきました。
これからNVMWでは同じく修士1年の小名木君、荒川君が2件のポスター発表を行います。
Asuka Arakawa, Chao Sun and Ken Takeuchi, "Database Storage Engine and SSD Controller Co-design for SSD Performance Enhancement and Energy Reduction"
以上の発表の題目からもわかるように、私たちは新しいメモリの潜在力を最大限に引き出すために、メモリデバイスから制御ソフトウエアまでシステム全体を最適化する研究を行ってきました。
今回のISSCCで目がついた発表は、私たちの研究と方向性は似ていて、SSDやストレージ・クラス・メモリ(MRAM、ReRAM、PRAMなど)といった高速なメモリを活用する新しいコンピュータシステム。
新しいコンピュータシステムの呼び方はいろいろで、例えば、
・三星:In-Storage Computing
・Google:Near-Data Computing
・Marvell:FLC(Final Level Cache)
・IBM:Data Centric Computing
全てに共通するのは、膨大なデータをリアルタイムに扱うためには、データを記憶する高速メモリの近くでデータの処理をする必要があるということ。
In-Storage Computingはストレージの中でアプリケーションを動かしてしまうこと、FLC(Final Level Cache)はメインメモリのバスにSSDを接続すること。
一見、逆の方向の技術に見えますが、データ処理とメモリを近づける、という意味では共通しています。
こういった新しいアーキテクチャに取り組んでいる企業は、上の例を見ても、半導体メモリメーカー(三星)、ITサービス(Google)、プロセッサメーカー(Marvell)、ITシステム(IBM)と様々です。
この世界はいわば、異種格闘技戦になっていることが良くわかると思います。
ビッグデータ、IoTなどの新しいサービスが生まれたタイミングと、SSD、ストレージ・クラス・メモリなどの新しいデバイスが成長してきたタイミングが偶然にも一致したからでしょうね。
まさにデバイスからソフト、サービスまでの最適化が必要になってきているのです。
さて、ではどうやって異分野を融合していくか。様々なスキルを持った専門家を自社に抱えるしかないのでしょう。それだけの体力ある企業が生き残る。
事実、Googleの講演者も元々は半導体の回路設計者でした。
必ずしも全てのパーツの製造を自社で手がける必要は無いけれども、少なくとも全ての技術を融合していく時代になっていくのでしょう。
日本では「垂直統合は悪、水平分業が善」というようなことも聞かれますが、世界は既にその先に行っているのです。
(2015年3月1日「竹内研究室の日記」より転載)