韓国の朴槿恵大統領や、知人女性で青瓦台(大統領府)「陰の実力者」と言われた崔順実(チェ・スンシル)被告に関する一連の疑惑を捜査していた特別検事チームは3月6日、朴大統領(65)を、崔被告のサムスングループからの収賄疑惑の共謀者と明示し、既存の検察に事件を引き継ぐと発表した。朴大統領を、一連の事件の核心的な被疑者と断定した。
3月6日、記者会見する特別検事チーム
また、政権に批判的な文化人計9574人の「ブラックリスト」の作成・実行を指示した最上位の人物が、朴大統領であることを確認した。これと共に、文化体育観光省の人事に不当に介入した疑惑について、検察に捜査記録を引き継いだ。
今回の特別検察は、国会で可決された特別法に基づき、通常の検察から独立した捜査組織として90日間の期間限定で発足し、2017年2月末で役割を終えた。
朴槿恵大統領
3月6日に発表した最終捜査結果によると、特別検察は朴大統領に「収賄」「職権乱用権利行使妨害」「公務上機密漏洩」の3つの容疑を適用した。
発表によれば、朴大統領は、崔被告と共謀し、サムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)被告によるサムスングループの経営権継承を支援する見返りに、298億ウォン(約29億4300万円)の賄賂を受け取ったとした。
サムスン電子副会長でグループ3代目の李在鎔被告。特別検察に逮捕された
サムスンは2015年10月2日から2016年3月3日にかけて、崔被告が事実上所有する韓国政府の外郭団体「韓国冬季スポーツ英才センター」(16億2800万ウォン、約1億6080万円)、文化支援財団「ミル」(125億ウォン、約12億3400億円)、「Kスポーツ」財団(79億ウォン、約7億8000万円)に出資した。崔被告の娘で乗馬選手のチョン・ユラ氏が、馬を購入・運用した費用77億9735万ウォン(約7億7000万円)は、直接送金した。崔被告側に渡された金額だけでも298億2535万ウォン(約29億4500万円)にのぼる。サムスンが支援を約束したが支払われなかった金額まで含めると、贈賄額は433億2800万ウォン(約42億7800万円)に達する。
また、朴大統領は、2013年9月から2016年9月にかけて、韓国文化芸術委員会(芸術委)と映画振興委員会、韓国出版文化産業振興院による文化芸術振興基金の審査に介入し、19人の候補者を芸術委の責任審議委員の選定から排除させた。
また、2015年5月に、政権に批判的な文化人9473人の「ブラックリスト」を作成し、その後も継続的に更新した。これをもとに芸術委は、公募事業325件、映画振興委員会の芸術映画専用映画館の支援8件、出版振興院の22冊の優良図書選定から排除するよう指示した疑いが持たれている。
さらに、朴大統領は、金棋春(キム・ギチュン)元青瓦台秘書室長、金鍾徳(キム・ジョンドク)前文化体育観光相と共謀して2014年9月、特定の文化・芸術界での支援を排除することに難色を示した文化体育観光省の室長3人に、辞表を提出するよう強要した疑いもある。
「陰の実力者」崔順実被告
サムスンからの収賄事件、ブラックリスト事件、人事不当介入事件など、特別検察が新たに捜査した事件に加え、特別検事チームの発足前に通常の検察が捜査し、容疑が確認された捜査も、特別検事の捜査期限終了に応じて再び検察に引き継がれる。
特別検察は、大統領が地位を利用して、崔被告側近が勤務する民間企業の人事に介入したり、崔被告が事実上設立した財団に出資を強要したりした状況を確認した。
朴大統領は2016年1月、安鍾範(アン・ジョンボム)前青瓦台政策調整首席秘書官と、金融委員会副委員長などを通じ、ハナ金融グループ会長に対し、崔被告側近のイ・サンファKEBハナ銀行フランクフルト支店長をグローバル営業第2本部長に昇進させるように強要した疑いもある。
また、現代自動車グループなど15社の大手企業に対し、ミル財団・Kスポーツ財団への出資を強要して、崔被告の関連企業との請負契約を締結させるなど、2件の職権乱用権利行使妨害の疑いも検察に移管する。
このほか、特別検察は2013年1月ごろから2016年4月ごろまでにかけて、チョン・ホソン前青瓦台付属秘書官を通じ、公務上の秘密を含む文書を計47回にわたって電子メールなどで送信し、公務上の機密漏洩の疑いを確認し、これも検察に移管した。
朴槿恵大統領は韓国憲法の規定により、内乱・外患罪以外では起訴されないが、憲法裁判所は、朴大統領への弾劾訴追の審判結果を3月13日までに言い渡す意向を表明している。弾劾が成立すれば朴大統領は即時失職し、検察は捜査を再開することになる。
ハフィントンポスト韓国版に掲載された記事を翻訳・加筆しました。
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